IPO準備企業が活用すべきストックオプションとは メリット・デメリットを解説
IPO準備企業とはこれから株式を新規に証券取引所に上場させ、資金調達を目指している企業のことを指します。
資金に余裕がないことが多いIPO準備企業でも社員に対して大きな利益を与えることのできる「ストックオプション」という制度があります。
今回はIPO準備を進めている企業が活用するべきストックオプションの内容やメリットやデメリットなどについても解説していきます。
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目次[非表示]
- 1.IPO準備企業が活用すべきストックオプションとは
- 1.1.ストックオプションの仕組みとは
- 1.2.ストックオプションの導入手続きとは
- 1.3.ストックオプションを導入する注意点
- 1.3.1.上場を考えていない会社は導入することができない
- 1.3.2.企業を立ち上げた時点での設計が必要
- 2.IPO準備企業がストックオプションを活用するメリット・デメリット
- 2.1.企業側がストックオプションを活用するメリット
- 2.2.社員側がストックオプションを活用するメリット
- 2.2.1.会社に対する仕事や売り上げでの貢献が社員にとっての利益になる
- 2.2.2.ストックオプションを持つこと自体は無料
- 2.3.企業側がストックオプションを活用するデメリット
- 2.4.社員側がストックオプションを活用するデメリット
- 2.4.1.株価によっては利益が減ってしまう可能性がある
- 2.4.2.M&Aによってストックオプションを使うことができなくなる
- 2.4.3.ストックオプションには課税制度がある
- 3.IPO準備企業がストックオプション導入時に注意すべき反市場勢力とは
- 4.まとめ
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IPO準備企業が活用すべきストックオプションとは
ストックオプションとは、事前に決められた金額や数、期間の中で株式を買うことのできる制度です。
社員は、会社のIPOのあとに持っているストックオプションを使うことで株式を手に入れ、それを売却すると利益に変わるという流れになります。
ストックオプションは売った際の価格が行使した時点での金額よりも高ければその分が利益に変わるので、今後株価がアップすることが期待できるIPO準備企業には非常におすすめです。
IPO準備企業の中でも、そこまで金銭的に余裕のないベンチャー企業においてストックオプションは主力として活躍している社員の流出を防ぐための手段にもなりえます。
ここではストックオプションの仕組みや導入手続き、導入する際の注意点を解説していきます。
参考:ベンチャーが上場を目指すメリットとは IPO準備における内部統制強化についても解説
ストックオプションの仕組みとは
ストックオプションの仕組みとして、まず第一にストックオプションを発行するには権利行使価額を決定します。
権利行使価額というのは、株式を購入する側の人間が権利を使用する際に、事前に決めておく株式の価格のことを指します。
仮に現在の権利行使価額が100円の場合、将来的に会社がIPOを行った際にどれだけの株価がついていたとしても、1株を100円で購入できることになります。
例として、今の企業の株価が200円になった際に自身の持ちストックオプションを行使し、100円で購入後200円で売却することができ、手元には100円の利益が入ります。
ストックオプションの導入手続きとは
ストックオプションの導入手続きには以下のようなステップを踏む必要があります。
- 募集事項を決める
- 募集新株予約権の申込みと割当
- 払込
ストックオプションは株主総会にて募集事項を決定したり、内容の割当をする人数の設定など、導入前にすることが存在します。
この時点で従業員に公平性があるように設計する必要があるため、事細かく決めていく必要があります。
ストックオプションを導入する注意点
ストックオプションを導入しようと考えている企業は以下の2点に注意する必要があります。
- 上場を考えていない会社は導入することができない
- 企業を立ち上げた時点での設計が必要
1つずつ解説していきます。
上場を考えていない会社は導入することができない
会社の株価が将来的に大きく上昇する可能性があるか会社の株式を将来的に売却するチャンスがあるかの2点がストックオプション導入の条件となります。
世の中には数多くの非上場企業やベンチャー企業がありますが、規模を大きくせずにほぞぼそと続けていきたい場合は株価が上がることがないので上記の条件には該当していないことになります。
