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労務コンプライアンスとは?違反事例とチェックポイントを解説

現代社会において、長時間労働やハラスメントなどの労働問題は大きな課題となっています。

労働基準法をはじめとした様々な法令が定められており、企業は法令に従って適切な労働環境を提供する必要があります。
そこで大切になるのが労務コンプライアンスです。

この記事では、労務コンプライアンスとは何なのか、また違反事例と労務コンプライアンス徹底のためのチェックポイントについても解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.労務コンプライアンスとは?
  2. 2.労務コンプライアンスを軽視するリスク
    1. 2.1.債務の増加による経営圧迫
    2. 2.2.優秀な従業員の離職
    3. 2.3.SNSへのネガティブな投稿による営業・採用活動への影響
    4. 2.4.労働基準監督署への通報
    5. 2.5.刑事罰や行政処分が科される
  3. 3.労務コンプライアンスの違反事例
    1. 3.1.長時間労働
      1. 3.1.1.36協定とは
    2. 3.2.ハラスメント
    3. 3.3.賃金の未払い
  4. 4.労務コンプライアンスのチェックポイント
    1. 4.1.就業規則
    2. 4.2.年次有給休暇取得義務
    3. 4.3.適正な労働時間の管理
    4. 4.4.健康診断の実施
    5. 4.5.労働条件の明示
    6. 4.6.障がい者、高年齢者の雇用
    7. 4.7.解雇
  5. 5.コンプライアンス徹底に有効な反社チェック(コンプライアンスチェック)
    1. 5.1.反社チェックとは
    2. 5.2.反社チェックが必要な理由
  6. 6.まとめ

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労務コンプライアンスとは?

労務コンプライアンスとは?

「コンプライアンス」はもともと「法令遵守」という意味ですが、企業に求められるコンプライアンスは法令遵守に加えて、社会的なルールや良識に従って、公正・公平に活動することなど幅広くなっています。

コンプライアンスの中でも、労働関係の法令を遵守し、適切な労務管理を実施することが「労務コンプライアンス」です。

労務コンプライアンスが重視されるようになった背景には、残業代の未払いや長時間労働、ハラスメントなどの不祥事が、様々な企業で発覚したことが挙げられます。
報道などでも労務問題が多数取り上げられたことで、「企業は労働関係の法律や社会規範に則って、従業員の健康や安全を守らなければいけない」という社会的な気運が高まりました。

労務コンプライアンスに関連する代表的な法律は以下の7つです。

  • 労働基準法
  • 労働組合法
  • 最低賃金法
  • パートタイム労働法
  • 男女雇用機会均等法
  • 育児介護休業法
  • 高齢者雇用安定法

他にも関連する法律は多数存在し、法改正が実施されることもあるため、常に意識しておく必要があります。

また、これらの法律を守って企業活動を行うために、企業は「就業規則」を設定する必要があります。
就業規則には、労働条件や賃金、休日をはじめとした様々な社内の決まり事を明記しますが、必ず全ての法律を遵守した内容にしなければいけません。

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労務コンプライアンスを軽視するリスク

労務コンプライアンスを軽視するリスク

労務コンプライアンスは企業活動において非常に重要です。
労務コンプライアンスを軽視することで生じるリスクを5つ解説します。

債務の増加による経営圧迫

労務コンプライアンスを軽視して残業代の未払いや、割増賃金の未払いが発覚した場合、企業は未払い分を支払う必要があります。
賃金の未払いが常態化してしまっていた場合、一人当たりの未払い賃金が100万円でも、100人いれば1億円になり企業は一気に債務を抱えることになるため、経営を圧迫してしまうでしょう。

また、ハラスメントなどの問題が発生すれば、再発防止策を立案し実行するためにも費用が掛かるうえ、訴訟に発展した場合はさらに費用が必要になります。
債務の増加は経営を圧迫するだけでなく、事業の継続にも影響することがあり、企業にとって大きなリスクと言えます。

優秀な従業員の離職

賃金や労働時間などの待遇について、労務コンプライアンスを軽視する企業は、そうでない企業に比べて退職者が多い傾向があります。

特に、常識的で法令などにも詳しい従業員は、早々に見切りをつける可能性が高くなるでしょう。
企業の生産性や売上を考慮すると、優秀な従業員の退職はかなりの痛手になります。

また、優秀な人材の離職によって業績や労働環境が悪化し、さらなる従業員の離職にも繋がってしまいます。

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SNSへのネガティブな投稿による営業・採用活動への影響

従業員や退職した元従業員によって、SNSやインターネット上に労務コンプライアンス違反の状況が書き込まれることがあります。
インターネットが発達した現代では、商品・サービスの利用や求職活動の際、企業情報を検索して口コミやSNSを確認することがほとんどです。

