反社会的勢力に対応するためのガイドライン 反社チェックの基準とは?
企業が安心して取引していくためには、反社会的勢力への対応が必要不可欠です。
2007年には『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(企業暴排指針)』が施行されるなど、近年反社会的勢力の排除を強化していく動きがみられています。
今回は、反社会的勢力への対応ガイドラインや反社チェックを実施する基準について解説していきます。
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目次[非表示]
- 1.反社会的勢力への対応ガイドラインとは
- 1.1.国のガイドライン 反社関連の指針や法律とは
- 1.1.1.暴力団対策法
- 1.1.2.企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(企業暴排指針)
- 1.1.3.犯罪収益移転防止法
- 1.1.4.政府として最新の反社会的勢力の定義
- 1.2.各都道府県のガイドライン 暴力団排除条例とは
- 1.3.金融庁における反社チェックのガイドライン
- 1.4.証券取引所における反社チェックのガイドライン
- 2.反社チェックを実施する基準とは
- 2.1.反社チェックを実施するタイミング
- 2.2.反社チェックの実施方法
- 3.まとめ
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反社会的勢力への対応ガイドラインとは
反社会的勢力へのガイドラインは、企業を守るためだけでなく外部の企業・機関から信頼を得るために必要なものです。
暴力団や詐欺集団またはそのような行為をしている個人が「反社会的勢力」と定義され、企業はこのような団体または個人との関わりを根絶する必要があります。
反社会的勢力は巧妙な手口で企業に近づこうとしてくるため、故意でなくとも関わりを持ってしまう場合があります。
そのため、国や各都道府県は反社会的勢力に対するガイドラインを示しています。
国のガイドライン 反社関連の指針や法律とは
反社会的勢力への対応ガイドラインの1つとして、国・政府が公開しているものがあります。
項目は下記の通りです。
- 暴力団対策法
- 企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針
- 犯罪収益移転防止法
それぞれを確認していくことで、法律や国の指針についての理解を深めていくことができます。
1つずつみていきましょう。
暴力団対策法
暴力団対策法とは「暴対法」とも呼ばれ、暴力団の定義や禁止される行為などを定めている法律です。
具体的に禁止されている行為として次のようなものが挙げられます。
- 口止め料やみかじめ料などを要求する行為
- 不当に金融商品や株式を要求する行為
- 宅地を不当に売買・交換することを要求する行為
参考:e-GOV 法令検索 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
また、暴対法では「暴力団を利用すること」も禁止行為として定められています。
暴対法は反社会的勢力の1つである暴力団に対する法律です。
そのため、国が定める反社会的勢力のガイドラインの1つとして機能しています。
企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(企業暴排指針)
国が公開するガイドラインの1つとして、2007年に施行された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(以後、企業暴排指針)があります。
この指針には、反社会的勢力による不当要求の手口の解説や企業がどのように反社会的勢力との関係を遮断するかなどが示されています。
あくまでも指針であるため、法的効力はないものの具体的な対策の方法だけでなく、企業内部の統制についても言及されているためとても役立ちます。
具体的な内容をいくつかご紹介します。
- 不当要求の手口には大きく分けて「接近型」「攻撃型」の2種類があり、その手口の詳細を解説
- 契約した取引先などに反社の疑いがある場合は暴力団排除条項や契約自由の原則を活用して契約解除を図ることができる
- 警察署などの機関からの情報提供による対策
- 企業の内部統制システムを構築する上で、どのような点に留意するべきか
この指針に則って対策を取っていくことで、反社会的勢力との関わりを少なくすることが可能になります。
関連記事:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説
犯罪収益移転防止法
犯罪収益移転防止法もガイドラインの1つとして活用することができます。
平成20年に全面施行された法律で、犯罪で得た資金を取り締まる目的で制定されました。
この法律は主に金融機関や特定取引業者に対して義務付けられるため、企業のガイドラインとしても機能させることができます。
犯罪収益移転防止法の内容の一部をご紹介します。
- 200万円を超える現金取引(宝石・貴金属等)の場合には本人特定事項を確認する必要がある
- 取引時には確認記録を作成・保管する義務がある
- 取引するものが犯罪によって得られたものの疑いがある場合、すぐさま公安委員会に届け出る
参考:e-GOV 法令検索 犯罪による収益の移転防止に関する法律
本人確認や確認記録を正しく行うことで、反社会的勢力が不当に入手した金品の流れを抑えることができるのです。
関連記事:企業コンプライアンス強化のために必要な「法人の本人確認」とは
政府として最新の反社会的勢力の定義
反社会的勢力の取り締まりが強化されると共に、取り締まりの難しい、いわゆる「グレーゾーン」の犯罪行為が横行し始めています。
また、暴力団だけでなく、半グレなどの準暴力団も反社会的勢力だと認識されるようになってきました。
政府としては反社会的勢力について、その形態が多様であり、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであるから、限定的かつ統一的に定義することは困難との見解を述べています。
参考:参議院 第200回国会(臨時会)「参議院議員熊谷裕人君提出反社会的勢力の定義に関する質問に対する答弁書」
各都道府県のガイドライン 暴力団排除条例とは