企業を立ち上げた時点での設計が必要
ストックオプションはインセンティブとして利用されることが多いものの、株式売却後に大きな金額が入ることで退職者が増えてしまったり、反対に金額が小さいことで仕事のモチベーションにも影響してくることから、設立時に上手く設計を行ってバランスをとる必要があるでしょう。
関連記事:ストックオプションは退職するとどうなる?IPO準備企業が取るべき対応を解説
IPO準備企業がストックオプションを活用するメリット・デメリット
IPO準備企業がストックオプションを活用することは、社員に対して大きなインセンティブを与えられたり、会社の業績への意識が高まるなど数多くのメリットがあります。
しかし、場合によってはデメリットになりうる可能性も秘めているので、IPO準備企業がストックオプションを活用するメリット、デメリットについて「企業側」と「従業員側」に分けて具体的に解説をしていきます。
企業側がストックオプションを活用するメリット
企業側のストックオプションにおけるメリットには以下の2つが挙げられます。
- 人件費を削減しつつ、従業員にインセンティブを渡すことができる
- 優秀な従業員の採用に役立てたり、主力社員の転職を防ぐことができる
上記の2点について解説していきます。
人件費を削減しつつ、従業員にインセンティブを渡すことができる
ストックオプションを活用すれば、人件費を削減しつつ、従業員に対してインセンティブを渡すことができます。使う側の企業からすれば「株で従業員にお給料を支払っている」といえるでしょう。
IPO準備企業は中々、人件費に大きな金額を設定できないという中で、損益計算書に加える必要のないストックオプションは、人件費における節税もできた上で従業員にインセンティブを渡すことができるので、従業員の仕事に対する力の入れ方も変わってくるでしょう。
また、ストックオプションは従業員の頑張りがお給料に繋がってくることから、自身の仕事だけに注力することなく「会社が大きく成長するためにはどのように動けばいいだろう?」など会社の拡大化や業績を上げるためにはどうすればよいのかを具体的に考えるきっかけになります。
優秀な従業員の採用に役立てたり、主力社員の転職を防ぐことができる
ストックオプションは優秀な従業員の採用に役立てたり、現在所属している主力社員の転職を防ぐことにもなります。
ストックオプションは会社の利益が多くなれば、今以上の金額を従業員に付与することができます。
このことから、もし優秀な採用希望者が面接に来た際に将来的なストックオプションを謳い文句に採用することができれば、現状の給与が低くても入社してくれる可能性があります。
また、現在IPO準備をしている企業はすでに上場している企業に比べて、会社に貢献している主力社員にも大きな給与を用意することができません。
しかし、ストックオプションを活用すれば大企業との給与格差をカバーすることも可能なのです。
関連記事:IPO準備企業が転職者を中途採用する際に気を付けるべきこと
社員側がストックオプションを活用するメリット
社員側がストックオプションを活用するメリットには以下のようなものがあります。
- 会社に対する仕事や売り上げでの貢献が社員にとっての利益になる
- ストックオプションを持つこと自体は無料
ここでは上記の2点について解説していきます。
会社に対する仕事や売り上げでの貢献が社員にとっての利益になる
自分自身が仕事を頑張ることで、会社の売上や評価がアップすると同時にストックオプションの価値も高まるようになります。
このことから、給与に加えて、株式でも貢献することで大きな利益を手に入れることが可能です。
ストックオプションを持つこと自体は無料
ストックオプションは持つ事自体無料であることから、自身のお金に対して大きな損失を被ることがありません。
一般的に会社の株式を直接保有すると、株価が下がった場合に大きく損をしてしまう可能性がありますが、ストックオプション自体は0円のため、ストックオプションを与えられた時点で損することはありません。
企業側がストックオプションを活用するデメリット
企業側がストックオプションを活用するデメリットには以下の2つが考えられます。
- 会社の成績が向上しないと意味がない
- ストックオプションを付与された社員とされていない社員でモチベーションに差が生まれてしまう
1つずつ解説していきます。
会社の成績が向上しないと意味がない
ストックオプションは会社の業績が上向くことで価値が上がっていく仕組みなので、利益などの成績が良くない企業がストックオプションを導入したとしても、株価が上がる可能性が少ないことからストックオプション自体の価値もなかったことになってしまいます。
