トライアル雇用とは?雇用の流れやメリット・デメリットを解説
2003年に厚生労働省とハローワークが主体となり、トライアル雇用助成金制度がスタートしたことで、「トライアル雇用」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
この記事では、トライアル雇用とは何か、申請の流れやメリット・デメリットについて解説します。
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目次[非表示]
- 1.トライアル雇用とは
- 1.1.試用期間との違いは?
- 2.トライアル雇用の流れ
- 2.1.求人の申込み
- 2.2.面接
- 2.3.トライアル雇用開始
- 2.4.トライアル雇用実施計画書の提出
- 2.5.無期雇用契約の締結
- 2.6.トライアル雇用助成金の支給申請
- 3.トライアル雇用のメリット・デメリット
- 3.1.トライアル雇用のメリット
- 3.1.1.採用のミスマッチが防げる
- 3.1.2.採用コストが削減できる
- 3.1.3.助成金がもらえる
- 3.1.4.スムーズに採用ができる
- 3.1.5.契約解除が容易にできる
- 3.2.トライアル雇用のデメリット
- 3.2.1.教育に時間がかかる
- 3.2.2.教育体制の構築が必要
- 3.2.3.即戦力の採用には向いていない
- 3.2.4.申請手続きが必要
- 3.2.5.助成金受給のスケジュール管理が必要
- 4.トライアル雇用を実施する際の注意点
- 5.トライアル雇用でも必要な反社チェック
- 5.1.反社チェックでわかること
- 6.まとめ
トライアル雇用とは
トライアル雇用とは、一定期間を設けてお試しで雇用をしてみるという、国による就職困難者のための支援制度です。
この制度は全ての事業所や求職者が対象となるわけではなく、一定の要件を満たした人が対象となります。
いくつかの要件がありますが、基本的には就業経験が少ない35歳未満の人や、育児・介護・病気などによって長期のブランクがある人、障害者などが対象とされています。
期間は原則3か月間とされており、適性や能力を判断したうえで本採用するかどうかを決定します。
また、トライアル雇用を行った場合、雇用する対象者によって助成金を受給できます。
トライアル雇用は2種類あり、一般トライアルコースのほか、障害者向けのトライアルコースも設けられており、雇用する対象者によって受給できる助成金の金額が異なります。
試用期間との違いは?
トライアル雇用と試用期間の違いは、主に以下の3点です。
- 期間
- 助成金の有無
- 雇用継続義務
トライアル雇用は原則3か月と定められているのに対し、試用期間は企業が自由に設定できます。
試用期間は一般的には1~6か月ですが、企業によっては1年間の期間を設けるケースもあります。
また、トライアル雇用は厚生労働省が管理している制度のため、条件を満たせば助成金を受給できます。
これに対して試用期間は、企業が本採用の可否を決定するための仕組みであり、助成金は支給されません。
トライアル雇用では、原則3か月の雇用期間終了後に、労働者の勤務実績や能力から雇用継続するかどうかを判断する必要がありますが、本採用する義務はなく、雇用を打ち切ることも可能です。
雇用を継続しないと判断した場合は、解雇の手続きを行わずとも解雇と同様の効果が生じます。
一方試用期間は、無期雇用を前提に能力や適性を判断するための期間であり、試用期間終了後に雇用を終了する場合は「解雇」にあたり、正当な理由が必要となります。
このように、トライアル雇用と試用期間は似ているようで大きな違いがあります。
関連記事:雇用形態とは?保険の適用範囲や管理のポイントを解説
トライアル雇用の流れ
トライアル雇用を行い、助成金を受け取るまでの手続きの流れを解説します。
求人の申込み
トライアル雇用ではまず、ハローワークや職業紹介事業者、地方陸運局に対して求人の申し込みを行わなければいけません。
これらを通さず採用してしまうと、トライアル雇用とすることはできません。
面接
ハローワークから紹介された求職者の面接を行い、採用するかどうかの判断をします。
トライアル雇用開始
トライアル雇用での採用が決定したら、有期雇用契約を締結し、雇用を開始します。
条件を満たす採用者に対しては、雇用保険や健康保険、厚生年金の加入手続きが必要となります。
トライアル雇用実施計画書の提出
トライアル雇用が開始したら、2週間以内にハローワークまたは労働局にトライアル雇用実施計画書を提出する必要があります。
この内容については、企業と求職者双方の合意が必要です。
無期雇用契約の締結
トライアル雇用の結果から、本採用するかを判断します。
本採用とする場合、改めて無期雇用契約を締結しましょう。
トライアル雇用助成金の支給申請