各都道府県の反社会的勢力への対応ガイドラインは主に「暴力団排除条例」によって公開されています。
暴力団排除条例とは、「暴排条例」とも言われ各都道府県で定められている条例です。
これにより、各都道府県で暴力団に対しどのような施策をとるのかを決定しています。
東京都では、主に下記の3つを暴排条例で定めています。
- 暴力団排除活動の推進に関する基本的施策等
- 都民等の役割(努力義務)
- 禁止行為
基本的施策には、都内の事業者に対する排除措置や暴力団からの離脱促進に関するものが記載されています。
都民には青少年に対する教育、助言・お祭りなどのイベントの主催者に暴力団関係者を関わらせないようにするなどの措置が努力義務として課せられています。
禁止行為として、暴力団事務所を開設・運営してはならない点や暴力団を用心棒として扱ってはならないなどの項目があり違反した場合には罰則を科すなど厳しい措置が取られているのです
これらの条例が都道府県ごとに定められているため、企業はこの条例に則って運営していく必要があります。
金融庁における反社チェックのガイドライン
金融庁では、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に対するガイドライン」を公開しています。
マネー・ローンダリングとは資金洗浄とも言い、犯罪によって得られた資金の出どころをわからなくするために、他人の口座などを利用する方法です。
株や債権を購入することでも可能なため、企業はマネー・ローンダリングに関して厳しく取り締まる必要があります。
金融庁のガイドラインでは、このマネー・ローンダリングへの対策に向けたガイドラインや、テロ組織への資金供与の対策が記載されています。
金融機関や警察との連携を強化し反社会的勢力に対する情報を共有したり、融資の際に反社会的勢力と関わりを持たないためのチェックを強化したりすることを定めています。
具体的には、顧客管理を強化するためにITシステムの導入を推進する内容や、疑わしい取引が生じた場合には届出を行うべきという内容が挙げられます。
参考:金融庁 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン
証券取引所における反社チェックのガイドライン
証券取引所では、上場審査の際に反社会的勢力との関わりがないような体制を作ることを義務付けています。
東京証券取引所の上場審査の内容を一部ご紹介します。
- その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項3項・反社会的勢力による経営活動の関与を防止するための社内管理体制を整備すること
- 新規上場申請者の企業グループが反社会的勢力による経営活動への関与を防止するための社内体制を整備すること
IPO準備企業は、社内の反社チェックに対する管理体制を整えておく必要があるのです。
関連記事:IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか?上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説
反社チェックを実施する基準とは
反社チェックを実施する基準は、これまで解説してきた「企業暴排指針」や金融庁が公開しているガイドラインなどに記載されています。
企業を守る側面だけでなく、従業員や株主などを守るために定められています。
反社チェックを実施する基準として、今回は以下の2つの項目に沿って解説していきます。
- 反社チェックを実施するタイミング
- 反社チェックの実施方法
それぞれ確認していきましょう。
反社チェックを実施するタイミング
反社チェックを実施するタイミングは主に次の場合です。
- 契約が締結される前
- 契約が更新される前
- 資金調達の前
- 上場審査の前
- 社員・役員採用の前
契約に関するタイミングは、締結時だけでなく更新のタイミングでも必ず行うようにしましょう。
最初は反社会的勢力と関わりがなかった企業も、知らず知らずの内に関わりを持つようになっている可能性があります。
資金調達の際には、マネー・ローンダリングによって資金洗浄されているものではないか、不当に入手されているものではないかを確認する必要があります。
これらの確認方法は金融庁のガイドラインなどの参考にするとよいでしょう。
参考:金融庁 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン
ご紹介したタイミングだけでなく、企業の取引形態や採用形態などに応じて反社チェックのタイミングを十分に検討しておく必要があることを覚えておきましょう。
参考記事:反社の見落としゼロへ!既存顧客への定期的な反社チェックが必要な3つの理由
反社チェックの実施方法
具体的に反社チェックを行う方法についてご紹介していきます。
- 暴力団排除条項の締結
- 新聞やインターネット検索を活用した公知情報のチェック
- 企業の基本情報の確認
- 専門調査期間への委託
契約締結の際、契約書に「暴力団排除条項」を設置し、締結することで最低限の反社排除対策を行うことが可能です。
暴力団排除条項に関して契約先がネガティブな反応を示した場合、反社会的勢力と関わりがある疑いがあるので注意しましょう。
新聞やインターネット検索などの公知情報の検索を行うことで、事前に反社を排除することが可能です。
また、企業の基本情報を調査し、不自然な点がないかどうかも確認が必要です。
もしも疑いが強くなった場合は、興信所などの専門調査機関を活用することで反社会的勢力との関わりの証拠を入手できる可能性があります。
もしもの場合は、警察へ照会することも可能です。
さまざまな手段があるため、社内でどのような反社チェックの手法を確立させていくのか検討するようにしましょう。
参考記事:反社チェック・コンプライアンスチェックの具体的な方法とは?
まとめ
今回は反社チェックに関するガイドラインについて解説してきました。
国や各都道府県が公開しているガイドラインを基に、社内での反社チェック体制を整えていくことが大切です。
上場準備中の企業などは上場申請にも重要なポイントになります。
今回ご紹介した内容を参考に、反社会的勢力に対する認識を強めていきましょう。
関連記事:コンプライアンス・リスクとは?リスク管理方法とフローを解説
関連記事:IPO準備が大変な理由とは?業績成長と内部統制のバランスについて解説