コンプライアンス違反とは?事例や法令遵守のための取り組みを解説
近年増加している企業のコンプライアンス違反。
一度違反してしまうとこれまで積み重ねてきた企業の実績や価値、信頼感を一気に失い、経営破綻まで追い込まれてしまうケースも。
このようなリスクを負わないためにも、コンプライアンスについてしっかりと理解して対策を行う必要があります。
今回は、コンプライアンス違反のリスクや実際に起こった事例を中心に解説。
最後にコンプライアンス遵守に必要な反社チェック・コンプライアンスチェックについて触れていきます。
企業のコンプライアンス違反を未然に防いで、健全な企業経営を目指していきましょう。
【参考】より深く知るための『オススメ』コラム
👉コンプライアンス違反の罰則とは 起こさないための対策と事例を詳しく解説
👉反社チェック(コンプライアンスチェック)を無料で行う方法
👉コンプライアンス・リスクとは?リスク管理方法とフローを解説
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目次[非表示]
- 1.コンプライアンス違反とは?
- 1.1.コンプライアンス違反してしまう理由
- 1.2.コンプライアンス違反で生じるリスクとは
- 1.3.コンプライアンス違反の事例
- 1.3.1.【労務リスク】大手広告代理店A社 新人女性社員過労死問題
- 1.3.2.【労務リスク】大手飲料メーカーB社 男性社員うつ病発症問題
- 1.3.3.【情報漏えいリスク】大手通信教育事業会社C社 顧客情報流出問題
- 1.3.4.【情報漏えいリスク】大手菓子メーカーD社 サイバー攻撃による個人情報流出問題
- 1.3.5.【法令違反リスク】焼肉レストランチェーンE社 ユッケ集団食中毒事件
- 1.3.6.【法令違反リスク】通信事業会社F社 景品表示法違反問題
- 1.4.コンプライアンス違反を防ぐための対策
- 2.コンプライアンス遵守に必要な反社チェック・コンプライアンスチェックとは
- 3.まとめ
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コンプライアンス違反とは?
コンプライアンス(Compliance)は日本語で「従う」という意味ですが、企業では「法令遵守」の意味合いで使用され、一言でまとめると、法律や倫理に違反しないような経営活動を行っていくことになります。
そのため、コンプライアンス違反は「社会的倫理観や規範に違反する」「不正、不平等な業務を意図的に遂行する」という意味になります。
企業がコンプライアンス違反を起こしてしまうと、ステークホルダー※1との関係が悪化してしまうのはもちろん、企業の信頼度低下による売上の低迷、経営破綻にまで発展することも。
※1ステークホルダー:企業に関係する利害関係者のこと。経営者、従業員、クライアント、取引先、株主、金融・行政機関などさまざまな人物が当てはまる。
企業にとって一切メリットのないコンプライアンス違反。
なぜ起こってしまうのかを詳しく解説していきます。
関連記事:コンプライアンスとは?わかりやすく・簡単に意味や使い方を解説
コンプライアンス違反してしまう理由
コンプライアンス違反をしてしまう理由として「コンプライアンスに対する意識が薄い」ことが上げられます。
法務・総務・人事などの担当者が知らない内に、日本の法律は都度改正されたり、新規の法案が設立されています。
知らない内に法律に引っ掛かり、コンプライアンス違反になることも。
そのため、企業の担当者はコンプライアンスに関する情報を常にアップデートする必要があります。
また、パワハラ、セクハラ、残業代未払いなど社内規範に違反するような事例もコンプライアンス違反となります。
社員による内部告発は一昔前からケースとしてありました。
しかし、近年は社会的倫理の変化、TwitterやFacebookなどのSNSの発展により、個人単位で拡散力を得たことで、内部告発へのハードルが下がり、不祥事が明るみに出るケースが増えています。そのため、企業の担当者は社内統制にも気を付ける必要があります。
また、そもそも社内規範が決められていない、社内システムが脆弱で情報がいつ流出してもおかしくない。
など根本的な問題が原因の可能性もあるので、コンプライアンス違反を防ぐために根本から問題点を洗いだし、1つ1つ解決していくことが大切です。
コンプライアンス違反で生じるリスクとは
コンプライアンス違反を1度でも起こしてしまうと、企業はさまざまなリスクを背負うことになります。
セクハラやパワハラなどの労務リスクの場合、該当従業員の退職はもちろん、企業ブランドの信頼が無くなることで、新卒・中途入社の希望者が減少。
人員確保が出来なくなってしまう可能性があります。
また、新型コロナウィルスの影響で世間に浸透した「リモートワーク」による情報漏えいリスクも増加しています。
企業の内部情報や顧客情報が外部に流出してしまうと、ステークホルダーとの関係性が悪化し、取引停止まで発展してしまう可能性があるので、注意が必要です。
当然、法令違反リスクを考えることも必要です。
景品表示法や下請法など企業が遵守しなければならない法律は数多く存在しており、もし違反してしまうと、ニュースやSNSで不祥事が拡散され、企業の信頼度が低下したり、重い行政処分が下されることもあります。
そのため、総務・人事・法務担当者は「知らず知らずのうちに契約内容が法令違反になっていた」ということを未然に防ぐ必要があります。
関連記事:コンプライアンス・リスクとは?リスク管理方法とフローを解説
コンプライアンス違反の事例
実際に企業が起こすコンプライアンス違反としては、以下のようなパターンが多いです。
- ハラスメント(パワハラ、セクハラ、モラハラなど)
- 過労問題(過労死ラインを超える時間外労働やサービス残業)
- 内部情報の漏えい(データの持ち出し、外部からのハッキング)
- 法律違反(景品表示法、下請法、著作権侵害など)
1度でもコンプライアンスに違反してしまうと、企業へのダメージは大きく、立ち直れず倒産する可能性があるので、細心の注意が必要です。
では、実際にコンプライアンス違反をすると、どのような事態に発展するのか、事例を上げて説明していきます。
関連記事:コンプライアンス違反の身近な事例から学ぶ個人レベルで注意すべきコンプライアンス遵守!
