コンプライアンスとは?わかりやすく・簡単に意味や使い方を解説
近年、企業に対して「コンプライアンス」が求められる機会が多くなりました。
もし企業がコンプライアンスに違反してしまうと、企業のイメージダウンはもちろん、従業員、株主、クライアントなどのステークホルダーからの信頼を失い、最悪の場合「経営破綻」にまで追い込まれることもあります。
そのため、企業はコンプライアンスの重要度をしっかりと認識し対策を行う必要があります。
今回は企業が求められている「コンプライアンス」の意味や関連用語、リスクについて分かりやすく解説し、最後にコンプライアンス遵守に重要な反社チェックについても紹介していきます。
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コンプライアンスとは?わかりやすく・簡単に意味を解説
まず「コンプライアンス」の意味や重要視されている理由について、簡単にわかりやすく解説していきます。
意味を理解せずに企業内でコンプライアンスに関する対策・方法を進めてしまうと、その方法がリスクとなる可能性もあるので気を付けましょう。
コンプライアンスの意味
コンプライアンス(Compliance)は、ビジネスシーンでよく使われる言葉で、一般的には「法令遵守」という意味で使われます。
近年、さまざまなビジネスシーンで使われる機会が増えてきており、コンプライアンスの意味は企業において「社内規範」「社会的模範・規律」などと呼ばれることが多いです。
コンプライアンスは、企業のステークホルダー(利害関係者:クライアント、従業員、株主など)からの信頼はもちろん、従業員に対しても、コンプライアンスを遵守するための指導を行う必要があるため、企業にとって重要な活動となります。
関連記事:企業活動におけるコンプライアンスとは?違反を防ぐ対策についても解説
コンプライアンスが重要視される理由
企業は従業員が労働、株主が出資、消費者が購買行動を行うことで成り立つので、企業のイメージを良い印象に保つためにも、コンプライアンスに沿った経営を進めていく必要があります。
例えば、不正な株式市場取引を行っていたことや、上司からのパワハラやセクハラが横行している事実が、世間に明るみになった企業があるとしましょう。
これらの問題が発覚してしまうと、クライアントはもちろん、従業員、株主、消費者などのステークホルダーからの信頼は大きく下がります。
結果、企業活動に悪影響を及ぼし、最悪の場合「経営破綻」にまで追い込まれる可能性があります。
企業活動を維持していくためにも、コンプライアンスに沿って行動し「CSR(Corporate Social Responsibility)※1」を達成していくことが必要です。
※1 企業の社会的責任:企業の組織活動が社会に与える影響に対して責任をもち、あらゆる事象に対し適切な意思表示を行うこと
関連記事:企業イメージをアップさせるコンプライアンス遵守を解説
コーポレート・ガバナンスとの違いとは
コーポレート・ガバナンス(企業統治)とコンプライアンスの意味に大きな違いはなく、単語が示す企業の活動範囲が異なります。
コーポレート・ガバナンスは分かりやすく言うと「不正行為のない企業経営を維持するための仕組みの構築」という意味で使われる用語で、社外取締役・監査役、会計監査人などが企業内部、特に経営層による不正を監視し、違反がないかをチェックする体制のことです。
一方、コンプライアンスは簡単にまとめると「不正行為が起こらないようにするためのルール」という意味です。
つまり、2つの単語の意味をまとめると「コーポレートガバナンスを達成するために、コンプライアンス(社内規範や法令)が必要」となります。
関連記事:IPO準備企業にはなぜ監査法人が必要?必要な理由と選び方について解説
内部統制との関係性とは
内部統制は、「コンプライアンス」「コーポレート・ガバナンス」と強い関係性をもつ用語です。
1文で分かりやすく説明すると「経営層が企業活動を行うにあたり、トラブルが起きないように健全にかつ効率的に、企業経営を行っていくための仕組み」という意味です。
内部統制とコーポレート・ガバナンスは「健全な企業経営のための仕組み作り」という点では一緒の意味ですが、監査対象が異なります。
一方、コンプライアンスと内部統制の関係性を、1文で簡単に説明すると「内部統制をきちんと運営するために、コンプライアンスを遵守する」という意味です。
これら3つの言葉を簡単にまとめると「健全な企業経営に必要なコーポレート・ガバナンスや内部統制を達成するには、コンプライアンスの遵守が必要」となります。
関連記事:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説
企業におけるコンプライアンス・リスクとは
コンプライアンスに違反するような行動をしてしまうと、企業経営に対するさまざまなリスクが発生し、企業イメージやステークホルターに対し悪影響を及ぼし、利益率や成長率の減少に繋がる可能性もあります。
そのため、経営層は「コンプライアンス・リスク」を確実に理解しておく必要があります。
ここでは、企業がコンプライアンスに違反したときに起こるリスクと対処法について、4パターンに分けて簡単に説明していきます。
労務リスク
労務リスクは「従業員が不当な扱い、精神的苦痛を受けたときに発生する」リスクのことを指します。
具体的には、セクハラやパワハラなどのハラスメント、残業代未払いや長時間労働などの労働基準法違反などが該当します。
これらの事象に対して適切な処置を行わないと、従業員の退職、SNSや転職サイトの悪評による新卒・中途面接者の減少、行政処分などのリスクを負う可能性が高いです。
労務に関わる担当者(人事や総務など)は、これらのリスクを回避するために、全従業員に対し社内規範の周知、労働環境の調査などを事前に行っていくことはもちろん、相談窓口の設置や、コンプライアンス研修などを積極的に推進していくことが重要です。