悪い評判やネガティブな書き込みがあれば、利用や応募を躊躇されるだけでなく、不特定多数の人に閲覧されることで企業のブランドイメージが低下し、消費者や取引先が離れてしまうことにも繋がり、損失を被るというリスクがあります。

労働基準監督署への通報

雇用される企業で労働関係の法令に違反する行為があった場合、従業員は労働基準監督署に通報することができます。

労働基準監督署は労働法違反を取り締まる厚生労働省の出先機関で、通報を受けると企業への立ち入り調査を実施し、法令違反が認められた場合には是正勧告を出し、企業は期限までに改善措置を講じる必要があります。
勧告に従わなかった場合、罰則の対象になるほか、書類送検されるケースもあります。

また、是正勧告の対象ではないが改善が必要だと判断された場合は、指導票が交付されます。
この場合も期限までに改善状況の報告が必要で、報告や改善を行わなかった場合、再調査や是正勧告の対象になることもあります。

いずれにしても企業側には大きなダメージとなることは間違いないでしょう。

刑事罰や行政処分が科される

労働基準法違反が発覚した場合、労働基準監督官の逮捕権限に基づいて、経営者や上層部が逮捕され、刑事罰を科される可能性があります。
そうなればマスメディアによって報道され、社会的な信用の低下は避けることができません。

また、業務停止や免許取り消しなどの行政処分が課されることもあり、企業活動の存続にも影響するリスクとなります。

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労務コンプライアンスの違反事例

労務コンプライアンスの違反事例

労務コンプライアンスはニュースなどでも耳にすることの多い、身近な違反事例が多数あります。
主な違反事例を3つ紹介します。

長時間労働

労働基準法に定められた、1日8時間以内・週40時間以内という基本の労働時間を超えて労働者を働かせることは、適正な残業代を支払っていたとしても認められません。

時間外勤務をさせることができる「36協定」を結んでいる場合でも、原則は月45時間・年間360時間の上限が設けられています。

近年は大手企業において、長時間労働によるうつ病が原因で従業員が自ら命を絶ち、裁判の結果、企業側に1億円の損害賠償の支払いが命じられた事例もあります。

参考:過労死の裁判事例5選

36協定とは

サブロク協定と呼ばれるもので、事前に36協定を締結し労働基準監督署に届け出をすることで、時間外労働や休日労働を命じることができるものです。

協定を締結する際には、法令の上限時間を確認し、仕事量や内容、人員数、工期などを考慮したうえで、労働者と使用者が合意をする必要があります。

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ハラスメント

近年問題になることの多いハラスメントですが、代表的なものとしてパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントがあります。
ハラスメントは個人の問題と思われがちですが、企業側が適切な対策をしていなければ、安全配慮義務違反として責任を追及されることがあります。

無理なノルマを課さないことや、ハラスメント対策の講座受講を義務付けることなど、適切な対策を講じ、社内への注意喚起を行うようにしましょう。

賃金の未払い

労務コンプライアンス違反として報道されることが多い問題の1つとして挙げられるのが「賃金の未払い」です。
賃金には、基本給や残業手当のほか、休日出勤や深夜勤務の割増賃金なども含まれます。

厚生労働省が発表した令和4年度の統計では、労働基準監督署において賃金未払いの監督指導が20,531件発生し、対象労働者は約18万人、未払金額は121億円超えという結果が出ています。
また、そのうち労働基準監督署の指導により約96%の事案で支払いが行われ、その金額の合計は79億円に上ります。

賃金の未払いを防ぐためには、労働契約書や就業規則で賃金の支払い金額や期日、支払い方法を明確にし、労働時間や残業時間を正確に管理することが重要になります。

参考:厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和4年度)」

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労務コンプライアンスのチェックポイント

労務コンプライアンスのチェックポイント

労務コンプライアンスを徹底するために注意すべきポイントを6つ解説します。

就業規則

労務コンプライアンス徹底のためには、まず、適切な就業規則を作成することが重要なポイントになります。

就業規則は、常時10人以上の従業員を雇用する企業や個人事業主に対して作成することが義務付けられており、労働基準監督署への届出が必要となっています。
雇用人数が10人未満のため作成していない場合や、法改正に適応しておらず法律を逸脱している場合などは労働基準法や労働契約法などの法令が最低基準として適用されます。

トラブルの予防や、トラブル発生時のスムーズな解決のために、労務関連の法令を正しく理解し、法令に即した就業規則を作成しておく必要があります。

また、国の助成金を申請する際、就業規則の提出が求められることが多いため、作成義務の有無に関わらず、従業員にしっかりと説明できるような就業規則を作成・周知し、法改正などに合わせてメンテナンスを行うことが重要になります。

