半グレとは?暴力団との境界線や刑罰対象について解説
近年、特殊詐欺や暴力バー、集団強盗などの犯罪報道で耳にすることが増えたのが「半グレ」という言葉です。
半グレは暴力団とは異なる新興の犯罪組織で、青少年を犯罪に巻き込む闇バイトも半グレが主犯のケースが多いと言われています。
暴力団対策法が半グレには適用されないこともあり、警察も半グレの実態把握や取り締まりに手を焼いているのが現状です。
この記事では、半グレとはどのような犯罪集団で、暴力団とはどこが違うのか、半グレが手を染めるのはどのような犯罪が多いのかを分かりやすく解説します。
また、半グレを取り締まるための警察の最近の取り組みついても紹介します。
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目次[非表示]
- 1.半グレとは?暴走族OBなどから派生した不良集団
- 1.1.半グレと暴力団の適用法令の違い
- 1.2.半グレと暴力団の見分け方
- 2.半グレによる犯罪の特徴や警察の動向
- 2.1.半グレの代表的な犯罪
- 2.2.半グレに対する警察の動向 準暴力団としての認定
- 3.半グレと関わる前に行いたい反社チェックとは
- 4.まとめ
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半グレとは?暴走族OBなどから派生した不良集団
半グレとは、指定暴力団には属さない新興の犯罪グループです。
暴走族OBや地元の不良仲間などが主な構成員で、警察は「準暴力団」として取り締まりを強化しています。
半グレという言葉が一般的になったのは2010年代以降です。
半グレが増えて社会問題化した背景には、暴力団対策法や暴力団排除条例による暴力団の縮小と弱体化があります。
暴力団員になるとアパートが借りられない、車が買えないなど生活面のデメリットも大きくなり、犯罪性向のある若者が独自の集団を作ったのが半グレです。
半グレの語源は「半分グレている」ですが、グレ方(反社会性)が中途半端だとか、それほどひどくはないというイメージを持つのは間違いです。
半グレは暴力団員ではないことを除けば完全なアウトロー集団で、組織的に悪質な犯罪行為を繰り返しています。
半グレと暴力団の適用法令の違い
暴力団は暴力団対策法と各都道府県の暴力団排除条例によって厳しく取り締まられていますが、これらの法律や条例は半グレには適用されません。
暴力団の構成員に対しては前述の賃貸住宅が借りられない、車を自分名義で買えない他に、銀行口座を開設できない、ゴルフ場でプレーできないなど、さまざまな締め付けがあります。
しかし、半グレはこれらの社会活動、経済活動を自由に行うことができます。
警察は半グレを準暴力団と位置づけて取り締まりの強化に乗り出していますが、法整備がまだ十分に整っていないのが現状です。
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半グレと暴力団の見分け方
暴力団と半グレを外見から見分けるのは困難です。
また、一般人や一般企業がそれを識別することに大きな意味はありません。
どちらも明白な反社会的集団と認識して一切関係をもたないことが肝要です。
暴力団も半グレも一般人に近づくときは、反社会的勢力であることを隠して関係を持とうとするか、逆に〇〇組、〇〇連合など反社であることをちらつかせて脅すかのどちらかです。
とくに気をつけたいのは一般人や一般企業を装って接近する半グレや暴力団です。
一度関係を持つとその後の対応が難しくなり、企業はコンプライアンス違反を問われます。
また、暴力団と半グレは必ずしも敵対しているわけではなく、暴力団が半グレを手先として使うこともよくあります。その意味でも両者を見分けのるは困難です。
半グレによる犯罪の特徴や警察の動向
半グレによる犯罪は多岐にわたりますが、特殊詐欺や都会の歓楽街を舞台にした犯罪が多いのが特徴です。
近年、警察では半グレを専門に取り締まる部署を設けるなどで対策を強化しつつあります。
半グレの代表的な犯罪
半グレが資金源としている犯罪で多いのは、特殊詐欺、みかじめ料の請求、暴力バー、組織窃盗などです。
ここでは上記犯罪がどのようなものか1つずつ紹介していきます。
特殊詐欺
「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」などの特殊詐欺は、半グレの大きな資金源になっています。
特殊詐欺は次々と新しい手口を開発して、取り締まりの裏をかく、あるいは一歩先を行くことを目論むのが特徴です。
新型コロナウイルスが流行した際には、助成金の給付をかたったり、融資を持ちかけたりする手口が現れました。
最近ではSNSを利用した「闇バイト」で一般人を巻き込み、特殊詐欺の「受け子」「出し子」や、強盗の実行犯として使い捨てにする手口が増えています。
警察が逮捕するのは闇バイトでリクルートした使い捨ての下っ端の場合がほとんどで、海外から指示を出しているような主犯各を摘発するのは容易ではありません。
