コンプライアンスと企業倫理の関係とは?意識を向上させる取り組みについても解説
2000年代以降、SNSの発達や企業の大規模な不正の増加により、コンプライアンスの強化が強く叫ばれるようになりました。
コンプライアンス違反を起こした企業や社員に対しては、行政処分が下されたり、罰則が課されたりすることが少なくありません。
それだけでなく、世間からの信用が低下し、経営にまで影響が及ぶこともあります。
コンプライアンスを徹底するうえで理解が必要な言葉が「企業倫理」です。
この記事では、コンプライアンスと企業倫理はどういう関係か、また企業として意識を向上させるための取り組みについても解説します。
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目次[非表示]
- 1.コンプライアンスと企業倫理の関係
- 1.1.コンプライアンスとは
- 1.2.企業倫理とは
- 2.企業コンプライアンスに必要な「企業倫理の3階層」
- 2.1.第1階層:法令順守
- 2.2.第2階層:社内規則の遵守
- 2.3.第3階層:倫理的な行動
- 3.コンプライアンスと企業倫理への意識向上が必要な理由
- 3.1.社会的責任を果たすため
- 3.2.行政処分を受けるリスクがあるため
- 3.3.企業イメージ向上のため
- 4.コンプライアンスと企業倫理の意識を向上させる取り組み
- 4.1.研修を実施する
- 4.2.人事評価にコンプライアンスや倫理に関する項目を設ける
- 4.3.自社の企業倫理を全社員に共有する
- 5.コンプライアンス徹底に欠かせない反社チェック(コンプライアンスチェック)
- 6.まとめ
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コンプライアンスと企業倫理の関係
「コンプライアンス」と「企業倫理」は企業活動を行う上で、切り離せない関係にあります。
簡潔に表現すると、「企業倫理を構成する要素の中核にコンプライアンスが存在する」ということです。
それぞれの意味を具体的に解説します。
コンプライアンスとは
コンプライアンスとは、元々「法令遵守」という意味です。
しかし、時代の流れとともにその意味は幅広いものとなり、法令の他にも、社会規範や社内ルールを守るという意味で、「法令等遵守」と理解されるようになりました。
広義では、以下の4つもコンプライアンスに含まれています。
① 法律などの「法令」に加えて、法の精神や立法の趣旨も遵守する
② 企業における諸規則、業務マニュアルなど社内規範を遵守する
③ 社会常識や良識など社会規範を遵守する
④ 企業理念や企業のビジョン、事業計画などに沿って適切な行動をとる
関連記事:コンプライアンスとは?わかりやすく・簡単に意味や使い方を解説
企業倫理とは
企業倫理の定義は様々な考え方や意見がありますが、「企業で働く全ての人が遵守すべき行動基準」や「ビジネスにおける誠実性」と認識するとわかりやすいでしょう。
企業倫理は、以下の3大要素によって構成されています。
- 個人倫理
- 職業倫理
- 組織倫理
組織を構成する経営者や管理者、従業員の「個人としての倫理」、仕事を有する人に関わる専門職倫理を含む「職業人としての倫理」、経営理念・哲学に基づく企業活動に関わる「組織としての倫理」という3つの立場から捉えた倫理で成り立っています。
そして、この3つの要素が重なる中核部分に「コンプライアンス」が存在するということです。
コンプライアンスは、単純に法令を守ればよいと解釈しがちですが、企業倫理とも密接に関係することを理解しておくことが大切です。
関連記事:企業活動におけるコンプライアンスとは?違反を防ぐ対策についても解説
企業コンプライアンスに必要な「企業倫理の3階層」
企業に求められるコンプライアンスは、内容によって段階別に考えることができます。
これを「企業倫理の3つの階層」として解説します。
第1階層:法令順守
まず、法律を遵守することという意味の第1階層があります。
例えば、時間外労働は月45時間、年間360時間が上限とされていますが、この規則に従った労務管理をしていなければ労働基準法違反となり、「企業倫理の3階層」の第1階層に反することになります。
第1階層は、法律などで明確に規定があるため、理解がしやすいでしょう。
第2階層:社内規則の遵守
第2階層は、法令に定めのない社内規則を遵守した行動をとるという階層です。
例えば、会社の備品を個人使用目的で持ち帰っている社員がいるとします。
企業が「備品の目的外使用の禁止」を社内規定に設けていた場合、この社員は社内規定に従っていないことになります。
この事例に関する法令はありませんが、「企業倫理の3階層」の第2階層に反する行動です。
企業によって規則の内容は異なりますが、全従業員に対して、社内規定や業務マニュアルをしっかりと理解させることが重要です。
関連記事:コンプライアンスマニュアルの作成方法 手順や作成例も解説
第3階層:倫理的な行動
第3階層は、法令でも、規則として明記されたものでもなく、倫理的な行動をとるべきだという考え方です。
少し古い事例ですが、大手企業で食中毒が発生し記者会見を行った際、企業側が会見を一方的に打ち切り、多くのメディアが会見の延長を求めて詰め寄った出来事がありました。
その際、企業側のトップが寝不足であることを大声で主張し、その場を立ち去ろうとしました。
この行動がが大きな社会的批判の原因となりました。
声を荒らげる行為は法律でも、社内規定でも規制されているわけではないですが、世間からは「企業トップの行動として倫理的ではない」と判断され、批判を受けることになりました。
第3階層は明確な定めがないですが、企業がコンプライアンスを徹底する上で、正しく理解をしておく必要があります。
関連記事:企業イメージをアップさせるコンプライアンス遵守を解説
コンプライアンスと企業倫理への意識向上が必要な理由
企業活動において、経営陣から従業員まで、全ての人がコンプライアンスと企業倫理への意識を向上させることが必要です。
