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コンプライアンスマニュアルの作成方法 手順や作成例も解説

市民の環境意識や人権意識が高まるにつれて、企業のコンプライアンスに対する監視の目が厳しくなり、かつ多様化しています。
また、SNSの発達によって、コンプライアンス違反をした企業の痛手は、従来よりもはるかに大きくなりました。

このようなコンプライアンス・リスクに対処するために、コンプライアンスマニュアルを作成する企業が増えています。
企業のトップからその準備作業をするように命じられて、何から手を付けていいのかと悩んでいる人もいるでしょう。

この記事では、初めてコンプライアンスマニュアルを作成する際に知っておくべき作成方法や手順を、実例を交えて解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.コンプライアンスマニュアルとは
    1. 1.1.コンプライアンスマニュアルの定義
    2. 1.2.コンプライアンスマニュアルの重要性
  2. 2.コンプライアンスマニュアルの作成方法・手順とは
    1. 2.1.基本理念の確認
    2. 2.2.行動規範づくり
    3. 2.3.行動基準づくり
    4. 2.4.コンプライアンスマニュアル作成
    5. 2.5.実践・行動
  3. 3.コンプライアンスマニュアル作成のポイント
    1. 3.1.例外の排除
    2. 3.2.なんでも明文化する
    3. 3.3.定期的な研修実施
    4. 3.4.相談窓口の設置
  4. 4.コンプライアンス遵守に必要な反社チェック・コンプライアンスチェックとは
  5. 5.まとめ

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コンプライアンスマニュアルとは

コンプライアンスマニュアルとは

コンプライアンス・マニュアルとは、どの企業にも内在している「コンプライアンスに反する可能性」(コンプライアンス・リスク)を最小限に抑えるための手引書です。

法令遵守に留まらない広い意味で「企業のふるまい」を問われるのがコンプライアンスなので、それに違反するリスクはいたるところにあると言わざるを得ません。

コンプライアンス・リスク回避のために、経営理念や従業員規則などには納め切れない観点・内容を含めて作成した文書がコンプライアンスマニュアルです。

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コンプライアンスマニュアルの定義

コンプライアンスマニュアルには、定型化された形式があるわけではありません。
それぞれの企業が自社の活動の特性に応じて、コンプライアンスを守るために必要と思われる理念や決意、ルールなどを記したものがコンプライアンスマニュアルです。

コンプライアンスマニュアルに含まれる内容には、主に次のようなものがあります。

  • 企業がとるべき行動についての理念や誓い
  • 業務遂行に際しての遵守事項:公正な競争、人権の尊重、環境への配慮、反社会的勢力の排除など
  • コンプライアンスに取り組む体制:委員会、相談窓口、問題発生時の対応など

上記のどれに注力するかは企業によって異なりますが、各社ともコンプライアンスに取り組む基本姿勢を「誓い」や「憲章」として、コンプライアンスマニュアルの冒頭に掲載しています。

コンプライアンスマニュアルの重要性

コンプライアンスマニュアルの重要性は、企業コンプライアンスに対する社会の要請が厳しさを増していることによって高まっています。
また、コンプライアンス・リスクが多岐に及び、判断の難しい微妙な問題を含むことも、マニュアルの重要性を高めています。

コンプライアンスに対する社会の眼が厳しさを増している要因としては、持続可能な社会・環境の維持に対する企業の責任が強く問われていることがあります。
また、人種や性などに関わる差別や従業員に対する抑圧的な処遇を許さない人権意識が高まっていることも要因の1つです。

このように、企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)が重さを増し、顧慮すべき範囲が広がるにつれて、コンプライアンス・リスクも多岐に及んでいます。
パワハラやセクハラなど、判断の難しい微妙な問題も含まれています。

さらに近年は、ひとたびコンプライアンス違反が発生すると、SNSで一気に拡散・炎上するというリスクもあります。
企業がこのような広範かつ微妙なコンプライアンス・リスクに対処するには、暗黙知としての企業文化・風土の伝承では不十分だと考えるのは当然です。

コンプライアンスマニュアルの重要性は、リスクにいかに対処するかを言語化(意識化)することにあります。
過去に不祥事を起こして痛手を受けた企業が、コンプライアンスの明文化によって「再発防止」を期する例は少なくありません。

まだ不祥事を起こしたことがない企業には「転ばぬ先の杖」となるのがコンプライアンスマニュアルです。

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コンプライアンスマニュアルの作成方法・手順とは

コンプライアンスマニュアルの作成方法・手順とは

コンプライアンスマニュアルを作成するには、まずコンプライアンスに取り組む基本理念を明確にし、その理念を実現するための規範や基準を策定します。

基本理念の確認

コンプライアンスマニュアルは、まず自社が「企業市民」としてどうふるまうかの基本理念を表明する必要があります。
コンプライアンスの基本理念とは具体的にはどのようなものか、実例で見てみましょう。

