風評被害によるレピュテーションリスクとは?もたらす影響と対策を解説
インターネットやSNSが発達した現代では、風評被害によって企業の評判が低下し、損失が発生するケースが存在します。
レピュテーションリスクへの対策は企業にとって重要であり、適切な対策ができていないと、企業の存続にも影響が出てしまう可能性があります。
この記事では、風評被害によるレピュテーションリスクとはどういったものなのか、またリスクがもたらす影響と対策についても解説します。
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目次[非表示]
- 1.レピュテーションリスクとは
- 1.1.レピュテーションリスクが重要視される理由
- 1.2.レピュテーションリスクが顕在化する主な原因
- 1.2.1.内部告発
- 1.2.2.従業員による不祥事
- 1.2.3.商品・サービスの質の低下
- 1.2.4.同業他社の業績悪化
- 1.2.5.根拠のない風評被害
- 2.風評被害によるレピュテーションリスクの事例
- 2.1.地方銀行の事例
- 2.2.大手石油会社の事例
- 2.3.ワクチン入りトマトの事例
- 3.風評被害によるレピュテーションリスクがもたらす影響
- 3.1.ブランドイメージの低下
- 3.2.売上・株価の低下
- 3.3.採用活動への悪影響
- 4.風評被害によるレピュテーションリスクへの対策
- 4.1.ネット情報の監視
- 4.2.企業側からの情報発信
- 4.3.レピュテーションリスクの定量化
- 5.まとめ
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レピュテーションリスクとは
レピュテーションは日本語では「評判」「世評」と訳されますが、レピュテーションリスクは企業に関する評判・評価が低下することによって損失が発生するリスクのことです。
「風評リスク」や「評判リスク」とも呼ばれており、従業員の不祥事や企業の悪い噂、商品・サービスに対する悪評などによって企業の信用が下がると同時に、売上の低下やブランドイメージの低下など様々なリスクをもたらします。
企業を守るためには、レピュテーションリスクを最小限に抑えることが重要です。
レピュテーションリスクが重要視される理由
レピュテーションリスクが重要視されるようになった最大の理由は、情報の多様化や高度化です。
SNSやインターネットが発達したことで、個人が情報発信できる場所が増えました。
発信された情報の中でも、ネガティブな情報はすぐに拡散され、インターネット上から完全に削除することが難しくなっています。
また、最近では商品・サービスの購入や企業への入社を検討する際などには、口コミやインターネット上の評判を参考にして意思決定することが一般的になっています。
インターネット社会において、レピュテーションリスクは目を背けることのできない企業リスクです。
関連記事:レピュテーションリスクの意味とは?リスクの種類と原因、回避する方法も解説
レピュテーションリスクが顕在化する主な原因
企業活動を行っていると、潜在化して気づいていない様々なリスクがあります。
レピュテーションリスクに関しても、潜在的な部分を慎重に考慮し、これらのリスクを軽減・管理するための対策を講じることは非常に重要です。
しかし、潜在的なリスクを把握するのは容易ではないため、顕在化することで対策や改善点が見つかるケースも少なくありません。
レピュテーションリスクが顕在化する主な原因を5つ解説します。
内部告発
長時間労働や不正行為、ハラスメントなどの問題がある企業の場合、従業員や元従業員の告発によってレピュテーションリスクが顕在化することがあります。
外部の監督機関や報道機関に告発するケースや、SNSに問題の内容を投稿し拡散されるというケースです。
不正行為や悪質な労働環境が発覚すれば、企業のイメージが低下するだけでなく、採用活動にも影響を及ぼします。
リスクを抑えるために、不正をしない職場風土作りや監視体制の構築、労働環境の整備を行うことが大切です。
従業員による不祥事
従業員による不祥事もレピュテーションリスクが顕在化する原因であり、社員でなくアルバイトやパート社員による不祥事の場合でも、企業側が責任を問われることがあります。
大規模な企業の場合、各現場の監視を経営陣が行うことは難しいため、全ての従業員に対してしっかりと教育を行うことが有効です。
関連記事:コンプライアンス違反の処分とは?企業・社員への処分の内容と対策方法を紹介
商品・サービスの質の低下
SNSが浸透している現代では、利用した商品・サービスの品質が悪い場合、瞬時に悪評が拡散してしまいます。
特に、他の消費者も賛同できるような内容だった場合は、共感からさらに拡散力が強くなります。
品質が低下する原因は技術力だけでなく、ミスによるものもあります。
長時間労働や良くない職場環境の場合、ミスによる品質不良が発生しやすくなります。
品質の維持・向上のためにも、職場環境の整備が必要と言えます。
同業他社の業績悪化
自社には問題がない場合でも、同業他社の業績が悪化することでレピュテーションリスクが高まるケースがあります。
経営不振に陥っている企業がある場合、業界全体がリスクを抱えていると判断されてしまうことで、自社にも影響が及んでしまうというものです。
また、同業他社で不祥事が発生した場合、同業だからという理由で他の企業にも問題があるのではないかと疑念を持たれてしまう可能性もあります。
根拠のない風評被害
個人による発信の場が増えたことで、デマや根拠のない噂が拡散されてしまうことがあります。
企業側に全く問題がないのにも関わらずレピュテーションリスクが顕在化してしまうのが風評被害の怖いところです。
今回の記事では、この風評被害によるレピュテーションリスクについて深掘りしていきます。