ストックオプションを付与された社員とされていない社員でモチベーションに差が生まれてしまう
社内での社員に対するストックオプションの付与された、付与されていないという人が出てきてしまうと、社員間での仕事におけるモチベーションの低下や会社への不信感につながってしまう可能性があります。
同じ立場での金銭的な不公平が出てしまうと最悪の場合、社員の流出につながってしまうので、ストックオプションを取り入れる段階でどのようなルールで社員に与えていくのかを決めておくことが大切です。
社員側がストックオプションを活用するデメリット
社員側のデメリットは以下の通りです。
- 株価によっては利益が減ってしまう可能性がある
- M&Aによってストックオプションを使うことができなくなる
- ストックオプションには課税制度がある
ここからは上記の3つについて解説していきます。
株価によっては利益が減ってしまう可能性がある
ストックオプションは会社の業績をそのまま影響させることができる分、うまく行けば大きな利益を得ることができますが、景気が悪くなったり、会社の業績悪化などによっては手に入る利益が減ってしまう可能性があります。
M&Aによってストックオプションを使うことができなくなる
ストックオプションには行使条件というものがあり、例えば条件が上場することとしていた場合は会社がM&Aで「大企業出資100%の子会社」などになってしまうことで条件を満たせずストックオプションの恩恵を受けられなくなってしまいます。
利益が大きくなることを目的に業績や売上を意識しながら仕事のモチベーションを保っていた人らすれば、株主によってM&Aが勝手に実行されてこれまで頑張ってきた意味がなくなってしまったということにもなりかねません。
もし、M&Aの可能性がある場合は、従業員にしっかりとストックオプションの利益が与えられるように経営者側はストックオプションを設定しておくことが重要です。
関連記事:IPO準備時におけるM&Aのメリット・デメリット 実施時の注意点も解説
ストックオプションには課税制度がある
会社から与えられるストックオプションの多くは「税制適格ストックオプション」と言われており、租税特別措置法に定める要件をみたしたものになります。
インセンティブを目的に活用されるストックオプションの多くはこれであることが増えてきています。
また、税制適格ストックオプションは証券会社の特定口座における対象に含まれないことから、ストックオプションを行使したら社員側が損益計算をした上で確定申告をする必要があります。
こちらからストックオプションで得た利益を取得する以上、必ず確定申告が必要なので知らない人は頭に入れておきましょう。
IPO準備企業がストックオプション導入時に注意すべき反市場勢力とは
反市場勢力とは株式市場においてルールを無視した取引や法に触れるような方法で利益を手に入れている勢力の事を指します。
IPO準備企業では、取引先や会社で実際に働いている従業員、そして社員などに反市場勢力がいないかなどを確認するために事前に確認しておく必要があります。
特に銀行からの資金調達や利益が赤字続きな上場企業は反市場勢力が接近してくる可能性が高いので、さらなるチェックが必要です。
また、これから上場を目指すIPO準備企業では、反市場勢力を入り込ませないためにより厳しい反社チェックを行う必要があります。加えて企業に対して投資をしてくれているエンジェル投資家がいた場合には、その周りにも注意が必要です。
ストックオプションでは行使した人が株主となるため、付与する人の選定時や社員の採用に対しても反社チェックが必要といえるでしょう。
参考:上場企業・IPO準備企業の陰に潜む反市場勢力とは?基本と用語について解説
関連リンク:スタートアップM&Aや資本政策・資金調達を助言する専門会社「株式会社ファイナンス・プロデュース」
まとめ
ストックオプションがどのようなものなのか、IPO準備企業が導入することのメリットやデメリット、注意点などについて解説してきました。
ストックオプションは会社の業績がアップすることで持つ価値が上がりますが、その反面業績が下がることで持っている意味のなさないものとなってしまうことも考えられます。
また、ストックオプションをIPO準備企業が導入するにはいくつもの注意点が挙げられるので、非常に手間のかかるものであることを覚えておきましょう。
関連記事:IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか?上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説
関連記事:反社会的勢力に対応するためのガイドライン 反社チェックの基準とは?