乳製品メーカーのA社は、同社のコンプライアンスマニュアルである「企業行動憲章」で次のような基本理念を掲げています。

  1. 持続可能な企業価値の向上と社会課題の解決
  2. 消費者との信頼関係
  3. 公正な事業活動
  4. 公正な情報開示、ステークホルダーとの対話
  5. 働き方の改革と職場環境の充実
  6. 環境問題への取組み
  7. 人権の尊重
  8. 危機管理の徹底
  9. 本憲章の徹底

引用元:https://www.meg-snow.com/corporate/charter/

コンプライアンスの基本理念を作成するための根本的な拠り所になるのは、企業のビジョンやミッションと呼ばれる「自社の存在意義」についての考え方です。
また、自社の活動領域や業務の特性に応じて、とくに配慮すべき事柄やステークホルダー(企業活動にかかわる人々)についても考慮・言及されます。

基本理念の文言は一見すると「きれいごと」ですが、それは「簡単なことではないが、必ず実現したい」という決意の表明だからです。
企業活動にはきれいごとでは済まない局面が多々ありますが、どのような局面においても、コンプライアンスを逸脱しないための指標となるのが基本理念です。

総合商社B社のコンプライアンスマニュアルには、「はじめに」という文章に次の言葉があります。

正義と利益のどちらかを取らねばならない状況に遭遇したら、迷わず正義を貫け

引用元:https://www.marubeni.com/jp/company/governance/measure/compliance/pdf/compliance_manual_jp.pdf

コンプライアンスの基本理念が決意表明であることをよく示している例です。

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行動規範づくり

コンプライアンスマニュアルでは、基本理念を実現するためのより具体的な行動規範も示されなければなりません。
例えば上記の乳製品メーカーA社の「消費者との信頼関係」という理念では次のような行動規範が表明されています。

私たちは、品質管理を徹底し、社会に有用で安全な商品・サービスをお届けします。また、消費者基本法に基づく「消費者の権利」と「事業者の責務」を認識し、商品・サービスに関する適切な情報提供や誠実なコミュニケーションを行い、消費者の満足と信頼を獲得します。万が一提供した商品に事故が発生した場合は、消費者の安全を最優先に考えて適切に対応します。


引用元:https://www.meg-snow.com/corporate/charter/

ここでは「消費者との信頼関係」を築くという基本理念を実現するためには、消費者基本法に基づく適切な情報提供や誠実なコミュニケーションなどが必要だということが説かれています。

行動基準づくり

行動基準は、行動規範をさらに具体化し「こういうときは、こうする」まで示すものです。
一般的な「マニュアル」のイメージにもっとも近い内容と言えますが、家電製品のマニュアルと違い、企業活動において起こりうるコンプライアンス事例を網羅するのは困難です。

行動基準を作成するとしても、実際には、企業の特性によってとくにこの分野での行動基準は明文化しておくべきだ、という範囲に限られるでしょう。

前述の総合商社B社のコンプライアンスマニュアルには「ビジネスシーン別遵守事項(参考)」として、次のような場面での遵守事項を記載しています。

  • 取引先との会議・商談で
  • レセプションなど会食の場で
  • 貿易取引の場で
  • 工場や建設現場で
  • 職場で
  • 採用活動の場で
  • 国際社会・地域社会で

ただしその内容は、例えば「レセプションなど会食の場で」の項目では「利害関係を有する公務員に対する接待・贈答は行わない」などの規範、大枠での行動基準で、具体的なケーススタディではありません。

参考:丸紅グループ コンプライアンス・マニュアル

しかし、起こりうるケースについて網羅することはできなくても、実際に過去に生じた(あるいは生じそうになった)コンプライアンス事例については、具体的にケーススタディして行動基準を明記することは可能であり、有益です。
その場合は、社外には公表しない内部文書となるでしょう。

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コンプライアンスマニュアル作成

コンプライアンスマニュアルを作成するには、まずコンプライアンスの基本となる理念や決意を明文化しなければなりません。
そのためには経営トップの積極的な関与が必須です。
それを前提として、コンプライアンス委員会などの名称で組織を立ち上げ、委員会が主体となってマニュアルを作成します。

委員会のメンバーには、経営層の他に各部門・部署のトップも参加する必要があります。
顧問弁護士がいる場合は、その参加も必須です。
コンプライアンス委員会はマニュアルの作成だけでなく、その後もコンプライアンスに関わる事柄を審査・検討する組織となるので、迅速な意思決定ができるメンバーで構成されなければなりません。

