暴力団排除条例で罰則の対象になる禁止事項とは?企業が対応すべきことについて解説
暴力団排除条例の内容は、努力義務のため罰則がないと勘違いしている方も少なくないでしょう。
しかし、ケースによっては何かしらの行政措置の対象になったり、罰則が科されたりすることもあります。
この記事では、暴力団排除条例で罰則の対象となるような禁止事項が何か、また法令遵守のために企業が対応すべきことについても解説します。
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目次[非表示]
- 1.暴力団排除条例とは
- 1.1.規制対象者とは
- 2.暴力団排除条例で罰則の対象になる「利益供与の禁止」
- 3.東京都暴力団排除条例で罰則の対象になるその他の禁止事項
- 3.1.妨害行為の禁止
- 3.2.暴力団事務所の開設及び運営の禁止
- 3.3.青少年を暴力団事務所へ立ち入らせることの禁止
- 3.4.事業者の規制対象者等に対する利益供与の禁止
- 3.5.他人の名義利用の禁止
- 4.暴力団排除条例において企業が対応すべきこと
- 4.1.反社会的勢力排除条項の設置
- 4.2.契約内容の再検討
- 4.3.反社チェック体制の整備
- 5.反社会的勢力排除に必要な反社チェックとは
- 5.1.反社チェックの方法
- 6.まとめ
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暴力団排除条例とは
暴力団排除条例とは、暴力団だけでなく、広義に反社会的勢力を規制するための法令で、各地方自治体によって発令されました。
自治体の事業、住民の経済取引や事業活動から反社会的勢力を排除することについて、その基本理念やそれぞれの責務・役割などが定められています。
2007年に政府から「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」が発表されたことで、世間において反社会的勢力排除の動きが強まりました。
2010年に福岡県で暴排条例が制定されたことを皮切りに、全国へと拡大していき、2011年に東京都・沖縄県で制定されたのを最後に、全都道府県で制定が完了しました。
また、47都道府県に加え、46都道府県内の全市区町村でも条例が制定されています。
暴排条例では、規制対象者を指定暴力団以外にも広く認め、多様化・巧妙化する反社会的勢力の形態に対応しています。
関連記事:反社会的勢力に関する法律はある?各業界の対策と反社との取引を回避する方法も解説
規制対象者とは
規制対象者とは、暴力団排除条例の中で、事業者による利益供与を禁止する対象として規定されている者で、以下のような者が該当します。
- 暴力団員
- 既に暴力団を離脱しているが暴力団員と判断される者(暴力団員ではないが、中止命令等を受けた日から3年経過しない者)
- 暴力団員とは認定できないが、準構成員など極めて暴力団に近い者(暴力団との間で威力使用することの対償として利益供与することを合意している者・暴力団員の行った暴力的不法行為等の共犯などとして刑に処せられて、その執行が終わった日から5年経過しない者)
- フロント企業の役員や従業員
- 自己の事業のために暴力団の威力を利用する者
参考:東京都暴力団排除条例
暴力団排除条例で罰則の対象になる「利益供与の禁止」
各自治体において施行されている暴力団排除条例の内容は、各自治体によって異なりますが、共通する条項として「利益供与の禁止」があります。
暴排条例では、暴排条項の設置や契約締結前の反社チェックは努力義務として定められていますが、「利益供与の禁止」は努力義務ではなく、禁止事項とされています。
利益供与とは
利益供与とは、金品・その他財産上の利益または役務を与えることです。
事業者が商品・サービスを販売し、相手方がそれに見合った適正な料金を支払うケースであっても該当します。
警視庁のHPに掲載されている主なケースを紹介します。
【利益供与違反になるケース】
- ホテルが、暴力団のパーティーに使用されることを知って、ホテルの宴会場を貸し出す行為
- 内装業者が、暴力団事務所であることを認識した上で、対立抗争に備えて壁に鉄板を補強するなどの工事を行う行為
- ゴルフ場が、暴力団が主催していることを知って、ゴルフコンペ等を開催させる行為
