契約書に反社会的勢力排除条項(反社条項)が必要な理由は?具体例とテンプレートも紹介
世の中では様々な契約が行われており、そのほとんどに契約書が存在します。
反社会的勢力排除の動きが強まる中で、契約書には、契約の形態に関わらず、反社条項を入れることが必要とされています。
この記事では、反社条項はどういった内容でなぜ必要なのか、また条項の具体的なテンプレートも紹介、解説します。
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目次[非表示]
- 1.契約書に必要な反社条項(暴排条項)とは
- 1.1.反社会的勢力の定義
- 1.2.反社条項が必要な契約書の種類
- 2.契約書に反社条項(暴排条項)が必要な理由
- 3.反社条項の具体例・テンプレート
- 3.1.反社会的勢力の定義・属性要件
- 3.2.反社会的勢力(属性要件)との関係性による適用
- 3.3.反社会的・暴力的行為の定義
- 3.4.再委託先の確認条項
- 3.5.不当介入の排除・通報条項
- 3.6.違反時の損害賠償・違約金条項
- 4.契約前に実施するべき反社チェック
- 4.1.反社チェックとは
- 4.2.反社チェックの方法
- 4.3.反社チェックツールを導入するメリット
- 5.まとめ
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契約書に必要な反社条項(暴排条項)とは
「反社条項」は「反社会的勢力の排除に関する条項」を略した言葉で、契約書を作成するときには必須の項目です。
契約を締結する際に、反社会的勢力ではないこと、暴力的な要求行為などをしないことを相互に示し、保証するための条項です。
一般的には、「暴力団排除条項」を略して「暴排条項」とも呼ばれています。
契約書に反社条項を定めることで、相手が反社会的勢力だと発覚した場合に、契約の解除や損害賠償の請求をスムーズに進めることができます。
反社会的勢力の定義
政府が2007年に公表した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」において以下のように定義されています。
暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。
関連記事:反社会的勢力の実名リストはある?指定暴力団や関係企業の確認方法
反社条項が必要な契約書の種類
全ての契約書には、基本的に反社条項を設定することが求められていますが、その中でも、反社条項を必ず設けるべきものがいくつかあります。
以下の3つの分類に分けて解説します。
取引に関する契約書(売買契約書・賃貸借契約書・請負契約書など)
取引を行う際、さまざまな契約書を交わします。
契約を行う際、すべての取引先が反社会的勢力でないことや、反社会的勢力と密接な関係がないことを確認し、契約書には反社会的勢力を排除するための反社条項を定める必要があります。
具体的な契約書の例を3つ紹介します。
まず売買契約書では、売主・買主ともに反社会的勢力ではないことや、反社会的勢力に自己の名義を利用させて契約を締結していないことなどを明文化した反社条項を規定します。
2つ目は賃貸契約書で、代表的なものは不動産賃貸契約書です。
反社会的勢力が賃借人となって物件を活動の拠点にすることを防止するため、反社条項を定めます。
物品のレンタルサービスなどにおいても同様の条項が必要です。
最後に請負契約は、請負人が作成物などを完成させ、注文者がその対価に報酬を支払う契約です。
ホームページ制作や住宅建物の建設工事の契約などがあり、フリーランス(個人事業主)と契約を締結する業務委託契約の1つでもあります。
請負契約書でも、売買契約書と同様に、双方ともに反社会的勢力ではないことを表明しておくことが必要です。
上記の3つ以外にも、業務委託契約書や共同開発契約書、商品購入契約書など、取引にはさまざまな契約書があります。
相手の立場や個人事業主・フリーランスなど契約形態に関わらず、反社条項を定め、反社会的勢力ではないことを確認しておくことが重要です。
関連記事:不動産取引における反社チェックの重要性 仲介業者の義務はどこまでなのか?