基本理念を明文化したら、企業の特性に応じて必要な行動規範や行動基準を文章にしていきます。

実践・行動

コンプライアンスマニュアルは、問題が生じたときに参照する文書ではなく、問題が生じないように全社員のコンプライアンス意識を高めるための文書です。
作成されたマニュアルが一通り目を通されただけで、机の引き出しにしまい込まれたり、パソコンのファイルに収められたりしたのでは意味がありません。

日常業務において、敏感にコンプライアンス・リスクを「察知して回避する」能力を高めるために、個人としても組織としてもコンプライアンスマニュアルを活用することを心掛けたいものです。

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コンプライアンスマニュアル作成のポイント

コンプライアンスマニュアル作成のポイント

コンプライアンスマニュアルを作成するにあたって留意すべきポイントは、例外を認めない厳格な姿勢と、曖昧さを残さない明文化です。

また、作成後には定期的な研修を行ってマニュアルを風化させないこと、相談窓口を機能させてコンプライアンスへの取り組みがタテマエだけではないことを全社員に示すことが大切です。

例外の排除

コンプライアンスは、「業績を左右する案件だから目をつぶろう」とか「社員には許されないが、社長は大目に見るしかない」というようなご都合主義が通用する遵守事項ではありません。
ひとたびそれが許されたらコンプライアンスは根腐れして、いたるところにコンプライアンス・リスクが巣食うことになります。

コンプライアンスマニュアルでは、全ての表現・文書を通じて、一切の例外を排除する厳格な姿勢が表明されていなければなりません。

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なんでも明文化する

コンプライアンスマニュアルを作成すること自体が、それまで各企業に暗黙知として存在していた企業倫理の明文化です。
そのマニュアルにどうとでも解釈可能な曖昧さがあったのでは、マニュアルを作成する意味がありません。

日本人の作文マナーには、過激な表現という印象を持たれないために語尾をぼかすなど、コンプライアンスマニュアルにはまったく不適当なものがあります。
そのような習慣に影響されずに、言い切るべきことははっきり言い切ることが肝要です。

定期的な研修実施

コンプライアンスマニュアルの作成後は、マニュアルに記された理念や決意が、作成時(作成者)の熱度を保ったままに理解され、共感される必要があります。
そのためには、作成直後はもちろん、その後も定期的にコンプライアンスマニュアルを手引書としてコンプライアンス研修を行うことが重要です。

競争原理が支配する日々のビジネスに身を置いていると、いつの間にかコンプライアンスが二の次になってしまうことがあります。
そうならないためのリマインドとして定期的なコンプライアンス研修が役立ちます。

相談窓口の設置

社員がパワハラに悩んでいるなどのときに、どこにも相談する窓口がないのでは、コンプライアンスマニュアルは絵に描いた餅になってしまいます。

また、相談窓口が適切に機能していることも重要です。
相談したことでかえって不利益を受けたりすると、社員はコンプライアンス自体が単なるタテマエなのだと感じます。

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コンプライアンス遵守に必要な反社チェック・コンプライアンスチェックとは

コンプライアンス遵守に必要な反社チェック・コンプライアンスチェックとは

「反社チェック・コンプライアンスチェック」とは、取引先や社員、株主などのステークホルダーに反社会的勢力とかかわりを持つ人物がいないかをチェックすることです。

企業には「暴力団排除条例」によって反社会的勢力を排除する努力義務が課せられており、これに違反することは重大なコンプライアンス違反として社会から糾弾されます。
上場企業の場合は上場廃止になる可能性もあります。

したがって、新たな取引先と契約する際や社員を採用する際には「反社チェック・コンプライアンスチェック」が必要です。
チェック方法には、自社で新聞記事のデータやインターネット上の情報を検索する方法や、独自に収集した反社会的勢力情報データベースを提供するサービスを利用する方法があります。

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まとめ

コンプライアンスマニュアルを作成するには、まずコンプライアンスを守るにあたっての基本理念や決意を固めて言語化する必要があります。
次に基本理念を実現するための行動規範や行動基準を定めて文書にします。

コンプライアンスマニュアルは、問題が生じたときに参照する文書ではなく、問題が生じないように行動をするためのガイダンスです。
定期的な研修などで、その意味と意義が風化しないように努力することが何よりも重要です。

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佐々木 雄輝
佐々木 雄輝
2022年にソーシャルワイヤー株式会社に入社。 反社チェックサービス『RISK EYES』のマーケティング施策の企画立案を担当。
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