採用時に反社チェックが欠かせない理由とは?企業側のリスクと注意点も解説
採用を行う際、バックグラウンドチェックやリファレンスチェックを実施することがありますが、それらと同時に必ず実施すべきなのが反社チェックです。
反社会的勢力排除の動きは年々強まっており、企業に対しても反社会的勢力排除のための取り組みが求められていることから、反社チェックは欠かせないものとなっています。
この記事では、採用時に反社チェックが欠かせない理由と、反社チェックを実施しなかった場合のリスクや注意点についても解説します。
【参考】より深く知るための『オススメ』コラム
注意すべき相手をすぐに発見できる反社リストを検索
目次[非表示]
- 1.採用時に欠かせない反社チェックとは
- 1.1.反社会的勢力の定義
- 1.2.採用時の反社チェックの対象となる採用候補者
- 2.採用時に反社チェックが欠かせない理由
- 2.1.政府指針に従うため
- 2.2.暴力団排除条例が制定されているため
- 2.3.上場廃止・上場できないリスクを防ぐため
- 2.4.取引先や銀行からの取引中止のリスクを防ぐため
- 3.反社会的勢力に関係する人物を採用した際の4つのリスク
- 3.1.自社が反社チェックに引っかかる可能性がある
- 3.2.行政からの規制や処分の対象になる
- 3.3.不当要求や情報流出
- 3.4.企業の信用が低下する
- 4.採用時の反社チェックを行う際の注意点
- 4.1.反社チェックは内定前に実施する
- 4.2.個人情報の取り扱いに注意する
- 5.反社チェックの方法に反社チェックツールが選ばれる理由
- 5.1.反社チェックツールとは
- 5.2.反社チェックツールの特長
- 6.まとめ
▶とりあえずダウンロード!【独自で収集した反社リストについてもっと知る】
採用時に欠かせない反社チェックとは
反社チェックとは、チェック対象者が「反社会的勢力でないか」「反社会的勢力と関与がないか」を調査することです。
反社チェックを実施することで、犯罪や不祥事などの新聞記事・ニュース記事などを発見できることもあるため、採用調査として非常に有効です。
反社チェックは採用候補者以外にも、自社の社員が役員就任する際や、取引先、株主を対象にも実施することが多いです。
反社会的勢力の定義
反社会的勢力と聞くと「暴力団」のイメージが強いですが、反社会的勢力はもう少し幅広く定義づけられています。
法務省から2007年に出された指針では、反社会的勢力は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されており、「暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ」などの属性要件と「暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求」といった行為要件にも着目するとされています。
関連記事:反社会的勢力とはなにか?定義や調べ方など具体的な対策を解説
採用時の反社チェックの対象となる採用候補者
採用時には行うべき反社チェックですが、一部の採用候補者だけでなく全ての採用候補者に行うことを推奨しています。
具体的に解説します。
新卒採用者
新卒の採用者の場合は若い世代のため、反社チェックは必要ないと考える方もいるかもしれません。
しかし、最近では闇バイトや違法薬物などに関与する若者が増加したことから、若い世代が反社会的勢力と繋がりがあるケースが存在します。
新卒採用者に対しても、反社チェックは必ず実施しましょう。
中途採用者
雇用形態が変化したことで中途採用が増えていますが、中途採用者への反社チェックも必須となっています。
中途採用者の場合、職歴や前職の企業調査を行うことが多いですが、それだけでは反社会的勢力との関与まで確認することができません。
反社チェックを実施し、自社に反社会的勢力に関係する人物を関与させないことが大切です。
パート・アルバイト
反社チェックは、パート・アルバイトなどの非正規雇用の従業員に対しても行う必要があります。
パート・アルバイトの従業員が反社会的勢力だった場合でも、周りの従業員や企業に危害が及ぶ可能性があるほか、反社会的勢力に関与する人物を雇用していると世間に露見した場合、企業側にも問題があるとされるリスクがあります。