その主な理由を3つ解説します。
社会的責任を果たすため
コンプライアンスを徹底する最大の目的として、企業が社会から信用を獲得し、企業価値を維持・向上することが挙げられます。
そもそも企業には「CSR(Corporate Social Responsibility)=企業の社会的責任」を果たすことが求められており、社会の一員として、事業の発展だけでなく、社会倫理的な責任も果たす必要があります。
コンプライアンス・企業倫理への意識を向上させることが、ステークホルダーや消費者に対して、貢献し、信頼関係を構築することにも繋がります。
行政処分を受けるリスクがあるため
コンプライアンスに違反すると、業務停止処分や許認可の取消し、業務改善命令などの行政処分を受ける可能性があります。
違反内容によっては逮捕されるケースがあるほか、罰金刑や懲役刑など刑事罰を受けるケースがないとは限りません。
このような場合、業務が行えなくなるだけでなく、社会的な信用も失墜します。
コンプライアンスに対する理解を深め、従業員一人ひとりの意識を向上させることが重要です。
企業イメージ向上のため
コンプライアンス違反を起こして処分の対象にならなくとも、メディアで報道されてしまうと、企業のイメージは大きく損なわれます。
企業イメージは商品・サービスの売上や採用時に優秀な人材が集まるかということにも直結します。
コンプライアンスを徹底することが、よりよい企業づくりにも繋がります。
関連記事:コンプライアンス違反の処分とは?企業・社員への処分の内容と対策方法を紹介
コンプライアンスと企業倫理の意識を向上させる取り組み
コンプライアンスと企業倫理の理解を深め、全社的に意識を向上させたいと考えても、実際どういった取り組みをすればよいかわからない方も少なくないでしょう。
企業ができる3つの取り組みを紹介します。
研修を実施する
コンプライアンスや企業倫理に対する意識を向上させるためには、継続的に啓発することが必要です。
その方法はいくつかありますが、その中でも有効な方法の1つがコンプライアンス研修の実施です。
研修では、コンプライアンスとは何か、なぜコンプライアンスの徹底が重要かなど、基礎的な部分から説明し、コンプライアンスに対する高い意識を作り上げます。
また、実際の違反事例を挙げ、どういった行動がコンプライアンス違反になるのかということを伝えることで、より理解が深まるでしょう。
人事評価にコンプライアンスや倫理に関する項目を設ける
コンプライアンスの遵守や企業倫理に則った行動を促すために、人事評価に関連する項目を設けることが有効です。
従業員の評価基準として、業績だけでなく、倫理的な行動や判断に対する評価を明確にすることで、倫理意識を向上させることができます。
第三者からの客観的な視点で評価されることは、守らなければいけないという意識を明確にもつきっかけに繋がるでしょう。
自社の企業倫理を全社員に共有する
意識を向上させるためには、まず自社の企業倫理を共有することが重要です。
コンプライアンスや企業倫理という言葉は、曖昧に理解していることが多いため、倫理的な期待や基準を言葉にして明確に伝えることで、日常業務において遵守することが容易になります。
また、企業倫理に反する行動か迷った際、すぐに相談できるような社内体制を整えることも大切です。
関連記事:コンプライアンスが重要視される理由とは?必要なワケを解説
コンプライアンス徹底に欠かせない反社チェック(コンプライアンスチェック)
コンプライアンスを徹底するためには、企業倫理に従えない従業員を採用しないことや、違反を起こすような企業とは関わりを持たないことが重要です。
そこで有効なのが反社チェックです。
反社チェックとは
反社チェックとは、チェック対象者である企業や人物が「反社会的勢力でないか」「反社会的勢力と関与がないか」を調べることです。
チェックの際、過去に法令違反や問題行動がないかなども調査ができるため、別名「コンプライアンスチェック」とも呼ばれています。
反社チェックの方法によって得られる情報は異なりますが、逮捕歴や行政処分の履歴など、報道や公表の対象になっている事案は基本的に確認することができます。
関連記事:反社チェックは義務なのか?反社会的勢力に関わる法令やチェックの方法を解説
反社チェックの方法
反社チェックの方法は主に以下の3つです。
- 自社で調査する
- 専門の調査機関に依頼する
- 警察や暴追センターに相談する
自社で調査をする場合いくつか方法があり、主に①インターネットや新聞などの公知情報を調べる、②反社チェックツールを使用する、③行政処分情報・登記情報を調べる方法などがあります。
インターネット検索や新聞記事をデータベースで調査する場合、企業名・人名と「逮捕・詐欺・起訴・不正」などのネガティブワードを掛け合わせて検索します。
インターネットやデータベース上には情報量が多いため、必要な情報を精査するのに手間がかかりますが、比較的コストを抑えて調査することができます。
最近では反社チェックツールの導入が進んでいて、ツールを使用すれば反社チェックに必要な情報を、自動で絞り込んだ検索結果を閲覧することができます。
WEBニュースや新聞記事をデータソースにしているため情報の信用性も高く、人的な作業工数を減らせるため、反社チェックの精度向上にも繋がります。
自社で調査をして疑わしい情報が出てきた場合、調査機関に詳細な調査を依頼したり、行政機関に相談したりするとよいでしょう。
関連記事:反社チェックに日経テレコンは活用できるのか?メリット・デメリットを解説
まとめ
この記事では、コンプライアンスと企業倫理の関係について解説しました。
健全な企業活動を行っていくためには、この2つの正しい理解と意識向上が必要不可欠です。
コンプライアンス研修や反社チェックを実施して、企業のコンプライアンス徹底を目指しましょう。
関連記事:コンプライアンス違反の事例を紹介 ハラスメントとの関係も解説
関連記事:従業員の反社チェックが必要な理由とは?チェックのタイミングと実施すべきサインも解説