採用時のバックグラウンドチェックとは 必要性とメリット・デメリットについて解説
皆様が「採用」を行う際、履歴書や職務経歴書だけの情報では不安になることはありませんか?
性善説で考えれば「正しい情報」のみを記載してくる採用者ばかりであると言えますが、実際には経歴の詐称などが行われている場合も少なくありません。
企業規模を拡大していく中で、「採用」は切っても切り離せないものです。
最近では採用者の履歴書や職務経歴書、面接だけではわからない部分は「リファレンスチェック」や「バックグラウンドチェック」を行うことによって補う企業も増えています。
今回は反社チェックとも関係がある「採用」時のバックグラウンドチェックについて解説していきます。
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目次[非表示]
- 1.採用候補者のネガティブ情報を確認するバックグラウンドチェックとは
- 2.バックグラウンドチェックの目的や効果とは
- 2.1.職務経歴に対する第三者情報
- 2.2.反社会的勢力との関係がないか
- 3.バックグラウンドチェックの調査内容とは
- 3.1.学歴・職歴
- 3.2.反社・犯罪歴
- 3.3.民事訴訟歴・破産歴
- 3.4.インターネット・SNS調査
- 4.バックグラウンドチェックを行うにあたって注意点
- 4.1.1.企業から「採用」候補者への説明と同意
- 4.2.2.企業から調査会社への依頼
- 4.3.3.調査会社による調査の実施と結果報告
- 4.4.バックグラウンドチェックの注意点
- 5.バックグラウンドチェックまで行かなくても「反社チェック」だけは行ったほうが良い
- 6.まとめ
採用候補者のネガティブ情報を確認するバックグラウンドチェックとは
バックグラウンドチェックとは採用時に実施する「身元調査」で、採用候補者の経歴などをチェックすることを指します。
具体的には学歴・職歴、反社・犯罪歴、民事訴訟歴・破産歴、SNSなどを調査します。
そもそも採用候補者が経歴詐称などをしていないかをチェックすることですが、行うことによって採用のミスマッチを防いだり、事前にレピュテーションリスクを避けることが期待されます。
実はこのバックグラウンドチェック、外資系や金融系の企業ではこれまでも行われてきましたが、一般企業では馴染みがありませんでした。
しかし、最近では企業における「終身雇用」という企業の慣行がなくなりつつあり、これにより働き手の転職回数も増えたことでバックグラウンドチェックを取り入れる企業が増えてきました。
具体的にバックグラウンドチェックとは、どんなことを行うのか、詳しく解説していきます。
関連記事:IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか?上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説
バックグラウンドチェックの目的や効果とは
バックグラウンドチェックの目的は、採用候補者の経歴に嘘がないかなどを経歴から調査し、過去に問題を起こした人物でないかを確認することで自社の採用リスクを軽減することです。
もし仮に採用した後に不利益を与えかねない人物であったことが判明しても、場合によっては契約取り消しにできないケースもあります。
バックグラウンドチェックでは下記のような情報が得られます。
- 職務経歴に対する第三者情報
- 反社会的勢力との関係がないか
順に解説していきます。
職務経歴に対する第三者情報
採用担当者は候補者に対し、基本的には「履歴書」と「職務経歴書」、「面接で得た情報」のみで採用可否を見極めなければいけません。
しかし、本人からの職務経歴はあくまでも候補者の自己申告の内容。
その経歴が本当かを確認するには第三者の情報が必要になります。
バックグラウンドチェックでは、調査会社より前職の同僚や上司に対し、雇用形態、在籍期間、職務内容などをヒアリングし、経歴に嘘が無いか確認することができます。
反社会的勢力との関係がないか
バックグラウンドチェックおいては「反社チェック」もその一つです。
職務経歴や能力ばかりに気をとられてしまい、採用候補者への反社チェックは忘れられがちですが、採用候補者にも反社リスクは潜んでいます。
