バックグラウンドチェックが違法になるケースはある?実施する際の注意点も解説
採用選考を行う上で、バックグラウンドチェックを行う企業は日本でも少しずつ増えてきています。
その背景として、中途採用の増加により、採用選考で優秀な人材を見極めることが企業の成長にも直結するという、雇用形態の変遷が挙げられます。
今回の記事では、バックグラウンドチェックが違法になるケースはあるのかどうかに着目し、実施する際の注意点についても解説していきます。
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目次[非表示]
- 1.バックグラウンドチェックとは
- 1.1.バックグラウンドチェックの目的
- 1.2.バックグラウンドチェックの調査項目
- 1.2.1.学歴・職歴
- 1.2.2.登記情報
- 1.2.3.インターネット・SNS調査
- 1.2.4.リファレンスチェック
- 1.2.5.反社チェック
- 1.2.6.民事訴訟歴・破産歴
- 2.バックグラウンドチェックが違法になるケース
- 2.1.採用候補者の同意なく実施する
- 2.2.採用選考と関係のない情報まで調査する
- 2.3.調査結果をもとに内定を取り消す
- 3.バックグラウンドチェックを実施する際の注意点
- 3.1.採用候補者に同意を取る
- 3.2.内定を出す前に実施する
- 3.3.採用に関係する情報だけ取得する
- 3.4.調査会社の選定に注意する
- 4.バックグラウンドチェックは拒否できる?
- 5.最低限、反社チェックは実施するのがよい
- 5.1.反社チェックとは
- 5.2.反社チェックの実施方法
- 6.まとめ
バックグラウンドチェックとは
バックグラウンドチェックとは、採用調査の一種で、採用候補者の経歴に虚偽はないか、また人物背景などを調べる調査のことです。
日本ではあまり浸透していないですが、海外では広く行われており、アメリカでは約95%の企業で何らかのチェックを行っています。
日本でも外資系企業での導入は進んでおり、それ以外の企業でも徐々に導入されるケースが増えています。
バックグラウンドチェックの目的
企業が人材を採用するには様々なコストが発生します。
採用後も研修や指導など、多くの手間と時間が必要です。
そのため、採用選考段階で企業に貢献してくれる人物なのか、採用選考時に見極めることが大切です。
バックグラウンドチェックを実施する最大の目的は、採用後のリスクを避け、企業にあった人材を確保することです。
実際に、バックグラウンドチェックを実施すると、学歴や職歴などの詐称や、休職情報を隠しているケースなども少なくありません。
バックグラウンドチェックを実施することで採用候補者について多角的な情報を入手し、それによって企業にフィットする人材を採用することが可能となります。
関連記事:バックグラウンドチェックと在籍確認が必要な理由を詳しく解説
バックグラウンドチェックの調査項目
バックグラウンドチェックの調査項目は、主に以下の6つです。
学歴・職歴
学歴は卒業証明書や資格の証明書を提出してもらい確認をします。
職歴は源泉徴収票での確認や、前職の企業へ問い合わせをすることもあります。
登記情報
登記簿情報は法務局で公開されており、本人所有の不動産が差し押さえられていた場合は確認することができます。
インターネット・SNS調査
インターネットやSNSを調査し、過去にトラブルなどがないかを確認します。
特にSNSでは不適切な投稿などがないかを確認することで、採用候補者の性格や交友関係などからリスクが判明することがあります。
リファレンスチェック
前職・現職の上司や同僚に、勤務態度や実績などについて確認する方法です。
これは、採用候補者本人ではなく、第三者目線の意見を得ることが目的です。
誰に依頼をするかは、採用候補者が選ぶことができます。
反社チェック
反社チェックは、採用候補者が反社会的勢力と関わりがないかを確認する項目です。
反社会的勢力と関わりを持つ人物が企業に入り込んでしまうと、様々なリスクが発生する可能性があるため、反社チェックは欠かせない項目です。
民事訴訟歴・破産歴
訴訟歴は一般公開されている最高裁判所のデータであれば確認するこができます。
ただし最高裁判所以外の判決記録などを調べるのは、公開情報がないため難しい場合があります。
そのため新聞やニュースなどメディアの情報や、調査会社独自のデータベースをもとに調査することがあります。
破産歴は、自己破産情報が官報に載っているかどうかを確認します。
関連記事:バックグラウンドチェックはどこまで調査が必要なのか? 採用ターゲット層に合わせた調査とは
バックグラウンドチェックが違法になるケース
バックグラウンドチェックを実施すること自体が違法となるような法律はありません。
ただし実施方法によっては、違法と判断されるケースがあります。3つのケースを紹介します。
採用候補者の同意なく実施する
バックグラウンドチェックを実施する際は、採用候補者の同意が必要です。
実施すること自体が、採用候補者にとってネガティブな印象を与える可能性はあり、同意を得ることができない場合もあります。
同意が得られなかった場合は、調査の実施を控えましょう。
採用選考と関係のない情報まで調査する
採用選考と関係のない情報の調査は、個人情報保護の観点から違法とされています。
例えば、国籍や信条、病歴、犯罪歴などが当てはまります。
業務に影響するため情報が必要なケースなどは、慎重に調査しましょう。
調査結果をもとに内定を取り消す
バックグラウンドチェックの調査結果が出る前に内定を出してしまった場合、調査結果によって内定を取り消すことは違法です。
