雇用形態とは?保険の適用範囲や管理のポイントを解説
企業を拡大するうえで必ず行うのが雇用です。
企業の働き方改革の推進や、ライフスタイルの多様化により、さまざまな雇用形態が生み出されています。
多様化する雇用形態への対応に追われる企業の担当者も少なくないでしょう。
この記事では、雇用形態とは何か、具体的な条件やそれぞれのメリット・デメリット、また保険の適用範囲や雇用形態を管理する際のポイントについても解説します。
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目次[非表示]
- 1.雇用形態の区分
- 1.1.正規雇用と非正規雇用
- 1.2.直接雇用と間接雇用
- 2.雇用形態の種類とそれぞれのメリット・デメリット
- 3.雇用形態による社会保険の適用範囲・条件
- 4.複数の雇用形態を管理するポイント
- 5.雇用形態に関わらず行うべき反社チェック
- 5.1.反社チェックの方法
- 6.まとめ
雇用形態の区分
雇用形態とは、企業と従業員の間で交わされる雇用契約の採用の種別で、正社員やパート・アルバイト、派遣などの種類があります。
雇用形態は、「正規雇用と非正規雇用」「直接雇用と間接雇用」の2つに区分されます。
それぞれ詳しく解説します。
正規雇用と非正規雇用
正規雇用とは、雇用期間に期限を定めない無期雇用の契約で、「正社員」のみが該当します。
正社員の場合、企業と直接雇用契約を結び、一般的にはフルタイム勤務となります。
企業の制度や、3歳未満の子供の育児を行っている場合などは、1日6時間などの短時間勤務が可能なケースがあります。
非正規雇用は、正規雇用以外のすべての雇用形態です。
契約更新ができる可能性がありますが、基本的には有期契約であることが特徴です。
非正規雇用には、契約社員やパート・アルバイト等の直接雇用の場合もあれば、派遣社員など間接雇用の場合もあります。
2023年に行われた労働調査によると、日本では、雇用者の約4割が非正規雇用者です。
直接雇用と間接雇用
直接雇用とは、企業と従業員が直接雇用契約を結ぶ雇用形態で、正社員や契約社員、パート・アルバイト社員などが該当します。
間接雇用とは、派遣元企業である人材派遣会社と労働者が雇用契約を結び、派遣先企業で勤務する雇用形態です。
非正規雇用である派遣社員のみが該当します。
正社員 |
契約・嘱託社員 |
パート・アルバイト |
派遣社員 |
正規雇用以外の
すべての雇用形態
|
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正規雇用 |
〇 |
||||
非正規雇用 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
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直接雇用 |
〇 |
〇 |
〇 |
||
間接雇用 |
〇 |
関連記事:従業員の反社チェックが必要な理由とは?チェックのタイミングと実施すべきサインも解説
雇用形態の種類とそれぞれのメリット・デメリット
雇用形態はいくつかの種類がありますが、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
順番に解説します。
正社員
正社員は長期雇用を前提とした雇用形態で、基本的には就業規則で定められた所定労働時間内をフルタイムで働くことが前提とされています。
社内教育や人材育成に一定の時間をかけることができるため、将来的な業績向上につなげることができる点が最大のメリットです。
また、安定雇用など従業員側にもメリットが大きいため、優秀な人材を採用できるという点もメリットです。
一方で、社会保険や福利厚生などのコストが発生するほか、解雇が容易ではないというデメリットがあります。
フルタイム正社員
正社員の中でメインとなる雇用形態で、就業規則の所定労働時間の上限まで勤務するのがフルタイム正社員です。
企業の中心として働く従業員で、昇進によって重要な役職に就任することもあります。
フルタイムの規定は企業によって異なりますが、労働基準法では1日8時間以内かつ週40時間以内が上限と定められています。
短時間正社員
正社員の中でも、所定労働時間が短い雇用形態が短時間正社員です。
厚生労働省では、「雇用期間の定めがない労働契約」「時間あたりの基本給や退職金の算定方法がフルタイム正社員と同じである」と定義されています。
育児や介護などでフルタイムでの勤務が難しくなった社員の離職を防ぐことができるため、新たに人材育成をする手間やコストを省くことができます。
また、働き方の幅を拡大することで、社員のモチベーションを向上させるほか、定年を過ぎた高齢者の活躍も見込めるでしょう。
関連記事:反社会的勢力に該当する人物の家族・親族との取引や雇用は可能なのか?