トライアル雇用が終了した翌日から2か月以内に、「トライアル雇用結果報告兼助成金支給申請書」をハローワークまたは労働局に提出します。
トライアル雇用の途中で退職したり、無期雇用に移行したりした場合は申請期間が変動するため、早急な手続きが必要なケースがあり注意が必要です。
要件や必要な手順、項目が満たされているか審査された後、3か月分の助成金が一括で振り込まれます。
関連記事:従業員の反社チェックが必要な理由とは?チェックのタイミングと実施すべきサインも解説
トライアル雇用のメリット・デメリット
トライアル雇用は企業にとっても、求職者にとってもさまざまなメリットがあります。
ただし、同時に発生するデメリットもあります。
それぞれ解説します。
トライアル雇用のメリット
トライアル雇用のメリットを5つ紹介します。
採用のミスマッチが防げる
通常採用をする場合、書類を確認し面接をして採用するかを決定する必要があります。
トライアル雇用を行えば、実際の業務を通して求職者の適性や能力、人柄を3か月かけて見極めることができます。
通常の採用の場合、採用後にミスマッチがあるケースが少なくないほか、未経験で高い能力を持っている人物をふるいにかけてしまっている可能性もあります。
採用コストが削減できる
トライアル雇用では、ハローワークから人材の紹介を受けるため、募集広告費などがかかりません。
人件費などのコストも低減することができ、通常の採用活動より低コストで、適材適所な人材を見つけることができます。
助成金がもらえる
前述の通り、トライアル雇用を行うと国からの助成金を受け取ることができます。
一般的な採用活動にかかる人件費は企業負担ですが、費用の一部を国に負担してもらえるため、コストを削減しつつ採用活動が可能になります。
スムーズに採用ができる
トライアル雇用では、企業が求める人材像に合った求職者をハローワークが紹介してくれるので、書類選考を行う必要がありません。
通常の採用プロセスの場合、書類選考に1~2週間かかるのが一般的ですが、場合によっては約1か月時間がかかるケースもあります。
企業と求職者の双方にとって負担となるため、面接だけで採用可否の判断ができるのは大きなメリットです。
契約解除が容易にできる
トライアル雇用では雇用継続義務がないため、期間満了後は企業の意向で契約を解除することができます。
採用におけるミスマッチを事前に発見することで、早期離職の防止にもつながります。
関連記事:契約書に反社会的勢力排除条項(反社条項)が必要な理由は?具体例と例文も紹介
トライアル雇用のデメリット
トライアル雇用にはさまざまなメリットがある反面、いくつかのデメリットもあります。
5つのデメリットを解説します。
教育に時間がかかる
トライアル雇用は未経験者やブランクのある人材、障害者の採用であるため、業務を行うために必要な知識や技術を1から教える必要があります。
また、教育や指導には時間がかかることが多く、長期化しやすい傾向にあります。
教育を行うための人件費や時間などのコストが発生するのは避けられないでしょう。
教育体制の構築が必要
トライアル雇用での採用を希望する人材は職種未経験者が多く、就業そのものに不慣れである可能性もあります。
人材育成の長期化に備え、教育係の選任や教育体制の構築が必要です。
採用コストは削減できますが、教育に対してはコストがかかると考えておきましょう。
即戦力の採用には向いていない
トライアル雇用は就業困難者や業界未経験者の早期就職を目的とした制度であるため、即戦力の採用には活用できません。
上場前や事業拡大時など即戦力が必要な場合は、人材の条件を定めたうえで中途採用を実施するのが良いでしょう。
申請手続きが必要
トライアル雇用を行えば助成金がもらえるというメリットがありますが、助成金の受け取りには申請の手続きや計画書、終了報告書などの提出が必要で、複数の事務手続きが発生します。
雇い入れた労働者が増加するほど手続きは煩雑化し、採用担当や人事に負担がかかってしまいます。
雇い入れる人数についてはしっかりと検討しておくことが大切です。
助成金受給のスケジュール管理が必要
助成金の受給には計3回の書類提出が必要ですが、このうち2回は提出期限が設けられています。
提出書類と期限は手続きの流れでも解説したとおり、以下のようになっています。
①求人票⇒ハローワークに提出(期限なし)
②トライアル雇用実施計画書⇒トライアル雇用開始から2週間以内に、対象の労働者を紹介した機関へ提出
③トライアル雇用結果報告兼助成金支給申請書⇒トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内に労働局へ提出
雇用開始日・終了日によって提出期限が異なるため、採用する労働者が増えれば、その分スケジュール管理には注意が必要となります。
関連記事:反社会的勢力に該当する人物の家族・親族との取引や雇用は可能なのか?
