コンプライアンスと法務の違いは?業務内容や部門を分けるメリット・デメリットを解説
企業活動において、コンプライアンスと法務は非常に重要です。
企業の経営活動にはさまざまなリスクが潜んでおり、コンプライアンス部門や法務部門をしっかりと構築することで、トラブルの回避や抑制につながります。
企業のコンプライアンス遵守が強く求められる現代において、コンプライアンスや法務の重要性が高まっています。
この記事では、コンプライアンスと法務の違いについて、その業務内容や部門を分けるメリット・デメリットについて解説します。
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目次[非表示]
- 1.コンプライアンスと法務の違いとそれぞれの役割
- 1.1.コンプライアンス部門の役割
- 1.2.法務部門の役割
- 2.コンプライアンス部門と法務部門の業務内容
- 2.1.コンプライアンス部門の業務内容
- 2.2.法務部門の業務内容
- 3.コンプライアンス部門と法務部門は分けるべき?
- 3.1.部門を分けるメリット
- 3.2.部門を分けるデメリット
- 4.コンプライアンス部門や法務部門に必要なスキル
- 4.1.法令に関する知識
- 4.2.コミュニケーションスキル
- 4.3.情報調査スキル
- 4.4.文書作成能力
- 5.コンプライアンス徹底に必要な反社チェック(コンプライアンスチェック)
- 6.まとめ
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コンプライアンスと法務の違いとそれぞれの役割
コンプライアンスと法務は、企業において非常に近い役割を担っており、1つの部署が両方を担当していることも少なくありません。
紛争防止や解決に取り組むという点では同じですが、担当する領域に違いがあります。
それぞれの役割について詳しく解説します。
コンプライアンス部門の役割
コンプライアンス部門は、法律だけでなく、社会規範や社内ルール、業界基準などが正しく守られているかをチェックする役割があります。
コンプライアンス違反が発生しないための体制を整備したり、日常的なオペレーションの監視をしたり、社員の研修を行うこともコンプライアンス部門の重要な役割です。
最近ではSNSの多様化やハラスメント問題の増加に伴い、世の中におけるコンプライアンスへの意識が高まっています。
新たにコンプライアンス部門を立ち上げる企業もあるなど、各業界におけるコンプライアンスの重要性も高まっているため、正しい理解と適切な対応が必要です。
関連記事:企業活動におけるコンプライアンスとは?違反を防ぐ対策についても解説
法務部門の役割
法務部門は、企業における法的な部分を管理する役割を担います。
中でも重要な業務としては、法的トラブルの予防と紛争の解決です。
例えば、訴訟や法的紛争が起きた際、法務部は企業の代表として関わる必要があります。
また事前に法的リスクを洗い出し、回避もしくは軽減させるための戦略を計画するのも重要な役割です。
ほかにも、契約書のチェックや他部門への法的な助言を行うなど、企業における法律事務所のような役割を持っています。
関連記事:反社会的勢力に関する法律はある?各業界の対策と反社との取引を回避する方法も解説
コンプライアンス部門と法務部門の業務内容
コンプライアンス部門と法務部門は役割の違いがあることから、業務内容にも違いがあります。
それぞれの業務内容を詳しく解説します。
コンプライアンス部門の業務内容
コンプライアンス部門のメインとなる業務は、「社内ルールの策定」「従業員の教育」の2つです。
従業員が法令や社会規範などを遵守するためには、何が許されて何が許されないのかということを明確化し、時代に合わせて定期的に再確認する必要があります。
社内規定や行動規範などを策定したうえで、社内での運用方法や管理体制について考えることも、コンプライアンス部門の大切な仕事です。
また、従業員の行動は企業の評価に直結します。
コンプライアンス違反を起こさないための正しい教育を行うのも、コンプライアンス部門の仕事です。
作成した社内ルールを基に、コンプライアンス研修を実施しましょう。
どういった行動が違反になるのか実例を挙げることで、より理解度が深まるでしょう。
関連記事:コンプライアンス研修の目的と内容 テーマ別事例や実施方法を解説
法務部門の業務内容
法務部門のメインとなる業務は、「組織業務」「契約・取引業務」「社内業務」「紛争対応業務」の4つです。
組織業務は、企業の運営や内部構造に関する法的事項を取扱います。
例えば、株主総会や取締役会の運営、企業の内部規則や方針などの策定です。
契約・取引業務は、企業が行う商取引に関する全般の法的事項を取扱います。
契約が適切に行われているか、契約書の内容や審査、交渉が正しく行われているかをチェックします。
社内業務は、社内の法的問題などについて対応することです。
経営陣や他部署に対して、法的なアドバイスを行うことも社内業務に含まれます。
また、法的な問題を防ぐために内部ポリシーを策定・実施することも重要な業務の1つです。
紛争対応業務は、企業が関わる可能性のある法的紛争について管理します。
リスクを特定して対策を講じることだけでなく、実際に紛争が起こった際の交渉や調停、訴訟などを通して解決策を模索します。
関連記事:契約書に反社会的勢力排除条項(反社条項)が必要な理由は?具体例と例文も紹介
コンプライアンス部門と法務部門は分けるべき?
