コンプライアンス宣言とは?コンプライアンス違反しないための対策を解説
コンプライアンスが重要視される現代において、企業に求められるコンプライアンスも様々な意味を持ちます。
コンプライアンス対策に有効なコンプライアンス宣言とは何かを解説し、コンプライアンス違反を防止する対策も紹介します。
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目次[非表示]
- 1.コンプライアンスとは
- 1.1.コンプライアンスの意味
- 1.2.コンプライアンスが重視される理由
- 1.3.コンプライアンスの種類と違反例
- 2.コンプライアンス宣言とは
- 2.1.コンプライアンス対策には宣言の策定が推奨される
- 2.2.コンプライアンス宣言の例
- 3.コンプライアンス対策に向けて取り組むべきその他の項目
- 3.1.外部への発信の実施
- 3.2.内部通報窓口の設置
- 3.3.コンプライアンス教育の実施
- 3.4.コンプライアンス委員会の設置
- 3.5.内部監査
- 3.6.外部からの監視体制の整備
- 4.コンプライアンス違反になるケースを紹介
- 4.1.粉飾決算、脱税などの不正会計
- 4.2.情報漏洩
- 4.3.不適切な労務管理
- 4.4.製品偽装
- 4.5.情報の不正使用
- 5.コンプライアンス対策には反社チェック(コンプライアンスチェック)を活用しよう
- 5.1.反社チェックとは
- 5.2.反社チェックの実施方法
- 6.まとめ
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コンプライアンスとは
そもそもコンプライアンスとは何なのか、その意味から種類まで詳しく解説していきます。
コンプライアンスの意味
コンプライアンスは直訳すると「法令や規則をよく守ること」「法令遵守」です。
時代の変化に従って企業に求められるコンプライアンスも変化しており、その意味は法令遵守の意味にとどまりません。
日本のビジネスシーンにおけるコンプライアンスは、法令に従うだけでなく、「社会の常識・良識や企業内のルールに従う」「企業責任を果たす」などの意味も含まれています。
例として、定められた法律や規則に準じて健全な会社経営を行うこと、ルールに従って公正・公平に業務を遂行することなどが挙げられます。
関連記事:コンプライアンスの意味と使い方 維持・推進する方法も紹介
コンプライアンスが重視される理由
コンプライアンスが重視されるようになった背景には、2000年代に大企業の法令違反や不祥事が相次いで発生したことあります。
当時、消費者や投資家などから厳しい批判が起こったことがメディアでも大々的に報じられ、違反した企業は社会的信用を失いました。
1度失った信用を取り戻すにはかなりの時間と努力が必要で、多くの企業が経営不振や倒産に陥りました。
こうした出来事から、2006年施行の会社法では大企業を対象に「内部統制システム構築の義務化」、金融商品取引法では上場企業を対象に「内部統制監査制度」が法制化されました。
このように、企業において不正行為を未然に防ぐための内部統制への取り組みが求められたことが、コンプライアンスが重視されるようになった理由の1つです。
また、企業のコンプライアンスを強化することで企業価値が高まるという考え方が広まったことも、コンプライアンスが重視されるようになった要因です。
コンプライアンス強化に取り組んでいることを対外的に公表することで企業の信頼につながり、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)への取り組みを活性化させることで企業価値・企業イメージの向上にも繋がると言えます。
コンプライアンスの種類と違反例
コンプライアンスの主な種類と違反例を紹介します。
- 消費者に関連するコンプライアンス―誇大広告、産地偽装、欠陥商品の販売など
- 投資家や市場に関連するコンプライアンス―粉飾決済、インサイダー取引、贈収賄、カルテルなど
- 従業員に関連するコンプライアンス―ハラスメント、雇用差別、時間外労働など
- 社会・地域に関係するコンプライアンス―産業廃棄物の不法処理、環境汚染、工場災害など
- 政府や国に関係するコンプライアンス―虚偽報告、脱税、租税回避など
関連記事:コンプライアンス違反とは?事例や法令遵守のための取り組みを解説
コンプライアンス宣言とは
コンプライアンス宣言とは、コンプライアンス強化のための「行動規範」を示した宣言のことです。