関連記事:レピュテーションリスクの種類とは?リスクを下げる対策も解説
風評被害によるレピュテーションリスクの事例
風評被害によって損失が発生している事例は少なくありません。
3つの事例を紹介します。
地方銀行の事例
2003年に発生した、地方銀行のデマメールの事件です。
ある人物が、「明日〇〇銀行が潰れるらしい」と26人の友人にメールを送りました。
その人物は人から聞いた噂を友人に知らせたのですが、そのメールが拡散され、総額約400~500億円の預貯金の引き出しや、解約が発生する事態になりました。
事態を受けて、銀行側は記者会見を開いて噂を否定、財務省からも噂を否定するコメントが緊急で出されたことで、事態は収拾しました。
デマを広めたとされる人物は書類送検されましたが、嫌疑不十分で不起訴となっています。
参考:「デマが駆け抜けたインターネット。求められるリスク対策」
大手石油会社の事例
2011年、東日本大震災によって大手石油会社の製油所で爆発事故が起き、その様子がメディアで繰り返し報道されていました。
その時に、「石油会社の爆発により有害な雨が降る」というデマのチェーンメールが首都圏を中心に広まりました。
石油会社は、「人体への影響は非常に少ない」と説明し、噂も自然に消え、事態は収束に向かいました。
参考:朝日新聞「コスモ石油が否定 「火災で有害物質降る」のメール連鎖」
ワクチン入りトマトの事例
「ワクチン入りトマトが流通する」というデマによる事例で、2021年と近年発生したものです。
当時、感染症の拡大によってワクチンに反対的な意見を持つ人も多かった中、日本を代表する複数の大手企業が、ワクチン入りのトマトを開発したという情報がネット上で拡散されました。
具体的な企業名が挙げられていたことから、企業への不買を呼び掛ける動きも発生しました。
企業側がワクチンの使用や開発への関与を否定したことから、デマだということが判明し、事態は落ち着きました。
参考:「ワクチン入りトマトが出回っている」、関与疑われたカゴメやカルビー「デマ」と否定」
関連記事:レピュテーションリスクとなりうる事例や回避方法を解説
風評被害によるレピュテーションリスクがもたらす影響
風評被害によって、不意にレピュテーションリスクが顕在化することがあります。
顕在化することで大きな損失が発生することもあり、どういった影響があるのかを事前に把握しておくことが重要です。
3つの影響を解説します。
ブランドイメージの低下
企業側に非がない場合でも、風評被害によってブランドイメージが低下してしまうことがあります。
一度ネット上で拡散された情報は完全に削除することが難しく、放置してしまうと長期間影響を及ぼすダメージになる可能性もあります。
また、ブランドイメージの回復には時間とコストがかかるため、大きな損失となってしまいます。
売上・株価の低下
風評被害によって企業の信頼が損なわれてしまうと、商品・サービスの購入が遠のいたり、不買運動が起きたりすることで、売上が低下する可能性があります。
また、株価が下落し、経営が悪化するケースも考えられます。
採用活動への悪影響
求職活動をする際は、インターネットの口コミやSNSの情報を参考にすることがほとんどです。
そこに企業の悪評やネガティブな情報があると、入社したくないと思うのは当然のことです。
個人による書き込みの場合、事実かどうか判断するのは難しく、事実無根のネガティブな情報によって採用活動が難しくなってしまうケースがあるため注意が必要です。
関連記事:レピュテーションリスクの使い方と例文を紹介 顕在化する原因や事例についても解説
風評被害によるレピュテーションリスクへの対策
風評被害によるレピュテーションリスクは、企業側に問題がないケースがほとんどであるため、企業が気を付けることで避けられるものではないというようにも考えられます。
そこで、根拠のない風評被害による被害を最小限にするための対策を3つ紹介します。
ネット情報の監視
風評被害の対策として、SNSやインターネットの情報を監視することが非常に有効です。
企業に関する根拠のないネガティブな情報を発見した際、運営側に対して削除依頼をすることができます。
削除してもらえない場合や悪質なケースでは、法的措置を取るとよいでしょう。
また、ネット情報を監視すれば、デマや事実でない噂だけでなく、実際に商品・サービスを使用している消費者の生の意見が確認できるため、風評被害以外の原因となるレピュテーションリスクを回避する取り組みにも活かすことができるでしょう。
企業側からの情報発信
デマや根拠のない噂が出回った際、企業側から正しい情報を発信することが非常に重要です。
噂だからと放置してしまうと、それが事実のように拡散し、企業の被害はどんどん大きくなってしまいます。
HPや公式SNSなどで、誤った情報をしっかりと否定し、誤解のないよう情報発信することが大切です。
レピュテーションリスクの定量化
レピュテーションリスクを定量化するのは難しいと言われていますが、もし風評被害が起きた場合を想定して、企業が被る損失を事前に計算しておくことが大切です。
報道情報の調査や、アンケート調査によってリスクを定量化しておくとよいでしょう。
関連記事:レピュテーションリスクは定量化できるのか?リスクの測定方法も解説
まとめ
レピュテーションリスクが高まってしまう要因は様々ありますが、企業側に問題がなくても、根拠のない風評被害によってリスクが顕在化することがあります。
ブランドイメージや売上、株価の低下、採用が難しくなるなど様々な影響が出てしまうため、しっかりと対策を行うことが重要です。
関連記事:レピュテーションリスクを回避する方法とは?リスクが顕在化した際の対処法も紹介
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