コンプライアンス部門と法務部門は1つの部署が担っている企業もあれば、別の部署を設けている企業もあります。
分けた際のメリットとデメリットを解説します。
部門を分けるメリット
コンプライアンス部門と法務部門を分ける場合のメリットは、主に以下の3つです。
- 得意分野に専念・特化できる
- 部門ごとに知識のある人材を採用できる
- 外部から弁護士を雇うコストを削減できる
部門をはっきりと分けることで、それぞれの得意な業務領域に特化することが可能になり、業務遂行能力の向上が見込まれます。
また中途採用を行う際、各部門のニーズに合わせて求人を行うことができるため、即戦力となる人材の確保も容易になります。
さらに、法務部門に専門知識を持った人材を配置することで、日常的に発生する法務関係の事務を社内で完結することができます。
外部の弁護士を相談窓口として雇う必要のある業務を減らすことができるため、コストの削減につながります。
関連記事:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説
部門を分けるデメリット
コンプライアンス部門と法務部門を分けるデメリットは、主に以下の2つです。
- 情報共有が大変
- 領域がかぶる業務の対応が曖昧になる
部門が分かれていることで、日常で自然と情報共有される機会が減少する傾向があります。
特に、日常的にオペレーションをチェックしているコンプライアンス部門だけが把握している情報が、法務部門まで行き届かないということが起こりがちです。
その事案に法令上の問題が含まれていた場合、あとから発覚して重要な問題になる恐れがあるため、必要な連携を取れるような体制を構築しましょう。
また、一部の業務がかぶっているため、どちらの部門が対応するのか曖昧になってしまうことがあります。
そのまま放置されてしまうケースもあるため、業務の分担についてもしっかりと管理する必要があります。
関連記事:上場に成功・失敗する企業の違いとは IPO準備で気を付けるべきポイントを解説
コンプライアンス部門や法務部門に必要なスキル
コンプライアンス部門や法務部門に関わるためには、以下のようなスキルが必要になります。
それぞれ詳しく解説します。
法令に関する知識
社内規定や組織体制などは法令に従って作成する必要があるため、まず大前提として、法令に関する一定の知識が必要です。
コンプライアンスや法務に関連する主な法律は以下の通りです。
- 労働基準法/労働安全衛生法/労働契約法
- 会社法/民法/商法
- 独占禁止法
- 著作権法/商標法/特許法 など
法律はかなり幅広く存在するため、最低限、自社が属する業界や事業・商品に関する法令は理解しておく必要があります。
コミュニケーションスキル
コンプライアンスや法務部門の担当者は、社外の専門家や企業とやり取りをする機会もあるため、分かりやすくかつ正しく伝えるコミュニケーションスキルが必要です。
また、社内の相談窓口になる企業もあるため、相手の伝えたいことを的確に受け取り、法的な側面からの解決策を提案できる能力が求められます。
情報調査スキル
法令は定期的に改正されたり、新しい法令が施行されたりすることがあるため、その度に情報を収集し、社内規定などをアップデートする必要があります。
また、社会通念上のルールや考え方は時代と共に変化します。
特に現代ではSNSが発達していることから、炎上防止の対策についても、他の事例に関する情報を収集し、対応していくことが求められます。
文書作成能力
コンプライアンスや法務部門では契約書や社内での通知文書、官公庁への提出書類など書類を作成する機会が多いため、文書作成能力も必要です。
また社内の書類については、法律に関する知識のない人が読んでも理解できるような内容にする必要があります。
法令関係の難しい言葉を並べるだけでなく、分かりやすい文章を書くスキルが求められます。
関連記事:社内コンプライアンスを高める方法とは?対策や違反事例も解説
コンプライアンス徹底に必要な反社チェック(コンプライアンスチェック)
コンプライアンスを徹底するために、必ず実施してほしいのが反社チェックです。
反社チェックは、基本的には「反社会的勢力ではないか」ということをチェックすることですが、過去の不正や不祥事、問題行動なども調査できることから、コンプライアンスチェックとも呼ばれています。
反社チェックは、従業員の採用時、役員就任時のほか、取引先や株主に対して実施されます。
基本的に、採用時は人事部、その他は法務部や総務部が担当することが多いですが、最近では反社チェック専門の部署を設置している企業もあります。
政府指針や暴力団排除条例が出され、契約書への反社条項の設置だけでなく、反社チェックの実施もマストになっています。
関連記事:従業員の反社チェックが必要な理由とは?チェックのタイミングと実施すべきサインも解説
反社チェックの方法はいくつかありますが、一定の精度を保ちコストを抑えられる、反社チェックツールの導入がおすすめです。
事業が拡大すれば、反社チェックの対象となる人物・企業も増加します。
効率よく、かつ抜け漏れなく反社チェックを行うことが重要です。
まとめ
この記事では、コンプライアンス部門と法務部門の違いについて解説してきました。
一部業務内容も被っており、近い領域を担当する2つの部門ですが、特化している部分には違いがあります。
コンプライアンス部門と法務部門を分けることで、それぞれの得意分野に特化することができ、採用時にも人材を集めることが容易になります。
しかし、情報共有がおざなりになってしまったり、一部重複している業務をどちらが担うのか曖昧になったりすることがあるため注意が必要です。
また、取引前や社員の役員就任時など必要な反社チェックは、法務部門が担当することが少なくありません。
自社に合ったチェック方法を導入し、効率よく反社チェックを行える体制を構築しましょう。
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