コンプライアンス宣言は社内意識の向上だけでなく、対外的に発信することで社会的な信用を高める目的もあり、多くの企業が自社HPなどで内容を公開しています。
コンプライアンス対策には宣言の策定が推奨される
企業はコンプライアンス宣言をもとに、法令や企業倫理、社会規範を遵守する体制を作ります。
つまり、コンプライアンス宣言を策定する際に、遵守すべきものについて見直すことになります。
また、コンプライアンス宣言を作成することで、企業内でのコンプライアンスが明文化されるため、社員一人ひとりの意識向上にもつながります。
そして、対外的にコンプライアンス宣言を行った以上、その内容を守らないことによって非難されるのは当然です。
そういった側面もあることから、事前の準備をしっかりと行ったうえでコンプライアンス宣言をすることが、コンプライアンス対策に繋がります。
コンプライアンス宣言の例
- 基本原則・方針
私たち〇〇社は、法令遵守、企業倫理および社会常識に従った、公正で透明性の高い事業活動を遂行し、社会貢献できる企業になることを宣言いたします。
- 具体的な行動指針
経営情報の適切な開示 |
私たちは、株主・投資家に経営情報を適切に開示し、透明性の高い経営に努めます。 |
契約の遵守 |
私たちは、取引先とは公正な契約を締結し、それを順守します。 |
取引先との適切な取引 |
私たちは、市場における自由な競争のもと、取引は公正に行い、取引関係において、法令遵守はもとより社会的規範にも留意します。 |
機密情報・個人情報の適切な管理 |
私たちは、自社の秘密情報・他社より入手した秘密情報(個人情報を含む)を関係法令および社内諸規程に則り適切に管理し、正当な目的のみに使用いたします。 |
インサイダー取引の禁止 |
私たちは、業務遂行上、当社や関係会社または取引先の重要情報を知った場合には、その情報が正式に公表されるまでは、インサイダー取引やその疑いを招くような行動・行為は一切とりません。 |
情報システムの適切な使用及び管理 |
私たちは、会社の情報システム等、会社の資産を、個人的な目的のために使用しません。 |
反社会的勢力との関係の根絶 |
私たちは、市民社会に脅威を与える反社会的勢力には毅然として対応し、一切関係を持ちません。 |
公私で厳格な区別 |
私たちは、個人の利害と会社の利害を厳格に区別し、誠実に業務の遂行を行います。 |
安全で働きやすい環境の実現 |
私たちは、労働関係法令を遵守するとともに、社員に対して健全かつ安全な職場環境を維持していきます。 |
人権の尊重 |
私たちは、人権を尊重し、国籍、人種、性別、年齢、宗教、信条、社会的身分、障害の有無等を理由とする差別やハラスメント(いやがらせ)を一切行いません。 |
関連記事:社内のコンプライアンス意識を高めるためにやるべきことは?効果的な手段を解説
コンプライアンス対策に向けて取り組むべきその他の項目
コンプライアンス宣言の策定以外にも、コンプライアンス対策に向けて取り組むべき項目はいくつかあります。
順番に解説していきます。
外部への発信の実施
策定したコンプライアンス宣言を外部に発信しましょう。
前述のとおり自社ホームページへの掲載を行っている企業は多数ありますが、それ以外にも、会社案内に記載して取引先に配布する、主要取引先へ通知を出すといった発信の方法もあります。
外部へ発信することで、企業の信頼性向上に繋がるでしょう。
内部通報窓口の設置
内部通報窓口は、企業の不祥事や法令違反に気付いた社員がいれば、上司を通さずに直接通報ができる仕組みです。
内部通報制度の設置は企業の義務とされており、不祥事や法令違反を早期に発見し、対処することを目的としています。
また、内部通報した社員が不当な扱いを受けないよう保護することが、公益通報者保護法で定められています。
通報窓口については社内のほか、社外の弁護士など社外通報窓口を設置することが一般的になっています。
コンプライアンス教育の実施
コンプライアンス教育は、役員や経営幹部から、パートやアルバイトまで全社員に対して実施することが重要です。
責任の範囲や実務経験に応じて必要な知識も異なるため、役職・階級別に内容を分けて実施するとさらに有効でしょう。
コンプライアンス委員会の設置
コンプライアンス委員会は、コンプライアンス体制を構築し、それを維持・管理する役割があります。
例として、コンプライアンスマニュアルの策定、教育・研修活動、実施状況の監査、問題発生時の調査と対応、相談窓口などが挙げられます。