みかじめ料の請求
繁華街を縄張りにする半グレが飲食店にいわゆる「みかじめ料」を請求するケースが増えています。
用心棒代、ショバ代などの名目で飲食店からお金を徴収するみかじめ料は、これまでは暴力団の主な資金源のひとつでしたが、警察の取り締まりの強化で暴力団が動きにくくなった空白地帯に半グレが進出した形です。
半グレが、表立った行動をしにくくなった暴力団の手先として集金するケースもあります。
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暴行・傷害
繁華街で起きる暴行・傷害事件に半グレが関わっているケースが少なくありません。
ガールズバーなどの名称で客を呼び込み法外な料金を請求する、いわゆるぼったくりバーもその1つです。
支払えない客には暴行を加えて監禁し、翌日ATMから現金を引き出させるなどの荒っぽい手口もあります。
2019年に大阪府警はミナミの繁華街でガールズバーを含む多数の飲食店を経営する半グレを一斉摘発しました。この犯罪集団は毎月5千万円以上を売り上げ、一部は暴力団に流れていたといいます。
南署は摘発に当たって100人規模の捜査チームを結成して、148件、2,200万円の被害を確認しました。
また、一般人に対する暴行・傷害だけでなく、半グレ同士の抗争による暴行・傷害事件も発生しています。
上記以外に、組織窃盗や闇金などに半グレが関わっているケースも散見されます。
最近はファクタリング(債権買取)を装って違法な貸し付けと強引な取り立てを行う半グレも増えているので注意が必要です。
関連記事:反社会的勢力の実名リストはある?指定暴力団や関係企業の確認方法
半グレに対する警察の動向 準暴力団としての認定
2003年に警察法施行令が改正されて、各都道府県の警察が地域の実情に合った組織犯罪への取り組みができるようになりました。
それを受けて警視庁(東京都)が同年に設立したのが組織犯罪対策部です。
しかし、当時、半グレは前景化しておらず、組織犯罪の主な対象とされたのは、暴力団、チャイニーズドラゴンなどの外国人犯罪組織、薬物銃器犯罪組織などでした。
2010年前後から半グレの犯罪が社会問題となり、警察庁は2013年に暴走族OBなどの半グレを「準暴力団」と位置づけて、情報収集と取り締まりを強化するよう全国の警察に通達しました。
2023年には、福岡県警が半グレを専門に取り締まる「準暴力団等集中取締本部」を発足させると発表しました。
福岡の半グレは、独立志向が強い東京の半グレとは違い、暴力団の手先として活動しているのが特徴だといいます。
参考:読売新聞オンライン「全国初の「半グレ」専門取締本部、福岡県警に230人態勢で発足…「治安対策上の脅威」」
関連記事:反社会的勢力に対応するためのガイドライン 反社チェックの基準とは?
半グレと関わる前に行いたい反社チェックとは
反社チェックとは、従業員や取引先、株主が反社会的勢力と関係がないかを事前にチェックすることをいいます。
従業員なら雇用契約の前に、取引先なら業務契約を結ぶ前にチェックするのが大切です。
反社会的勢力(反社)には、暴力団、半グレのほか、舎弟企業やフロント企業と呼ばれる暴力団関係企業、総会屋、特殊知能暴力集団も含まれます。
契約後に従業員や取引先が反社であることが判明すると、契約解除にはトラブルがともないがちです。
もちろん、そのまま雇用し続けたり、取引を継続したりするのは重大なコンプライアンス違反となり、世間から非難を受けることになります。
反社チェックがコンプライアンスチェックとも呼ばれるのはこのためです。
国は2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を発表しましたが、事前チェックのための具体的な方法については触れていません。
反社チェックの具体的な方法としては、インターネットや新聞記事などの公知情報の検索、調査会社・興信所への依頼、警察・暴力追放運動推進センターへの相談などがあります。
関連記事:反社チェック・コンプライアンスチェックの具体的な方法とは?
まとめ
半グレは暴走族OBや地元の不良グループなどを母体とする、新興の組織犯罪集団です。
親分、子分の擬制的血縁関係で結びつけられた暴力団とは組織の構成や行動論理が違うので、警察も半グレの実態把握に苦労しています。
暴力団対策法や暴力団は維持条例が半グレには適用できないのも、取り締まりのネックになっています。
半グレの代表的な犯罪には、特殊詐欺や繁華街を舞台にしたみかじめ料の請求、ぼったくりバー、集団窃盗や強盗などがあります。
企業は半グレと関係を持たないために、従業員の雇用や新規取引先との契約の際には反社チェックを行う必要があります。
事前に半グレを排除できる体制を整えていきましょう。
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