雇用形態に関わらず反社チェックを実施するようにしましょう。
関連記事:反社会的勢力の実名リストはある?指定暴力団や関係企業の確認方法
採用時に反社チェックが欠かせない理由
採用時に反社チェックを行うべき理由は、主に以下の4つです。
- 政府指針に従うため
- 暴力団排除条例が制定されているため
- 上場廃止・上場できないリスクを防ぐため
- 取引先や銀行からの取引中止のリスクを防ぐため
政府指針に従うため
前述の政府から出された「企業が反社会的勢力からの被害を防止するための指針」では、反社会的勢力への「一切の関係遮断」や「資金提供の禁止」が基本原則として定められており、企業には、この指針に基づいて反社会的勢力排除に向けた取り組みを進めることが求められています。
暴力団排除条例が制定されているため
暴力団排除条例は各都道府県で制定されており、それぞれ内容に多少の違いはありますが、「暴力・詐欺・脅迫」などの犯罪行為を徹底排除することを目的としています。
東京都の暴排条例では、反社チェックを行うことが努力義務とされており、違反があった場合には行政処分や、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という罰則も設けられています。
関連記事:反社チェックは義務なのか?反社会的勢力に関わる法令やチェックの方法を解説
上場廃止・上場できないリスクを防ぐため
新規上場の際は、反社会的勢力と関与がないかどうか、日本取引所グループの「反社会的勢力排除に向けた上場制度及びその他上場制度の整備について」の規定に基づいて審査が行われます。
上場申請時の提出書類の中に「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」が含まれているため、上場前の準備として反社チェックは必須となります。
また、既に上場している企業の場合でも、反社会的勢力との関係が認められた場合、上場廃止になる恐れがあるため、新たに従業員を採用する際は必ず反社チェックを行う必要があります。
参考:日本取引所グループ「反社会的勢力排除に向けた上場制度及びその他上場制度の整備について」
取引先や銀行からの取引中止のリスクを防ぐため
反社会的勢力との関わりが発覚した場合、取引先や銀行などの金融機関との取引が中止になるリスクがあります。
取引の中止は企業にとって大きなダメージとなり、企業の存続にも影響が出てきてしまうため、反社チェックを行い、反社会的勢力と関係を持たないことが重要です。
関連記事:反社会的勢力に対応するためのガイドライン 反社チェックの基準とは?
反社会的勢力に関係する人物を採用した際の4つのリスク
反社会的勢力に関係する人物を採用してしまった場合、企業は重大なリスクを抱えることになってしまいます。
採用者が反社会的勢力に関係する人物だった場合のリスクを4つ解説します。
自社が反社チェックに引っかかる可能性がある
取引を行う際、相手企業を反社チェックして問題がなければ取引を行うという企業がほとんどですが、反社会的勢力に関係する人物を採用してしまった場合、自社が反社チェックに引っかかってしまう可能性があります。
また、既存取引先の反社チェックに引っかかってしまった場合、暴排条項に抵触してしまうため、取引中止だけでなく損害賠償を請求される可能性もあります。
行政からの規制や処分の対象になる
自社の従業員が反社会的勢力と関係すると判明した場合、そのこと自体が法令違反になる可能性があります。
許認可の取消しや営業停止処分が課されたり、入札ができなくなったりする恐れがあり、営業の存続が難しくなってしまうケースもあります。
不当要求や情報流出
反社会的勢力に関係する人物が自社に入り込むことで、内部の人間が情報を流出させるなどの不正行為を行う可能性があります。
また、「内部情報を流出させる」などの脅迫によって不当要求が行われることもあり、企業だけでなく従業員にも危険が及ぶ恐れがあります。
企業の信用が低下する
営業に直接影響するような処分がなくとも、公表や報道によって反社会的勢力との関係が世間に知られた場合、企業の信用は失墜してしまいます。
信用の低下は、顧客や株主離れの原因となり、売上の低下にも繋がる大きなリスクです。
関連記事:反社チェックを行うべき対象とは?チェックが必要な理由と実施方法を解説
採用時の反社チェックを行う際の注意点