トライアル雇用を実施する際の注意点
本採用に至るまで時間をかけて見極めることができるトライアル雇用は、企業だけでなく採用される労働者にもメリットがある制度です。
本採用の義務もなく、企業が本採用を見送っても解雇という扱いにはなりませんが、その理由については誠意をもって説明する必要があります。
以下の場合はトライアル雇用の対象外となるため注意が必要です。
- 過去6か月の間、トライアル雇用期間中に、事業主都合で解雇を実施した企業
- 不正行為などにより助成金の支給が取り消されたことがある企業
関連記事:バックグラウンドチェックで休職歴は確認できる?発覚した場合の対応についても解説
トライアル雇用でも必要な反社チェック
反社チェックは雇用する従業員や取引先、株主に対して実施するもので、対象者が「反社会的勢力ではないか」「反社会的勢力と関与がないか」を調査することです。
トライアル雇用の場合、ハローワークや職業紹介事業所からの紹介で採用に至ります。
職業安定法では、以前は、職業紹介事業者が、「全ての求人を受理する」必要があったのに対し、現在は暴力団員などによる求人は不受理とするよう改正されました。
紹介元でも反社条項の設置など、反社会的勢力排除のための取り組みは行われていますが、もし反社会的勢力に関係する人物が紛れ込んでいた場合、企業側の責任を問われる恐れがあります。
また、反社チェックを行うと、反社会的勢力に関与するかどうかだけでなく、過去の不祥事や問題行動なども確認できます。
事業所からの紹介時に提示される情報には、そのようなネガティブな情報は含まれていないことがほとんどです。
トライアル雇用の途中離脱や、本採用後の問題行動などを回避するためにも、必ず反社チェックを行いましょう。
関連記事:反社チェックに引っかかるケースとは?チェックが必要な理由と対策を解説
反社チェックでわかること
反社チェックを行う際は、新聞やWEBニュースのデータを確認する方法がほとんどです。
例えば、逮捕や起訴歴がある場合、名前が記事上に載っていればその情報を確認できます。
暴力団関係者は記事に掲載された履歴がなくても、暴追センターや反社チェックツールの独自のデータベースなどで、名前を確認できるケースがあります。
トライアル雇用を経て本採用に至るケースは約8割であり、雇用をスタートした時点で反社チェックを行っておくことが非常に重要です。
関連記事:反社チェックは義務なのか?反社会的勢力に関わる法令やチェックの方法を解説
まとめ
この記事では、トライアル雇用について解説してきました。
ハローワークなどの職業紹介事業者からの紹介で面接をし、3か月間のトライアル雇用を行うことで、採用をスムーズにし、実際の適性や勤務状況などについて、時間をかけて見極めることができます。
ただし、教育に時間がかかるほか、助成金の申請には書類の提出など事務的な手続きが必要ですので注意が必要です。
また、トライアル雇用を行う場合、通常の採用時と同じように反社チェックを実施することを推奨します。
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