内定を取り消すには解雇相当の理由が必要で、学歴・職歴の詐称、反社関係者だったなどの理由があれば内定取り消しは可能です。
ただし、基本的にはバックグラウンドチェックの結果による内定取り消しは難しいと思っておいた方が良いです。
関連記事:バックグラウンドチェック後に内定取り消しはできるか?様々なケースごとに解説
バックグラウンドチェックを実施する際の注意点
前述のとおり、バックグラウンドチェックは違法になるケースがあるため、実施する際は注意が必要です。
バックグラウンドチェックを実施する際の注意点を4つ解説します。
採用候補者に同意を取る
バックグラウンドチェックを実施する際は、必ず事前に採用候補者から同意を得ましょう。
無断での調査は違法になりますが、例えばSNSで前職の状況を確認する行為や、候補者のアカウント情報を無断で閲覧する行為は、プライバシーの侵害や個人情報保護法に抵触する可能性があります。
内定を出す前に実施する
内定を出す=労働契約を結ぶということになり、内定の取り消しには解雇相当の理由が必要です。
労働契約法16条では以下のように定められています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
参考:労働契約法第十六条
せっかくバックグラウンドチェックを実施しても、結果を選考に反映できなくては意味がないので、必ず内定前に実施するようにしましょう。
採用に関係する情報だけ取得する
病歴や犯罪歴などの「要配慮個人情報」や、信仰や本籍地など「職業安定法で収集が制限されている情報」を違法に調査しないよう、注意が必要です。
調査会社に依頼する場合でも、委託管理責任がありますので、調査会社と必ず取り決めをする必要があります。
調査会社の選定に注意する
調査会社に調査を依頼する場合、個人情報保護法上、依頼をした企業側に調査会社を管理する責任が発生します。
近年はプライバシー意識が高まっており、プライバシー侵害にあたる可能性のある情報は調査しない企業が増えてきています。
調査会社を活用する際は、プライバシー侵害や違法に当たらないよう、コンプライアンスを徹底した会社を選ぶことが重要です。
関連記事:個人情報保護法に基づくバックグラウンドチェックの必要性と合法性について
バックグラウンドチェックは拒否できる?
簡潔に回答すると、バックグラウンドチェックは拒否できます。
バックグラウンドチェックを実施するのに同意が必要な以上、候補者側はそれを拒否する権利を持っています。
もし経歴の詐称があるなどの理由で拒否している場合、それによって選考を辞退されるのはむしろ望ましいことですが、問題のない優秀な候補者が、バックグラウンドチェックの実施によって辞退するのは回避したいことです。
バックグラウンドチェックによって、候補者から選考を辞退されるのを避けるために、適切なタイミングでチェックを行い、内容と実施する理由をしっかりと説明したうえで、候補者に負担をかけない方法で実施するとよいでしょう。
関連記事:バックグラウンドチェックは拒否できる?企業側の対策方法も解説
最低限、反社チェックは実施するのがよい
バックグラウンドチェックに対してネガティブなイメージがある人も少なくありません。
バックグラウンドチェックを実施しない場合でも、最低限反社チェックを実施することを推奨します。
反社チェックとは
反社チェックとは、対象者が反社会的勢力と関わりがないかを調査することで、採用選考時だけでなく、取引を行う際の取引先や、自社の社員、株主に対しても実施されるものです。
バックグラウンドチェックとは違って身元調査ではないため、学歴や職歴などについては調査項目ではないですが、反社チェックを実施することで犯罪歴や訴訟歴、逮捕歴などが発見される可能性もあります。
関連記事:反社チェックは義務なのか?反社会的勢力に関わる法令やチェックの方法を解説
反社チェックの実施方法
反社チェックの主な方法は以下の4つです。
- インターネット・新聞などの公知情報をチェック
- 警察・暴追センターに相談する
- 専門の調査機関に依頼する
- 反社チェックツールを導入する
インターネットや新聞での調査は、無料で行う方法から、有料のデータベースを利用する方法もあります。
比較的コストを抑えられますが、情報量が多く、必要な情報を選別するのに手間と時間がかかります。
警察や暴追センターに相談する際は、名前やもとになる情報が最低限必要になるので、調べたうえで相談するとよいでしょう。
専門の調査機関に依頼する場合、反社チェックの精度は高めることができますが、高額な費用が掛かってしまうため、全対象者への実施は現実的ではなく、どうしても詳細の調査が必要な際に利用するとよいでしょう。
反社チェックツールは、新聞やWEBニュースをデータソースにしているため情報源は信用性があり情報量も多いですが、反社チェックに特化しているため、必要な情報のみを絞り込んで検索することができます。
また、データの保存や一括検索など効率よく調査する機能も備え付けられているため、精度の高い調査が効率よく行えます。
それぞれに長短があるので、自社にあった方法を検討してみてください。
関連記事:反社チェックはどこまで行うべきか 実施対象・方法を解説
まとめ
バックグラウンドチェックは企業のリスクを回避するために必要なものですが、違法になるケースもあるため、事前に理解し、注意して実施することが求められます。
また、バックグラウンドチェックはネガティブな印象から候補者の辞退につながることもあります。
懸念がありバックグラウンドチェックを実施しない場合、最低限、反社チェックを実施するようにしましょう。
関連記事:バックグラウンドチェックとは?リファレンスチェックとの違いも解説
関連記事:反社チェックに日経テレコンは活用できるのか?メリット・デメリットを解説