コンプライアンスチェックシートの必要性とは?チェックすべき項目を解説
昨今企業におけるコンプライアンスの重要性が高まっていることで、社員の行動指針の策定やコンプライアンスに対する意識改革が必要とされています。
そのような内部統制の改善にはコンプライアンスチェックシートなどを活用することで、より迅速で効果的な対策が可能です。
今回は、コンプライアンスチェックシートの必要性や記載するべき項目について解説していきます。
【参考】より深く知るための『オススメ』コラム
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目次[非表示]
- 1.コンプライアンスチェックシートの必要性
- 2.コンプライアンスチェックシートに記載すべき7つの項目
- 2.1.会社の基本的なルール
- 2.2.職場の基本的なルール
- 2.3.取引先との契約
- 2.4.債権管理・債権回収
- 2.5.消費者との関係
- 2.6.営業秘密や知的財産
- 2.7.コンピュータなどのITの関係
- 3.コンプライアンスチェックシートの活用方法
- 4.コンプライアンス遵守に必要な反社チェック・コンプライアンスチェックとは
- 5.まとめ
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コンプライアンスチェックシートの必要性
コンプライアンスチェックシートとは、コンプライアンスに関する遵守するべき項目などをまとめたものを指します。
このチェックシートを活用することで、内部監査にも役立ちコンプライアンスに関するトラブルを未然に防ぐことができるのです。
関連記事:コンプライアンスが重要視される理由とは?必要なワケを解説
内部監査とは
内部監査とは、企業の経営における社内体制などの調査をいいます。
社内で構成された監査役員が調査し、健全な企業であるかをチェックするのです。
内部監査で調査する項目はさまざまあり、会社法などの法律が守られているか、コンプライアンス違反を防ぐ対策が取られているかなども調査します。
内部監査によって明確になった問題点を細かく改善していくことで、健全で優良な企業を目指すことが可能です。
関連記事:IPO準備企業にはなぜ監査法人が必要?必要な理由と選び方について解説
内部監査の目的
内部監査をする目的の例として下記があります。
- 法令遵守されているかの確認
- 業務の有効性や効率性の確認
- 財務報告の透明性・信頼性の確認
- 資産が適切に保全されているかの確認
法律を守ることは当たり前とされていますが、企業が守るべき法律は多くあり全てを把握しきれていない場合もあります。
法改正などによって過去とは内容の違う法律がきちんと適用されているかどうかも内部監査によって調査しなければなりません。
社内業務がきちんと効率化されているかどうかも1つの調査項目です。
目標が適切に設置されているかや業務の効率化に取り組んでいるかなどもチェックすることで、社内の管理体制が適切であるかを証明できます。
また、財務に関する報告や企業の資産に関する問題も内部監査で調査します。
会社の利益や資産が透明性のあるものでないと、取引先や投資家からの信頼がない企業になりかねないためです。
関連記事:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説
コンプライアンスチェックシートに記載すべき7つの項目
今回は、日本弁護士連合会が公開している「中小企業のためのコンプライアンス・チェックシート」を参考に解説していきます。
コンプライアンスチェックシートの項目は次の通りです。
- 会社の基本的なルール
- 職場の基本的なルール
- 取引先との契約
- 債権管理・債権回収
- 消費者との関係
- 営業秘密や知的財産
- コンピュータなどのITの関係
これらの項目を深く理解しておくと、コンプライアンスチェックの際にどの点を重視するべきなのかが明確になります。
今回紹介するコンプライアンスチェックシートの具体的な項目は全部で52項目あり、点数によって弁護士の必要度が異なります。
- 0~5点:万が一に備えて弁護士の知り合いは用意しておく
- 6~10点:弁護士に一度相談し体制を見直してみる
- 11~20点:顧問弁護士を探して定期的に相談する
- 21点以上:トラブルを避けるため、早急に弁護士に相談する
点数をつけながらチェックしてみましょう。
参考:日本弁護士連合会 中小企業のためのコンプライアンス・チェックシート
関連記事:コンプライアンス・リスクとは?リスク管理方法とフローを解説
会社の基本的なルール
会社の基本的なルールはコンプライアンスチェックの重要な項目の1つです。
このルールをチェックしておくことで、企業内部の統制ができるだけでなく株主とのトラブルも未然に防ぐことが可能です。
次のような項目をチェックしましょう。
- 株主は複数いるが、株主総会を開く予定はない
- 株主総会は開くが、書面での招集通知はせず、一部の株主しか出席しない