【労務リスク】大手広告代理店A社 新人女性社員過労死問題
2015年、大手広告代理店のA社に新卒として入社した女性社員が、長時間労働により自殺した問題。
女性社員は、36協定で定められている1ヵ月の残業時間を大幅に超える130時間の時間外労働や、上司からの言動によるパワハラによって、うつ病を発症し自ら命を絶った。
事件後、女性社員の両親が労基署に労災申請を行い、業務に関わる死亡として認定された。
この事件により、当時のA社社長は責任をとって辞任、会社は再発防止に向け、長時間労働、ハラスメントの防止など具体的な措置を講じることを、遺族に約束した。
参照:公益財団法人 連合総合生活開発研究所「長時間労働による過労死・メンタルヘルス疾患を防ぐために」
【労務リスク】大手飲料メーカーB社 男性社員うつ病発症問題
2014年、お茶やコーヒー、アルコール飲料が有名なB社の男性社員がうつ病を発症し休職に追い込まれた問題。
裁判所の判決によると、2006年に配属されていたグループで結果を残せず、上司からパワハラに該当する言動を受けた。
2007年、このことが大きく影響し「うつ病」と診断されてから約1年間休職した。
男性は「パワハラによりうつ病と診断され、休職するしかなかった」ということを理由に、約2400万円の損害賠償を会社側に求め、裁判長は約290万円の支払いを命じた。
参照:2014年7月31日 日本経済新聞 「上司のパワハラでうつ病に」
関連記事:質を向上させるコンプライアンス研修の資料作成方法を解説
【情報漏えいリスク】大手通信教育事業会社C社 顧客情報流出問題
2014年、通信教育事業を展開するC社の顧客情報約3504万件が外部に流出した問題。
クライアントから「全く関係ない企業からメッセージが届くようになった」という趣旨の問い合わせが増加し、同社が社内調査を開始したところ、業務委託先元社員が意図的に流出したことが原因と判明。
漏えいした情報は、名前、生年月日、住所、電話番号など個人情報の中でも重要な項目で、実際に被害を受けた件数は約2895万件と推定されている。
この事件により、C社は被害にあったクライアントに対し、問題に関する文書とお詫びの品(500円の金券)を用意。
さらに、改善報告書を経済産業省に提出するという事態に発展した。
参照:2018年12月27日 日本経済新聞「情報流出、1人3300円賠償命令 東京地裁判決」
【情報漏えいリスク】大手菓子メーカーD社 サイバー攻撃による個人情報流出問題
2022年、大手菓子メーカーのD社が管理している複数のサーバに対して、不正アクセスが発生し、個人情報が流出した問題。
D社の通信販売事業ポータルサイトに登録されていた一部の個人情報(氏名、住所、メールアドレス、購入履歴など。
クレジットカードの情報は含まれていない)が外部流出。
同社は、設置していたネットワーク機器の脆弱性が原因という見解を示した。
外部流出による2次被害を防ぐために、D社は公式ホームページにて問題を公開。
お客様相談センターの設置、社内システムの復旧などにより、わずかながら業績へ影響を及ぼした。
参照:2022年3月22日 NHK「「ランサムウエア」で164万人以上の顧客情報流出か」
チェックリストでわかる!反社チェックの体制・運用点検リスト
【法令違反リスク】焼肉レストランチェーンE社 ユッケ集団食中毒事件
2011年、E社が経営する焼肉レストランでユッケを食べた客181人が食中毒を発症し、5人が死亡した事件。
卸元から配送されている時点で、食中毒の原因になった大腸菌「O-157」が付着している状態だった。
店舗側も肉の表面を削る「トリミング」や衛生検査を実施しておらず、売れ残ったユッケは翌日そのまま提供するなど、事件当時の食品衛生法に触れていないものの、コンプライアンスの観点から見ると違反な行為を行っていた。
この事件により、焼肉レストランは無期限の営業停止処分を受け、E社は同年廃業となった。
参照:2018年3月13日 朝日新聞デジタル「ユッケ食中毒訴訟」