関連記事:IPO準備企業が上場審査に向けて整えるべき労務管理体制とは
契約リスク
契約リスクは「他の企業と契約を交わしたときに発生する」リスクのことを指します。
法令違反リスクを重複する部分もありますが、「契約した内容が実は法令に触れていた」「契約書に誤って自社が不利益になるよう内容を記載したまま提出してしまった」などの事例が当てはまります。
契約書は企業間の取引内容を証明する書類なので、細心の注意を払う必要があります。
契約に関わる法務担当者は、コンプライアンス違反を回避するためにも、企業全体の契約書を確実にチェックできるような仕組みを構築していくことが重要です。
また、正しい契約を交わしたとしても、契約書の紛失、漏えいというリスクも考えられます。
契約書の管理や電子化についてもしっかりとルールを決めておく必要があります。
関連記事:IPO準備&急成長ベンチャーに必要な「契約管理」 法務体制強化でリスク管理
情報漏えいリスク
情報漏えいリスクは「企業や取引先情報、従業員の個人情報が流出してしまう」ことを指します。
企業や取引先の従業員が誤って情報を流してしまう人為的なミスもありますが、悪意のある第三者によるインターネットを介したサイバー攻撃で個人情報が流出するリスクもあります。
特にインターネットを介したサイバー攻撃は、リモートワークが普及した2020年以降増加しており「内部情報が入ったハードディスクの紛失」「フィッシングサイト誘導による情報の流出」「公共のネットワーク使用による情報の流出」など、リモートワークならではの被害が多いです。
引用:CANON「テレワークを狙うサイバー攻撃の現状と対策のポイント」
そのため、企業は情報漏えいリスクを回避するためにも、「内部情報を社外に持ち込まない、公共のネットワークへの接続禁止」などの社内規範や、「データの暗号化、社内ネットワークの使用」などのインターネットセキュリティーの強化を行う必要があります。
法令違反リスク
法令違反リスクについては、テレビやネットニュースで連日報道していることもあるので、耳にする方も多いのではないでしょうか。
法令違反リスクは「企業が守るべき法令に違反する」ことを指します。
契約リスクで触れた「契約内容が法令に違反していた」や「企業が意図的に法令を違反していた」という事例も法令違反リスクに当てはまります。
例えば、あるお菓子販売業者がスーパーなどの小売店に対し「この価格で販売しないと出荷を停止する」などと要請して、価格を独占的に決める行為は「独占禁止法」に該当します。
また、ある企業が下請け先に発注を口頭で行う行為は「下請法」に該当します。
企業はこれらの法令に違反してしまうと、注意勧告や罰金を受けてしまいます。
コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスは上記のリスクを防止するために重要ですが、特に「法令違反」について厳しく取り締まっていく必要があります。
そのため、取締役決済の一元集中化の防止や、社外監査・取締役ポジションの設置、社内規範の強化を行う必要があります。
関連記事:コンプライアンス違反の罰則とは 起こさないための対策
コンプライアンス遵守に必要な反社チェックとは
コンプライアンスに違反すると、さまざまなリスクが発生し、企業イメージやステークホルターに対し悪影響を及ぼします。
そのため、コンプライアンス遵守のために、労務、契約、情報漏えい、法令違反リスクに対応した施策を打つことが重要です。
それ以外にもステークホルダーの中に反社会的勢力※2に関わっている人物がいた場合も、コンプライアンスという観点でリスクとなります。
企業はCSR(社会的責任)の観点から、暴力団に資金を与えないように一切取引を行わず、積極的に反社会的勢力を排除していく必要があります。
また、企業のコンプライアンス上、反市場勢力※3に関わっている人物も排除する必要があります。
年々、反社会的勢力の数は減少傾向ではありますが、2021年時点で2万4,100人(暴力団構成員、準構成員の合計)とまだまだ多いのが実情です。
反社会的勢力・反市場勢力との関わりを防ぐためには「反社チェック」が重要です。
反社チェックとは、自社に関わる人物、企業などが反社会的勢力・反市場勢力に該当しないか調査する方法で、無料で始められるインターネット検索や、有料の新聞記事検索サービスを利用する公知情報の取得により判断することが一般的です。
企業によっては反社情報だけでなく、新規取引先企業の信用度を確認するために社長や役員などが犯罪を起こしていないか調査する必要があります。
自社のレピュテーションリスク※4を回避するためにも反社チェックは重要な作業となっております。
反社チェックの体制構築が進んでいない場合はできるだけ早く構築を行いましょう。
※2反社会的勢力:指定暴力団(ヤクザ)、準暴力団(半グレ)、暴力団関係企業(フロント企業、舎弟企業)をまとめた用語
※3反市場勢力:株式市場においてインサイダー取引など法令で禁止されている取引を意図的に行う人物または企業
※4レピュテーションリスク:企業に関するネガティブな評価が広まった結果、企業の信用やブランド価値が低下し損失を被るリスクのこと。
関連記事:反社チェックはどこまで行うべきか 実施対象・方法を解説
まとめ
企業にとって重要な「コンプライアンス」の意味や関連用語との共通点を中心に、簡単に分かりやすく解説していきました。
また、コンプライアンス違反をしてしまったときのリスクについてもご理解いただけたと思います。
企業や取引先、従業員から信頼を下げないためにも、コンプライアンスを遵守した組織作りを目指していきましょう。
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