- 取締役会はあるが、実際に開く予定はない
- 株主総会や取締役の議事録を作っていない
- 会社の定款がどこにあるかわからない
- 株主は複数いるが、株主名簿は作成していない
- 親族や知人が監査役になっているだけで会計監査はしていない
- 弁護士は費用が高いイメージがあるので利用したことがない
職場の基本的なルール
就業規則や勤怠管理などの職場の基本的なルールもチェックするべき項目です。
年々さまざまなハラスメントが問題になり、職場の状態が健全かつ公正であることが求められています。
育休などに関する規定や残業手当・有給消化に関する規定も調査しなければなりません。
具体的な項目は次の通りです。
- 会社の就業規則を作っていない
- 気に入らない従業員や能力のない従業員はクビにしてもよい
- 労働組合に入った従業員は辞めてもらうことにしている
- 従業員が自主的に残業してくれるので残業手当はないし「36協定」も必要ない
- タイムカードや出勤簿などで従業員の労働時間を管理していない
- セクハラやパワハラは従業員同士の問題で会社の問題ではないと思う
- 結婚や出産をした女性従業員は辞めてもらう
- 「働き方改革」関連の法律は中小企業とは無関係だと思っている
このチェックを厳しく行うことで、健全な職場というだけでなく「働きやすい職場」を実現することにもつながります。
関連記事:コンプライアンス違反とは?事例や法令遵守のための取り組みを解説
取引先との契約
取引先との契約時、問題やトラブルが発生しないように多くの項目をチェックする必要があります。
項目は以下の通りです。
- 取引先との間で契約書を作成したことがない
- 取引先との間で契約書を締結したが、中身を見ていない
- 取引先から支払条件や代金について、一方的に不利な要求をされている
- 取引先から商品購入の際、不要な商品も一緒に買うよう求められている
- 取引先に暴力団関係者がいるので不利な条件で取引を求められる
- 顧客名簿を従業員が自由に社外に持ち出せる
- 名簿業者から顧客名簿を買ったことがある
- 裁判沙汰はないので弁護士は必要ないと思う
取引先との関係を明確にしておくためには、契約書などの書類を正確に作成しておく必要があります。
また、その書類が適切であるかどうかも正しく見れるようにしておかなければいけません。
情報保護の観点からも取引先との契約は厳しくチェックしましょう。
関連記事:反社会的勢力と知らずに契約を結んでしまった場合に無効にできる?
債権管理・債権回収
債権の管理・回収は会社の資金に関わる重要な項目です。
次の項目をチェックすると現在の債権に関する現状が明確になります。
- 受注のほとんどを口頭でおこなっている
- 受注した後に契約条件を口約束で変更することがよくある
- 受発注の内容を社内の帳簿できちんと管理できていない
- 入金予定日に代金が入ってこなくても放置することがある
- 取引を始める際、相手の経営状況を全く確認しない
- 取引先の会社が潰れたとしても、社長個人に請求すればいいと思っている
- 取引先の社長が口頭で自宅を担保に入れると言ってくれているので安心だ
- 取引先が倒産した時に取引先の商品を勝手に持ち帰ったことがある
債権に関することも取引先との契約書同様、法的に効力のある書類などを用意しなければなりません。
この体制が整っていないと大きな資金トラブルの可能性が高まり、最悪倒産に繋がります。
債権管理・債権回収に関する項目も見落としのないようにチェックしましょう。
消費者との関係
商品を消費者向けに販売している企業は、消費者との関係もコンプライアンスに関わる項目です。
チェックするべき項目は以下の通りです。
- 自社の商品の広告には、正直、少し大げさなところがある
- クーリング・オフという言葉の意味を知らない
- 認知症の方との契約も署名捺印してもらった以上はすべて有効と思う
- 消費者契約法という法律があるのを聞いたことがない
- 契約書に「商品事故は一切責任を負わない」と書いているので安心だ
- 自社商品の取扱説明書に安全性に関する注意が記載されていない
Youtubeなどの動画配信プラットフォームが発達している影響から、広告にまつわる問題も重要視されています。
誇張表現のある広告は消費者を騙していると捉えられ訴えられるケースも少なくありません。
クーリングオフなどの消費者を守るための制度についても理解しておく必要があります。
関連記事:コンプライアンス違反の処分とは?企業・社員への処分の内容と対策方法を紹介
営業秘密や知的財産
会社の営業に深く関わる、いわゆる「企業秘密」や会社としての知的財産権を守ること・他社のそれを侵害しないこともコンプライアンス違反を侵さないために重要な項目です。
次の項目をみてみましょう。
- 顧客名簿や重要なノウハウがあるが社内で秘密として厳重管理していない
- 重要な営業秘密を提供するにあたって秘密保持契約を結ばない
- 他社から従業員を引き抜き、他社の営業秘密を入手したことがある