【法令違反リスク】通信事業会社F社 景品表示法違反問題
2016年、SIMフリーキャリアを展開するF社が、消費者庁から景品表示法に基づく課徴金納付命令を受けた問題。
「通信速度業界最速」「SIM販売シェアNo.1」「LINEのデータ通信料無料!」など、明確な根拠を提示せず、消費者に誤認を与えてしまうような不当表示を公式ホームページに掲載していた。
消費者庁は同社に対し、課徴金8824万円および再発防止を求める措置命令を出した。
その後2017年、MVNO事業※2を別の会社に売却、民事再生法の適用を申請するなど、苦しい経営が続いた。
※2MVNO事業:Mobile Virtual Network Operator(仮想移動体通信事業者)の略称。
通信大手4社が保有する通信設備の回線を借用して、移動体通信サービスを提供する事業者のこと。
関連記事:データベースを使って無料で企業情報を調査する方法を解説
コンプライアンス違反を防ぐための対策
コンプライアンス違反を防ぐために、社内マニュアルなどを改定して、根本からリスクを減らす必要があります。
まずは、現状の企業経営で今後コンプライアンス違反に繋がりそうなリスクを抽出し、対策すべき課題を明確にしましょう。
抽出した対策を社内マニュアルに盛り込み、全社メールやポスターなどで全社員に速やかに周知徹底することで、企業全体のコンプライアンス違反を未然に防ぐことが重要です。
また、社員1人1人にも焦点を当ててコンプライアンス違反対策を行う必要があります。
データの持ち込みや法律・法令違反など、目の届かない所で違反をしてしまう可能性があるので、企業の担当者はコンプライアンスについての教育を定期的に行い、違反リスクを減らしましょう。
また、ハラスメントを日常的に受けているが、相談や報告ができない社員が潜んでいる可能性があります。
ハラスメントによるコンプライアンス違反のリスクを減らすためにも、相談窓口の設置や、定期的な人事面談を実施し、社員1人1人のメンタルケアを行っていく事も重要です。
関連記事:コンプライアンスマニュアルの作成方法 手順や作成例も解説
コンプライアンス遵守に必要な反社チェック・コンプライアンスチェックとは
コンプライアンス違反を回避するためにも、反社チェックが非常に重要です。
反社会的勢力は大きく分けると3つの組織から成り立っています。
- 指定暴力団:都道府県公安委員会から指定を受けた組織。一般的に「ヤクザ」と呼ばれている。
- 準暴力団:暴力団には所属しない「半グレ」集団。暴力行為や詐欺などの犯罪行為を行う。
- 暴力団関係企業:暴力団の資金獲得のために経営している企業。「フロント企業」とも呼ばれている。
これらの組織以外にも、反市場勢力や、過去に不祥事を起こした企業・人物を特定する必要があります。
反社チェックは「コンプライアンスチェック」とも呼ばれており、自社の社員はもちろん、業務委託先、取引先など自社に関連する企業・人物が、反社会的勢力・反市場勢力と繋がっていないかを確認する方法です。
もし、反社会的勢力・反市場勢力との繋がりが発覚してしまうと、以下のようなリスクを伴います。
- 暴力団排除条例などの法令違反
- 企業信頼度の低下
- 従業員の減少
こうしたリスクを減らすために、反社チェックは重要な役割を担っています。
関連記事:反社チェックを無料で行う方法 ツール利用についても解説
まとめ
コンプライアンス違反を1度でも起こしてしまうと、企業の信頼度は低下してしまい、最悪の場合「経営破綻」にまで追い込まれてしまいます。
違反は企業が気づかぬうちに犯しているパターンもあるので、担当者は細心の注意を払う必要があります。
コンプライアンス違反のリスクを減らすためにも、社内規範の明確化、コンプライアンスに関する教育、反社チェックなどの対策をしっかりと行っていきましょう。
関連記事:社内のコンプライアンス意識を高めるためにやるべきことは?効果的な手段を解説
関連記事:コンプライアンス違反の罰則とは 起こさないための対策と事例を詳しく解説