年次有給休暇取得義務

長時間労働による過労死問題が発生し、働き方改革が進んだことから、2019年4月から、年間10日以上の有給休暇を付与される従業員に対し、最低年間5日以上の年次有給休暇を取得させることが、事業者に対して義務付けられました。

有給休暇は正社員だけでなく、パート・アルバイトの社員にも付与されるもので、この義務に違反すると1人当たり最大30万円の罰金が科せられることが法律で定められています。

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適正な労働時間の管理

労働安全衛生法が改正され、労働時間の管理はタイムカードやPCなどの使用時間を記録するなど、客観的な方法または使用者の現認で管理することが原則となりました。

注意が必要なのは、強制的に残業を抑える指示によって発生するサービス残業です。
従業員の中には、時間外労働を手帳に記録して退職時に請求する者や、相談窓口に相談に行く者もいます。

長時間労働によって精神疾患や死亡などの事故が発生し、労災補償や慰謝料の請求だけでなく、経営層の責任を追及されることもあるため、しっかりと体制を整えておくことが大切です。

健康診断の実施

労働安全衛生法により、事業者には従業員の雇用後1年以内ごとに1回、健康診断を受診させることが義務付けられています。

また、一定の有害業務に従事する従業員には6か月ごとに1回、特殊健康診断を受診させる義務があります。

中小企業などでは管理が行き届かず、健康診断を受診していないケースや、未受診をそのまま放置しているケースも見られますが、そういった場合には50万円以下の罰金が科せられることが法律で定められています。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」

労働条件の明示

従業員を雇用する際には、使用者は労働条件を明示することが必須となります。
労働条件とは、労働契約の期間、仕事をする場所、始業・終業時刻、賃金などのことです。

原則として書面による交付が求められますが、従業員の希望があれば電子メールやSNS、FAXなどでの明示も可能です。

口頭での明示は、トラブルに繋がる可能性があるため、労働基準関係法令で定められた上記の方法で行いましょう。

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障がい者、高年齢者の雇用

2024年4月に「障害者雇用促進法」の一部が改正され、主に①障害者の法定雇用率の引き上げ、②雇用を義務付けられる対象企業の拡大、③雇用率算定対象となる障害者の拡大、④障害者雇用報奨金・助成金の見直しの4つが改正されました。

参考:厚生労働省「障害者雇用のルール」

また、雇用対策法により、年齢制限を設けた募集や採用は禁止されています。

2025年4月以降は法改正により、①定年年齢を70歳まで引き上げ、②70歳までの継続雇用制度導入、③定年制廃止のうちいずれかの実施が義務付けられています。

参考:厚生労働省「高齢者用安定法改正概要」

雇用に関する問題も、労務コンプライアンスの1つですので、法令を確認し対応していく必要があります。

解雇

不当な解雇の内容は、法律で厳密に定められています。
解雇事由や解雇予告日などについて、法令違反にならないよう注意が必要です。

参考:東京労働局「労働基準法 解雇編」

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コンプライアンス徹底に有効な反社チェック(コンプライアンスチェック)

コンプライアンス徹底に有効な反社チェック(コンプライアンスチェック)

今回の記事で労務コンプライアンスに特化して解説をしてきましたが、健全な企業活動を行うためは、様々な点でコンプライアンスを徹底する必要があります。

そこで有効になるのが反社チェックです。
詳しく解説します。

反社チェックとは

反社チェックとは、チェック対象者が「反社会的勢力ではないか」「反社会的勢力と関与がないか」を確認する作業のことです。

取引先や採用候補者、株主に対して実施されることが多く、反社チェックを行うことで、知らず知らずのうちに反社会的勢力と関与してしまうことを防ぐことができます。

また、役員就任時にも反社チェックを実施することが多く、特に入社時に反社チェックを行っていない人物の場合は必須と言えるでしょう。

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反社チェックが必要な理由

反社会的勢力と関係を持つことは重大なコンプライアンス違反となり、社会的な信用の失墜だけでなく、行政処分や罰則の対象になることもあります。

一度取引をしてしまった場合や、採用してしまった場合、取引の中止や解雇をするのは容易ではありません。
従って、事前に反社チェックを行うことが重要になります。

また、反社チェックを行うと、過去の逮捕歴や不祥事などが判明することがあります。
これにより、ハラスメントなどの問題を起こす人物を事前に特定することができるため、コンプライアンスの徹底に非常に有効です。

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まとめ

労務コンプライアンスとは、労働時間や賃金など、労働関係の法令を遵守し、適切な労務管理を実施することです。
労働関係の法令は多数存在し、法改正が行われることもあるため、しっかりと理解し、法令違反にならないよう注意が必要です。 

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RISK EYES編集部
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反社チェックツール「RISK EYES」のブログ編集部です。反社関連の情報だけでなく、与信やコンプライアンス全般、IPO準備などについても執筆しています。
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