- 他社と製品の共同開発をおこなうにあたって契約書を交わさない
- 他人のホームページに良いフレーズがあったので自社の宣伝に使っている
- 他社の売れ筋商品の名前を模倣して販売したことがある
顧客名簿などの管理は個人情報保護の観点からも大きな問題になりかねません。
企業の秘密と同等重要な情報であることを認識し適切に管理することが求められます。
他社・他人の権利を侵害しないためにも、これらのチェックは厳しく行う必要があります。
コンピュータなどのITの関係
現在ほとんどの企業の社内業務はパソコンやタブレットを用いて行われています。
これらの通信機器においてチェックするべき項目が以下の通りです。
- コンピュータウイルスの対策をおこなっていない
- メールで添付ファイルを送る際にパスワード設定をおこなわない
- FacebookやTwitterでの情報漏えい防止を従業員に注意していない
- インターネットで通信販売をしているが、法律上の規制を意識したことがない
- 販促として電子メール広告をおこなっているが、法律上の規制を意識したことがない
- 汎用パソコンソフトを複数のコンピュータに使いまわしている
この項目では電子メールなどを受信・送信する際は必ず一定のルールを設けることや、SNSに関する規定も重要です。
社内のセキュリティに関する意識チェックとして、訓練する形で偽のウイルスメールを社内に配布しその結果をチェックする「セキュリティチェック」を実施している企業も多くあります。
これらのチェック体制などを整えていくこともコンプライアンスを守るために必要な施策です。
関連記事:コンプライアンス宣言とは?コンプライアンス違反しないための対策を解説
コンプライアンスチェックシートの活用方法
コンプライアンスチェックシートを用いることで、定期的に同じ内容でコンプライアンスに関するチェックを行えます。
コンプライアンスチェックを効率化できるだけでなく、一定の基準のもと公正な調査ができる点でもメリットは大きいです。
また、企業の業種や業務内容によって情報漏洩などのリスクが発生する場所は異なります。
そのため、今回紹介したコンプライアンスチェックシートに付け加える形で、会社独自のチェックシートにしていくことも大切です。
企業が適切なチェックを効率的に行えるよう、コンプライアンスチェックシートを有効活用していきましょう。
関連記事:コンプライアンスとは?わかりやすく・簡単に意味や使い方を解説
コンプライアンス遵守に必要な反社チェック・コンプライアンスチェックとは
コンプライアンス遵守のためには、「反社チェック」「コンプライアンスチェック」と呼ばれる管理体制を整えておく必要があります。
2011年に施行された暴力団排除条例によって、すべての企業で反社会的勢力の排除体制を整えることが求められています。
反社会的勢力と関わりがある場合、投資家保護の観点から上場ができなくなったり、上場企業が廃止処分を受ける場合もあるのです。
コンプライアンスチェックは、今回紹介した「コンプライアンスチェックシート」を活用する以外に、以下の対策例があります。
- 取引時に反社条項を締結する
- データベースを活用したチェック
- 専門の調査機関への委託
- 弁護士・社労士・会計士などの専門家を活用する
他者との取引を進める際、「反社条項」と呼ばれる反社会的勢力に対する条項を定め契約書に記載しておくと効果的です。
反社会的勢力と関わりのない企業であればスムーズに締結できますが、反社条項の締結にネガティブな姿勢を相手が見せる場合もあります。
その場合は早急に取引を中止し、興信所などの専門の調査機関へ調査を委託するのが得策です。
社内のコンプライアンスに関わる対策として、「弁護士・社労士・会計士」などの専門家を活用しましょう。
コンプライアンスに関わる労務や財務周辺の改善をしたい場合は、それぞれの専門家からの意見をもらうことでより効果的な対策や改善が行えます。
これらのチェック・管理体制を整えておくことで、企業内外でのトラブルを避け、周りに健全で透明性のある企業としてアピールできます。
反社会的勢力への対策や企業内部の管理体制について十分検討し改善に努めましょう。
関連記事:反社チェック・コンプライアンスチェックの具体的な方法とは?
まとめ
今回は、コンプライアンスチェックシートの必要性や具体的な項目について紹介してきました。
法律・労務管理・財務管理などさまざまな問題は企業のコンプライアンス意識と深く関わっています。
コンプライアンス遵守のための施策の1つとして、コンプライアンスチェックシートは効果的です。
内部監査を円滑にすすめるためにもチェックシートは必要で、さまざまな観点から調査を進められます。
定期的にコンプライアンスチェックを行い、企業にとって大きな問題やトラブルに繋がらないよう社内のコンプライアンスに対する意識を高めておきましょう。
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