企業によって、取締役会のみで構成されていたり、役員・従業員・弁護士などで構成されていたり、外部委員会のみで構成されているなど、メンバーの構成は様々です。
企業の状況を客観的に把握するために、外部のメンバーを入れた構成が推奨されます。
内部監査
行動規範で策定した内容やマニュアルの内容が適切に実施されているか、継続的に監査し検証することが重要です。
内部監査の方法は、例えばコンプライアンスチェックシートを作成し、従業員にアンケートを行うなどです。
外部からの監視体制の整備
企業内のコンプライアンス担当者だけでは、法令違反の判断が難しいケースや、専門的な知識が必要なケースもあります。
そういった場合、弁護士など外部の専門家に調査・監視をしてもらうことが有効になります。
また、企業内では気づくことのできない問題があった場合、外部からの監視体制を整備することで早期発見に繋がります。
関連記事:コンプライアンス・リスクとは?リスク管理方法とフローを解説
コンプライアンス違反になるケースを紹介
コンプライアンス違反になるケースを5つ紹介します。
粉飾決算、脱税などの不正会計
粉飾決算とは、不正な会計処理をして実際とは異なる内容の決算書を作成し、財務状況・経営状況を良好に見せることです。
粉飾決算が行われた場合、株主は正確な投資判断ができなくなってしまいます。
粉飾決算や脱税は、刑事事件や行政処分として責任を問われる違反行為にあたります。
情報漏洩
情報漏洩は企業の持っている機密情報や個人情報が流出してしまうことで、インターネットやリモートワークの普及により近年増加しています。
管理ミスや誤操作、外部からの不正アクセスによる情報漏洩だけでなく、USBメモリの持ち出しや個人メールに情報を転送することも、違反行為と判断される可能性があります。
また個人情報保護法に違反したとして、損害賠償責任を問われる恐れもあります。
不適切な労務管理
労働基準法違反や最低賃金法違反などが当てはまる項目で、賃金や退職金の未払い、割増賃金の未払いなどがあります。
法定労働時間を超えた長時間労働なども違反行為にあたります。
関連記事:コンプライアンス違反の事例を紹介 ハラスメントとの関係も解説
製品偽装
よく耳にする違反としては産地偽装があります。
ほかにも、商品の価値や品質を実際よりも優れたものとして宣伝する誇大広告などは、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)違反にあたる可能性があります。
情報の不正使用
企業内部の人物もしくは内部情報を知ることができる人物が、重要な内部情報を得たことで、情報公開前に株式を売買するインサイダー取引などが含まれる項目です。
また、転職前に顧客データを持ち出して、転職後の会社で使用するなどの行為は、営業秘密侵害として、不正競争防止法違反の罪に問われることがあります。
関連記事:コンプライアンス違反の処分とは?企業・社員への処分の内容と対策方法を紹介
コンプライアンス対策には反社チェック(コンプライアンスチェック)を活用しよう
コンプライアンス対策を行うために、反社会的勢力と関わらないことが重要な項目の1つです。
コンプライアンス宣言の内容にも反社会的勢力の排除があるように、企業において反社会的勢力と関わることは多大なリスクになります。
そこで導入を推奨するのが反社チェックです。
反社チェックとは
反社チェックとは、取引先や自社の従業員、株主が反社会的勢力と関わりがないかを調査することです。
反社会的勢力排除の動きが強まっている現代において、企業には欠かせない対策で、実際に営業職の40%以上が、反社チェックの結果、取引をしなかったことがあるというデータも存在します。
反社チェックの実施方法
反社チェックは、インターネットや新聞を利用して無料で検索する方法から、専門の調査会社に依頼する方法、反社チェックツールを導入して調査する方法などいくつかあります。
それぞれにコストや精度が異なるため、自社にあった方法を選択するとよいでしょう。
関連記事:反社チェックを行うべき対象とは?チェックが必要な理由と実施方法を解説
まとめ
コンプライアンス宣言を策定し、外部に発信することは、企業内の意識向上だけでなく、外部からの信頼獲得にも繋がります。
コンプライアンス違反になる原因は身近にも多数存在するため、しっかりと対策をして違反を起こさないこと、また、問題発生時の対応方法をまとめておくことも重要です。
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