バックグラウンドチェックを行うことで、反社チェックも済ませることができるので、安心して採用することができるでしょう。
このように履歴書や職務経歴書からは得られない情報も収集することで、リスクのある人物の採用を回避することができます。
関連記事:密接交際者の基準とリスク 反社会的勢力の関係者にならないために知っておくべきこと
バックグラウンドチェックの調査内容とは
バックグラウンドチェックの調査内容は下記のようなものがあげられます。
- 学歴・職歴
- 反社・犯罪歴
- 民事訴訟歴・破産歴
- インターネット・SNS調査
順に確認していきます。
関連記事:バックグラウンドチェックはどこまで調査が必要なのか?採用ターゲット層に合わせた調査とは
学歴・職歴
履歴書に記載されている学歴や職歴について間違いがないか確認できます。
採用候補者が虚偽の報告をするような人物であれば、企業としてはもちろん積極的に採用したくないでしょう。
確認方法は、学歴については、採用候補者に対する卒業証明書の提出依頼や、在学中であれば学校への在籍確認を行うケースもあります。
職歴については、雇用形態や在籍期間、職務内容などを過去の勤務先の同僚や上司に対し、電話やメールなどで確認します。
反社・犯罪歴
「採用」候補者が「反社会的勢力」と関係を持っていないかもチェックします。
取引先や従業員だけでなく、反社会的勢力が入り込まないように新しく採用する人物への反社チェックも当然必要となります。
また、ネガティブ情報である「犯罪歴」についてはプライバシー保護の観点から、業務上必要な範囲内でのチェックに留めます。
もし、自社の業務を遂行する上で、問題となるような犯罪歴がある場合は、採用後に大きなリスクになりかねないので注意が必要です。
例えばアメリカでは、とある州にて従業員が社用車を運転中に事故を起こし損害を被りました。
後にその従業員が飲酒運転によって2度も運転免許を取り消されていたことが明らかになったようです。
適切なバックグラウンドチェックを行わなかったとして、企業側は約7億円の支払いを命じられた一件です。
海外の事例ではありますが、同様のケースは国内でも起こりうると考えましょう。
反社チェックにより反社会的勢力の関係者でないか確認したり、犯罪歴を調査することで、採用した際の企業リスク回避に繋がります。
関連記事:反社チェック・コンプライアンスチェックの具体的な方法とは?
民事訴訟歴・破産歴
バックグラウンドチェックで主に意識すべき民事訴訟歴とは具体的には財産に関する紛争があったかどうかを確認することが多いです。
例えば、「損害賠償請求された」などがあたると思います。
ただ、民事訴訟歴は公的な機関でデータベース化されていないため、調査会社が持っている独自のデータベースを確認することが多いです。
また、破産歴を調べる理由については、職業制限の対象となる仕事が存在するからです。
例えば、税理士や弁護士、信用金庫の役員や生命保険募集人など他人の資産や金銭を扱う仕事は制限がかかりやすいです。
自社の事業内容によっては、この辺りについても確認することが必要となるでしょう。
ちなみに破産歴は官報で公開されている情報を調査することができます。
参考:インターネット版 官報
インターネット・SNS調査
近年では気軽にできることもあり、インターネット上での調査も一般的となっています。
WEBのニュース記事やブログ、SNSで不適切な投稿をしていないかなども確認することができるのでおすすめです。
SNS上で公序良俗に反するような投稿が普段から散見されているケースや社会的なリテラシーの低さが伺えるなどは、例えば社外秘情報を公開してしまう様な一面に繋がるかもしれません。
もし確認できた場合には、そのような人材は自社に多くのリスク・不利益を与える恐れがあります。
関連記事:バックグラウンドチェックとは?リファレンスチェックとの違いも解説
バックグラウンドチェックを行うにあたって注意点
バックグラウンドチェックが採用時において効果的なのはイメージが付いてきましたでしょうか?
しかし、かなりの工数がかかるため、多くの企業が調査会社へ依頼しているのが実情です。
では調査会社はどういった流れで行い、利用する企業側にはどのような注意点があるのでしょうか?