雇用に関する契約書(雇用契約書・労働者派遣契約書)
雇用に関する契約書においても、反社条項が必須です。
例として雇用契約書や労働者派遣契約書などでは、自社の従業員として反社会的勢力に関連する人物を雇用、または労働させないために、反社条項を定めましょう。
また、取締役に就任するときの委任契約などでも、契約書には反社条項を定める必要があります。
その他の契約書(誓約書など・団体への加入規約など)
基本的にすべての契約書に反社条項を定めることが必要です。
誓約書など相手に一方的に確約をする契約書は、取引や入社時、役員就任時に交わすことが多いです。
反社会的勢力ではないことや、将来も反社会的勢力に関係せず反社会的行為をしないことを表明し、確約することが重要です。
また業界団体、任意団体などに加入する際も、加入規約などに同意する必要があります。
反社会的勢力の加入を防ぎ、もし反社会的勢力であると判明した場合に脱退させるために反社条項を定めておく必要があります。
関連記事:反社会的勢力と知らずに契約を結んでしまった場合に無効にできる?
契約書に反社条項(暴排条項)が必要な理由
契約書に反社条項が必要な理由は、主に以下の3つです。
- 反社会的勢力を排除し、企業を守るため
- 暴排条例で、契約書に反社条項が義務化されている
- 刑事罰や行政処分の対象になる恐れがある
それぞれ詳しく解説します。
反社会的勢力を排除し、企業を守るため
反社条項は、反社会的勢力から受ける可能性がある不当要求や強迫などの行為から、企業を守る役目があります。
反社会的勢力は、強迫、暴力、詐欺等の手法で取引相手などの弱みに付け込み、不当な要求してくる傾向があります。
政府から出された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」では、反社会的勢力による不当要求の手口として、「接近型」と「攻撃型」の2種類があると指摘しています。
接近型とは、一方的なお願いや勧誘といった形で近づいてくる手口で、攻撃型は、事業者側のミスや不祥事などに付け込み不当要求をしてくる手口です。
近年はコンプライアンスが重要視されるようになり、反社会的勢力との関わりは重大なコンプライアンス違反にもなります。
企業や従業員を不当な要求や暴力的な行為から守り、コンプライアンスを維持するためには、反社会的勢力を排除することが大切です。
また、反社会的勢力排除の動きが活発化し、以前よりも巧妙に接近してくるケースが増加しています。
反社会的勢力と気づかずに取引をしてしまった場合、取引の中止や契約解除が必要となるため、反社条項を定めることが重要なポイントになります。
暴排条例で、契約書に反社条項が義務化されている
暴排条例とは、各都道府県で定められている「暴力団排除条例」のことで、政府の指針を受け2010年以降、全都道府県で施行されている条例です。
暴排条例では、契約をする際に契約書に反社条項を定めること、反社でないことの誓約書を交わすことが事業者の義務とされています。
この条例は法律ではありませんが、地方自治体において法律と同等の法的な拘束力があります。
暴排条例では、反社会的勢力に対し利益供与することが禁止とされており、東京都の暴排条例の場合、違反者に対して「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の罰則を定めています。
刑事罰や行政処分の対象になる恐れがある
反社会的勢力と関わりを持つことによって、刑事事件化するケースがあり、刑罰を受ける可能性があります。
また、反社会的勢力との密接な関係や経営への関与があると、刑事事件に発展しない場合でも、許認可のはく奪や指名停止、契約不締結、資格停止などの行政処分が行われることがあります。
刑事罰や行政処分の対象にならなかったとしても、報道や風評などにより企業イメージと信用が失墜し、顧客や取引先、株主などが企業から離れる原因にもなるでしょう。
関連記事:元暴5年条項とは?定義や反社会的勢力排除に必要な理由を解説
反社条項の具体例・テンプレート
契約書には反社条項が必ず必要です。
実際に契約書を作成する際の反社条項のある契約書のひな形(テンプレート)やモデル条項は、暴追センターが公表しているものや、各業界団体でモデル契約書が用意されているものもあります。
各業界や取引の形態などに合わせて、条項の内容を設定しなければいけませんが、テンプレートをベースに作成するとよいでしょう。