採用時の反社チェックを行う際の注意点が2つあります。順番に解説します。
反社チェックは内定前に実施する
反社チェックを実施するタイミングですが、必ず内定前に実施するようにしましょう。
1度内定を出してしまうと、内定の取消しをするのは解雇に相当する理由が必要です。
反社会的勢力との関係がある場合は、解雇に相当する理由に当てはまるケースもありますが、候補者側から不当な要求や損害賠償の請求をされるリスクがあるため、内定前に反社チェックを行うことが重要になります。
個人情報の取り扱いに注意する
個人情報保護法の観点から、個人情報の中には収集してはいけない情報があるため注意が必要です。
厚生労働省の指針では、「人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項・思想及び信条・労働組合への加入状況」は収集してはいけない項目とされています。
個人情報の取り扱いは法的な問題から、専門的な知識や経験がないと法令違反になってしまう恐れがあります。
不安な場合は専門の調査会社に調査依頼をするとよいでしょう。
関連記事:反社チェックに関するルールはある?チェックのタイミングや社内の対応手順も解説
反社チェックの方法に反社チェックツールが選ばれる理由
反社チェックを実施する方法として、インターネットや新聞などの公知情報を調査する方法、専門の調査会社に依頼する方法などがありますが、その中でも導入が進んでいるのが反社チェックツールです。
公知情報の調査は低コストで実施することができますが、膨大な量の情報からネガティブな情報を選別するには、かなりの時間と工数がかかってしまい、人的な作業が増えるためミスも起きやすく、反社チェックの精度が低くなってしまいがちです。
反対に、調査会社での調査は専門のノウハウで調査してもらえるため、高い精度の調査結果が得られますが、1件あたりの費用が高額なため、すべての採用候補者に対して実施するのは現実的ではありません。
そこで選ばれるのが反社チェックツールです。
反社チェックツールとは
反社チェックツールとは、名前の通り反社チェックに特化しているツールで、反社会的勢力に関連する事件や逮捕情報、不正・不祥事など反社チェックに必要な情報を絞り込んで検索を行えるツールのことです。
ツールによって調査媒体は異なりますが、WEBニュースや新聞、海外情報など幅広いデータソースを使用しているツールを利用すれば、情報の信頼度も高まり、絞込みによって人的工数も減らすことができるため、精度の高い反社チェックを行うことができます。
反社チェックツールの特長
ツールによって搭載されている機能が異なりますが、反社チェックを行う際に便利な特長をいくつか紹介します。
1つ目はネガティブワードを設定できるという、情報の絞込みに有効な機能があることです。
「暴力団・ヤクザ・反社・逮捕・検挙・不正・罰・処分」などのキーワードを設定することで、反社チェックに必要な情報を絞り込み検索することができます。
ネガティブワードはデフォルトで推奨ワードが設定されているツールもあるため、1から設定するという手間も省くことができます。
2つ目は、チェック履歴の保存機能の搭載です。
反社チェックを実施した際に出てきたニュース記事などは、時間が経てば削除されてしまう可能性があります。
検索をした際にツール上に記録を残しておくことで、どういった記事だったのか後で見返す際や、社内での情報共有時にも使用することができます。
その他にも、取引先の一括検索や、定期チェックを自動で行える年次スクリーニング機能など、効率よく、漏れのない反社チェックを行うための様々な機能が備わっています。
ただし、搭載されている機能や、データソースとしている媒体はそれぞれのツールによって異なるため、導入前に確認するとよいでしょう。
関連記事:反社チェックを行うべき頻度は?定期的なチェックが大切な理由
まとめ
採用を行う際は、新規採用・中途採用、パート・アルバイトなどの雇用形態に関わらず、すべての採用候補者に対して反社チェックを行いましょう。
自社に反社会的勢力に関係する人物が入り込んでしまうと、様々なリスクが生じ、企業の存続にも影響が出てしまう恐れがあるため注意が必要です。
関連記事:反社チェックを行うタイミングとは?チェック方法も解説
関連記事:反社会的勢力に該当する人物の家族・親族との取引や雇用は可能なのか?