非正規社員
非正規社員は、労働時間はフルタイム正社員と同等もしくはそれより短く、給与や福利厚生面は正社員よりも充実していないケースがほとんどです。
非正規社員は主に以下の3種類に分けられます。
- 派遣労働者
- 契約社員・嘱託社員
- パートタイム労働者
派遣労働者
派遣労働者は、就業先と雇用主が異なる雇用形態です。
労働者は派遣会社と雇用契約を結び、派遣会社と労働者派遣契約を締結している派遣先企業で勤務します。
雇用主と就業先が異なることで発生する問題を危惧し、厚生労働省が「派遣労働者法」でさまざまなルールを定めています。
専門的なスキルを持った即戦力となる人材を、手間と時間をかけずに集めることができることが最大のメリットです。
また、各種保険や給与計算などの事務的な手続きは派遣会社が対応してくれるため、企業の負担を減らすことができます。
一方で、派遣期間が定められているため、その都度育成が必要になることがデメリットです。
契約社員・嘱託社員
契約社員は、雇用期間に定めがある雇用形態で、契約期間は3年が上限とされていることがほとんどです。
例外として、高度な専門知識を有する人や60歳以上の人は5年間が契約期間の上限とされています。
期間が満了すれば労働契約は自動で終了しますが、5年以上同じ事業主のもとで働いた場合、双方の合意によって無期限の契約社員へ転向することができます。
嘱託社員は定年後に再雇用する雇用形態で、給与や労働時間などの契約内容は企業によって異なります。
正社員と同じ内容の仕事を任せられますが、正社員に比べて人件費を抑えられるケースがあるほか、繁忙期限定など必要な期間のみでの採用が可能なため、人材調整がしやすいことがメリットです。
ただし、契約更新の拒否や無期労働契約の申し立てがあった場合、人材配置の調整が必要となるため注意が必要です。
パートタイム労働者
パートタイム労働者は雇用期間に定めがある雇用形態で、「パートタイム労働法」に従って、労働条件や昇給・賞与の有無など所定文書を明示・交付することが義務付けられています。
繁忙期や閑散期など必要に応じて人員調整ができるほか、正社員よりも時間単価が低いため、人件費を抑えるられる点がメリットです。
一方で、入れ替わりが激しく、求人や教育が頻繁に発生することが多いというデメリットがあります。
関連記事:個人事業主への反社チェック・コンプライアンスチェックを実施する必要性について解説
雇用形態による社会保険の適用範囲・条件
社会保険は、雇用保険、労災保険、健康保険・厚生年金保険の4つから構成されています。
雇用保険は、週20時間以上の勤務であれば、正規・非正規社員ともに加入の対象となります。
労災保険(労働災害保険)は、雇用形態や勤務時間に関わらず、全ての労働者が加入の対象です。
健康保険・厚生年金保険は、雇用形態や労働時間、労働日数などによって社会保険の適用範囲が異なるため、従業員がどの条件に該当するのか確認しておく必要があります。雇用形態別に解説します。
正規雇用
法人で雇用する正社員は、必ず社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入しなければなりません。
雇用している企業は、どんな理由があったとしても、正社員が社会保険に加入することを拒否できません。
非正規雇用
健康保険・厚生年金保険の適用範囲は2024年10月に再拡大され、従業員51人以上(厚生年金の被保険者数)の企業が対象となりました。
また、非正規雇用の場合、以下の条件をすべて満たす場合が保険適用となります。
- 所定労働時間が週20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
業務委託・派遣社員
業務委託の場合は、企業と雇用契約を締結しているわけではないので、社会保険は適用外です。