- 企業から「採用」候補者への説明と同意
- 企業から調査会社への依頼
- 調査会社による調査の実施と結果報告
流れに沿って解説していきます。
1.企業から「採用」候補者への説明と同意
バックグラウンドチェックは「採用」候補者の「個人情報」を取得することになるので、無断で行えば、個人情報保護法に抵触してしまいます。
そのためバックグラウンドチェックを行うことについて本人から「合意」を得なければいけません。
承諾なしに行うことは法律違反になってしまうので気をつけてください。
もちろん、依頼する調査会社への個人情報の提供にも同意が必要になりますので、併せて同意取っておきましょう。
その際のエビデンスが残るように、書面で合意を得ることをオススメします。
ただ、何の説明もなしに行うことは候補者側も嫌悪感を抱きます。事前にバックグラウンドチェックについての「目的」や「調査方法の詳細」を説明すると良いでしょう。
関連記事:個人情報保護法に基づくバックグラウンドチェックの必要性と合法性について
2.企業から調査会社への依頼
採用候補者の合意が得られたら調査会社へ依頼します。
実施項目や手法については、事前に調査会社と自社ですり合わせした内容で採用候補者に合意を得て進める必要があります。
内容確認をしていないと欲しい情報が取れない場合もあるので気をつけましょう。
3.調査会社による調査の実施と結果報告
依頼された調査会社は履歴書や職務経歴書に記載された情報に詐称がないか確認していきます。
その際、前職の上司や同僚、独自のデータベースなどに確認を行います。
調査結果は依頼した企業の採用担当者と関係者のみに報告されます。
採用候補者に公開されることはないです。
バックグラウンドチェックの注意点
注意点として考えられるのは「プライバシー侵害」です。
調査対象項目に民事訴訟歴や破産歴などの業務と無関係なものが含まれているため、違法性を指摘されることもあります。
企業が採用の際、認められていることは「業務の目的達成に必要な範囲内」での個人情報取得です。
犯罪歴や民事訴訟歴、破産歴の調査は就職差別につながる恐れがあります。内容の精査や候補者とのコミュニケーションは欠かせないということを前提として理解しておきましょう。
そんな注意点があるバックグランドチェックですが、大企業と呼ばれる企業ではプライバシーポリシーにバックグラウンドチェックを行う旨を記載されていたりと、積極的に取り入れている企業も増えてきています。
バックグラウンドチェックに関する情報を提供しているセミナーも多くあるので、まずは情報を得るところからでもよいので、始めることをオススメします。
それでもうちには…と思った際には、最小限の企業リスクを回避するために「反社チェック」だけは最低限行うことをオススメします。
関連記事:バックグラウンドチェック実施と通知のタイミングは?
バックグラウンドチェックまで行かなくても「反社チェック」だけは行ったほうが良い
バックグラウンドチェックまで行くと、「やりすぎ」と世間から言われる可能性は捨てられませんし、そんなにコストはかけていられない…というご担当者様もいるでしょう。
しかし、「反社チェック」に限っていえば最低限行ったほうが良いでしょう。
もし、採用の際になにも確認せず、反社会的勢力の関係者が自社に入り込んでしまった場合、倒産などの重大なリスクを負う恐れがあります。
反社チェックに関しては2007年の政府から「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が出されるなど、企業に対して反社会的勢力との付き合いについて注視されていますが、これは採用時はもちろん、従業員に対しても適用されることだということを改めて理解しておいてください。
事前の反社チェックを行って、取引先だけでなく、「採用」時にも保険をかけておくことをオススメ致します。
関連記事:反社会的勢力に該当する人物の家族・親族との取引や雇用は可能なのか?
まとめ
採用時のバックグラウンドチェックについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
バックグラウンドチェックを行うことのメリットやデメリットについて、ご理解していただけたかと思います。
全ての項目を調査することができなくても、反社チェックだけでも行うと企業全体に与える影響は抑えることができます。
自社に何が必要で何が必要でないかを取捨選択して、「採用」の際の参考にしてみてください。
関連記事:反社会的勢力の見極め方&企業へ近づく手口とは
関連記事:採用のミスマッチを防ぐリファレンスチェックとは?メリット・デメリットについて解説