- 飲食店が、組の運営資金になることを知りながら、暴力団員から物品を購入したり、サービスの対価としてその者に料金を支払ったりする行為
- 不動産業者が、暴力団事務所として使用されることを知った上で、不動産を売却、賃貸する行為
【利益供与違反にならないケース】
- 相手が暴力団員等の「規制対象者」であることを知らなかった場合
例:レンタカー業者が、会合のための送迎用に使用するとの説明を受けてマイクロバスを貸したところ、相手が暴力団員であることが後から判明した場合
- 提供した利益が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなること」を知らなかった場合
例:飲食店が個人的に使用すると思い暴力団員に個室を貸したところ、結果的に組織の会合として使用されてしまった場合
- 提供した利益が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなること」にならない場合
例:・コンビニエンスストアなどの小売店が、暴力団員に対して日常生活に必要な物品を販売する行為
・飲食店が、暴力団事務所にピザやそばを出前する行為
- 法令上の義務又は情を知らないでした契約にかかる債務の履行として利益供与する場合その他正当な理由がある場合
例:・暴力団事務所への電気やガスの供給や、医師による診療行為など法令に基づいて行われる行為
・弁護士が民事訴訟において暴力団員の代理人になる行為
関連記事:反社チェックに引っかかるケースとは?チェックが必要な理由と対策を解説
東京都暴力団排除条例の4種類の措置
各自治体によって、行われる措置にも違いがあります。
ここでは、東京都の暴力団排除条例における措置を解説します。
勧告
利益供与の禁止に違反した場合、まず勧告が行われる可能性があります。
勧告とは、調査によって条例に違反すると判明した場合、違反となるような関係を中止するよう書面で当事者に伝えることです。
公表
勧告を受けたにもかかわらず、1年以内に再度利益供与の禁止に違反した場合、公表される恐れがあります。
公表は、自治体の公報や警察のHPなどに、暴力団に利益を与えた事実や事業者名が掲載されます。
防止命令
利益供与の中でも、暴力的不法行為や暴力団の威力を示して行う行為を行うことなどで違反をし、公表された者が1年以内にさらに違反行為があった場合、東京都から防止命令が出されます。
罰則
防止命令に違反した場合、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処せられるという罰則があります。
関連記事:契約書に反社会的勢力排除条項(反社条項)が必要な理由は?具体例と例文も紹介
東京都暴力団排除条例で罰則の対象になるその他の禁止事項
東京都の暴力団排除条例では、利益供与の禁止以外にも禁止とされている事項があります。
それぞれの禁止事項と罰則について解説します。
妨害行為の禁止
暴力団排除活動を行う者に対して、威迫や付きまといなど、不安を覚えさせるような妨害行為を行ってはいけないという禁止事項です。
違反した場合、命令がくだされ、罰則の場合は1年以下の懲役・50万円以下の罰金となります。
暴力団事務所の開設及び運営の禁止
学校、図書館、児童福祉施設などから200m以内に暴力団事務所を開設・運営してはならないという禁止事項です。
違反した場合、1年以下の懲役・50万円以下の罰金の罰則が科されます。
青少年を暴力団事務所へ立ち入らせることの禁止
正当な理由なく、18歳未満の青少年を暴力団事務所に立ち入らせてはいけないという禁止事項です。
違反した場合には命令が下され、罰則の場合は6月以下の懲役・50万円以下の罰金となります。
関連記事:反社会的勢力と関わりのある企業一覧は存在するのか?見分け方・調べ方も解説
事業者の規制対象者等に対する利益供与の禁止
この項目には2つの禁止事項があります。
- 事業者は、暴力団の威力を利用する目的で利益を提供してはいけないという禁止事項です。
また、暴力団関係者が利益を受領することも禁止されています。
行政措置として勧告・公表・命令があり、罰則の場合は1年以下の懲役・50万円以下の罰金となります。
- 事業者は、暴力団の活動を助長する目的で利益を提供してはいけないという禁止事項です。
また、暴力団関係者が利益を受領することも禁止されています。
行政措置として勧告・公表がありますが、事業者が自主申告した場合は勧告等の適用が除外されます。