以下が、暴追センターが公表しているテンプレートのサイトです。
暴追センターが公表しているテンプレートを項目ごとに、具体的に解説していきます。
反社会的勢力の定義・属性要件
まず反社会的勢力排除のために、第1項として反社会的勢力の定義を示します。
反社会的勢力の多用な類型をもれなく規定するため、「属性要件」と言われています。
反社会的勢力(属性要件)との関係性による適用
第1項で明示した反社会的勢力の定義に当てはまらない場合でも、反社会的勢力と一定の関係を持つ相手に対して適用できるように規定された項目です。
相手が反社会的勢力と関係を持っていると、思いがけず自社も関係を疑われてしまう恐れがあるため、必要な項目になります。
関連記事:事例でみる反社 企業リスクを回避するには
反社会的・暴力的行為の定義
第3項は、反社会的行為や暴力的な行為について定義した項目です。
第2項までが「属性要件」だったのに対し、「行為要件」を定めた項目になります。
再委託先の確認条項
第4項は、取引先の下請け業者など、再委託先が反社でないことを確認する義務を取引先に課すための項目です。
不当介入の排除・通報条項
業務妨害や不当要求などの不当介入があった場合に拒否し、再委託先にも拒否させる義務を持ちます。
また、不当介入があった場合は通報や報告を行うこと、違反した場合には契約を解除できる規定も明示されています。
違反時の損害賠償・違約金条項
取引先が反社会的勢力だと判明した場合に生じる損害やリスクに備え、損害賠償や違約金を請求できるような規定を定める条項です。
関連記事:反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)とは?契約書に定めるべき理由と条項について解説
契約前に実施するべき反社チェック
契約書に反社条項を設けることは必須ですが、反社会的勢力の排除のためには、そもそも契約を結ばないことが大切です。
そこで、契約の前に実施するべきなのが反社チェックです。
反社チェックとは
反社チェックとは、取引先など相手が反社会的勢力ではないか、また反社会的勢力と繋がりがないかを調査することです。
取引を行うかもしれないと決まった時点で、反社チェックを行い、相手が反社会的勢力であれば契約を結ばないことが、企業を守るために1番ベストな方法でしょう。
関連記事:反社チェックは義務なのか?反社会的勢力に関わる法令やチェックの方法を解説
反社チェックの方法
反社チェックを行う方法は、新聞やインターネットなどの公知情報を調査する方法、警察や暴追センターに相談する方法、反社チェックツールを導入する方法、専門の調査機関に依頼するなどの方法があります。
それぞれのやり方によって、自社での作業負担量、反社チェックの精度、費用にも違いがあります。
自社の反社チェックフローに合った方法や、相手のリスクレベルに合わせて方法を選択すると良いでしょう。
関連記事:反社チェックを行うべき対象とは?チェックが必要な理由と実施方法を解説
反社チェックツールを導入するメリット
いくつかある反社チェックの方法の中でもおすすめなのが、反社チェックツールの導入です。
反社チェックツールは、新聞やwebの情報を、反社チェックに必要な記事だけに絞って検索することができます。
また、情報の保存や取引先の管理などが行えるツールもあり、人的作業でインターネットなどを使って反社チェックを行うよりも大幅に負担が減り、人的なミスの予防にもつながります。
専門の調査機関に依頼するよりは精度は落ちてしまいますが、調査機関への依頼は高額な費用が発生してしまうため、一定の精度とコストのバランスという観点から、反社チェックツールの導入が進んでいます。
まとめ
反社会的勢力を排除するため、契約書には反社条項を定める必要があります。
相手が反社会的勢力だと判明した場合でも、反社条項があることで契約の解除や賠償の請求をスムーズに行いやすくなります。
反社条項の設置は、政府からの指針や都道府県からの暴排条例に従うことだけでなく、ステークホルダーからの信頼を得ること、企業を守ることにもつながります。
暴追センターが公表しているテンプレートやモデル条項などもあるので、契約書を作成する際には参考にするとよいでしょう。
また、契約を開始する前には反社チェックを行い、反社会的勢力と契約を結ばないということが重要です。
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