また、派遣社員の場合は、雇用契約を締結している派遣元企業で加入します。
関連記事:バックグラウンドチェックはどこまで調査が必要なのか?採用ターゲット層に合わせた調査とは
複数の雇用形態を管理するポイント
働き方が多様化し、雇用形態の管理は複雑になっています。
複数の雇用形態を管理する際のポイントを4つ紹介します。
雇用契約書の手配
複数の雇用形態を管理するために、雇用契約書を作成することが1つ目のポイントです。
法的には雇用契約書の作成は義務ではありません。
しかし、口頭での契約は後のトラブルに繋がりかねないため、双方が納得し、雇用契約書を交わしておくことを推奨します。
雇用形態によって労働条件に違いがあるため、雇用形態別に作成するとよいでしょう。
同一労働同一賃金
複数の雇用形態を取扱う場合、「同一労働同一賃金」の原則に配慮が必要です。
「同じ業務に従事する限り、正社員でも非正規社員でも同一の賃金を支給する」という考え方で、非正規雇用が増加していることから、待遇差をなくすために政府が推進しています。
正社員と非正規社員が同じ業務を行っている場合、基本給や賞与に差が出ないように注意しましょう。
勤怠管理の徹底
複数の雇用形態を管理する場合は、それぞれに合わせた勤怠管理の仕組みを構築しましょう。
労働安全衛生法では、従業員の労働時間を把握することを義務付けています。
従業員の長時間労働を防ぎ、健康を守るためにも、正確な勤怠管理を行うことが大切です。
スキルや能力の把握
複数の雇用形態を用いる場合、個々のスキルや能力を把握し、業務に活かすことが非常に重要です。
各従業員に合った人材配置を行い、新しいプロジェクトがあれば適任者を抜擢することで、組織としての生産性を向上させることにつながります。
関連記事:バックグラウンドチェックのやり方は?調査内容や注意点を解説
雇用形態に関わらず行うべき反社チェック
反社チェックとは、チェック対象者が「反社会的勢力でないか」「反社会的勢力と関与がないか」を調査することです。
従業員の反社チェックの導入は年々増加しており、約55%の企業が、採用前に反社チェックを行っているという調査結果もあります。
反社チェックは、正社員だけに実施すればよいと認識している方も少なくないでしょう。
しかし、派遣社員やパート・アルバイト社員など雇用形態に関わらず、雇用契約を結ぶすべての従業員に対して実施する必要があります。
反社チェックを行うと、過去に問題を起こしていないか、逮捕歴がないかなども確認することができるため、採用すべきでない人物を事前に見極めることができます。
関連記事:反社チェックの際に検索すべきキーワードとは?その他のチェック方法と注意点も紹介
反社チェックの方法
反社チェックは主に、インターネットや新聞などの公知情報を検索する方法、反社チェックツールの導入、専門機関への調査依頼などの方法があります。
それぞれのやり方によって、調査にかかる費用やチェックの精度が異なります。
企業のリスク度に合わせて、チェック方法を選択するとよいでしょう。
関連記事:反社チェックに関するルールはある?チェックのタイミングや社内の対応手順も解説
まとめ
この記事では、雇用形態について詳しく解説しました。
雇用形態によってメリット・デメリットがあり、保険の適用範囲にも違いがあります。働き方を多様化させることで、業務の生産性向上や事業の拡大につなげられることもあります。
正しく理解したうえで、管理のポイントを押さえておきましょう。
また、雇用形態の種類に関わらず、採用前には反社チェックの実施を推奨します。
雇用形態によっては、簡単に解雇ができない場合もあるため、事前に見極めることが重要です。
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