他人の名義利用の禁止
暴力団員が、自身が暴力団員であることを隠蔽する目的で他人の名義を利用してはならないという禁止事項です。
また、暴力団員であることを隠蔽するという目的を知りながら名義を利用させることも禁止とされています。
違反した場合、勧告・公表の措置がありますが、事業者が自主申告した場合は勧告等の適用が除外されます。
関連記事:事例でみる反社 企業リスクを回避するには
暴力団排除条例において企業が対応すべきこと
「反社会的勢力を排除する」という軸は一緒であるものの、具体的な内容は自治体の任意で設定されているため、大前提として、自治体の暴力団排除条例の内容を理解しておくことが大切です。
どの自治体の暴排条例に従う場合においても必要な、企業の対応を3つ解説します。
反社会的勢力排除条項の設置
反社会的勢力排除条項とは、契約書に設置すべき項目で、「自社と取引先が反社会的勢力との一切の関係を断つことを義務付け、脅迫や暴力などを使用する暴力的な要求を禁止する」ということを明文化した条項です。
反社条項の設置は、暴排条例においては努力義務とされています。
しかし、例として宮城県の暴排条例では、反社条項が規定されていない取引において暴力団と関係を持ってしまった場合、違反事例となる可能性があるとHPに明記されており、限りなく義務に近いものだと考えるべきです。
反社会的勢力と関わらないだけでなく、条例違反にならないためにも、反社条項の設置が必要と言えます。
反社条項のモデル案が警察のHPに掲載されているので、作成時は参考にするとよいでしょう。
関連記事:反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)とは?契約書に定めるべき理由と条項について解説
契約内容の再検討
相手が反社会的勢力であるという疑いが出た際、「合理的に関係を解消する」ために「解約・解除に必要な措置」をできる限り多く講じておくことが大切です。
例えば、以下のような観点から契約を見直しましょう。
- 自動継続にしない
- 長期契約にしない
- 継続的に取引する義務を負わないことを明記する
- 契約更新の際には必ず反社チェックを実施する
- 解除・解約事由をできる限り追加する
- 再委託先も管理する
反社チェック体制の整備
暴排条例の行政措置や罰則の対象にならないためには、反社会的勢力と関係を持たないことが非常に重要です。
しかし、反社会的勢力は巧妙化していることから、簡単に見分けることができなくなっているのが現状です。
そこで大切なのが反社チェックです。
取引や採用を行う際には、反社チェックを行うことを徹底し、適切なチェックができる体制を整備しましょう。
関連記事:反社チェックは義務なのか?反社会的勢力に関わる法令やチェックの方法を解説
反社会的勢力排除に必要な反社チェックとは
反社チェックとは、相手が反社会的勢力でないか、また反社会的勢力と関係がないかを調査することです。
東京都の暴力団排除条例では、契約締結前に反社チェックを行うことが努力義務とされています。
営業職の40%以上が、反社チェックの結果、取引を行わなかった経験があるという調査結果も出ており、反社チェックがいかに大切であるかということが感じられます。
関連記事:反社チェックに日経テレコンは活用できるのか?メリット・デメリットを解説
反社チェックの方法
反社チェックの方法は大きく分けると、①自社で調査するか、②専門の調査機関に依頼するかの2種類です。
自社で調査する場合、インターネットや新聞などの公知情報を調査する方法もありますが、情報量が多く、必要な情報の精査にも時間がかかってしまいます。
そこで推奨するのが反社チェックツールの導入です。
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他にも、取引先の一括検索や年次のチェックを自動で行える機能など、ツールならではの機能が搭載されており、反社チェックの効率化+精度の向上にもつながります。
まとめ
今回は、暴力団排除条例で罰則の対象になる禁止事項について解説しました。
「利益供与の禁止」だけでなく、複数の禁止事項が存在します。
具体的な内容は各自治体によって異なるため、自社が適応される自治体の暴排条例の内容を理解し、従うことが大切です。
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