反社チェックは個人に対しても必要？チェックの方法と注意すべきことも解説

企業が取引や契約を行う際は反社チェックの実施が当たり前になっていますが、相手が個人の場合でも反社チェックが必要なのかという疑問を持ったことのある方もいるでしょう。

この記事では、個人に対する反社チェックの必要性や、チェックの方法と注意点についても解説します。

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反社チェックとは

反社チェックとは、対象者が反社会的勢力でないか、また反社会的勢力と繋がりがないかを確認することです。

チェック対象は、取引先、従業員、株主など自社と関わるすべての企業や人々で、自社が反社会的勢力と関係を持たないために実施されます。

反社会的勢力の定義

反社会的勢力は政府の指針で、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されています。

また、「暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目する」とも明記されており、暴力団以外にも反社会的勢力と判断される対象が多く存在します。

参考：法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」

関連記事：反社会的勢力とはなにか？定義や調べ方など具体的な対策を解説

個人に対しても反社チェックが必要な理由

個人に対しても反社チェックを行うべき簡単な理由は、反社会的勢力が団体であるとは限らないからです。
暴力団構成員が個人事業主としてビジネス活動をしているケースも存在し、見た目や書類などの情報だけでは反社会的勢力を見分けることはできません。

特に近年では反社会的勢力が巧妙化して、気づかないうちに関係を持ってしまっているケースや、闇バイトの増加により若者が反社会的勢力と関係を持っているケースも少なくありません。

反社会的勢力と関係を持たないための反社チェックが必要な理由を6つ解説します。

政府指針に従うため

2007年に政府が「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を発表し、反社会的勢力による被害を防ぐための基本原則が定められました。

契約を行う際は契約書に「反社条項」を定めることが求められており、反社条項を盛り込むことで、相手が反社会的勢力に関係すると判明した際、契約の解除や関係の遮断をスムーズに行うことができます。

この指針に従うことは、社会的責任を果たし、顧客や取引先からの信頼を保つためにも重要になります。

関連記事：反社会的勢力排除条項（暴力団排除条項）とは？契約書に定めるべき理由と条項について解説

金融庁の監督指針に従うため

金融庁からは政府の指針に加えて、「主要行等向けの総合的な監督指針 Ⅲ-3-1-4 反社会的勢力による被害の防止」という新たな対策を発表しています。

金融庁からの指針の最大の目的は、金融機関において反社会的勢力との取引を防ぎ、被害を未然に食い止めることです。

企業だけでなく、個人事業主なども金融機関と取引を行うことがあるため、この指針に従うことが求められます。

参考：金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針 Ⅲ-3-1-4 反社会的勢力による被害の防止」

暴力団排除条例を守るため

政府指針の発表後、各都道府県から「暴力団排除条例」が策定されました。

都道府県によって内容に多少の違いはありますが、相手が反社会的勢力でないかを事前に確認すること、契約書に反社条項を盛り込むこと、暴力団関係者への利益供与の禁止などが定められています。

違反があった場合、罰則の対象になる可能性もあり、反社会的勢力排除のための取り組みが必要になります。

新規上場審査基準を満たすため

新規で証券取引所に上場する際は、反社会的勢力との関係がないことを証明することが上場審査基準として求められます。
そのため、多くの企業が上場前に反社チェックを導入し、反社チェックの効率化を検討しています。

また既に上場している企業でも、反社会的勢力との関係が発覚した場合、上場廃止になる可能性があります。
上場前はもちろん、上場後も定期的な反社チェックを怠らず、反社会的勢力との関係を持たないことが重要です。

関連記事：IPO準備にはなぜ反社チェック（コンプライアンスチェック）が必要なのか？上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説

自社の信用問題に関わるため

反社会的勢力に関連する組織や企業、人物と関わりを持つと、様々なリスクを背負うことになります。
反社会的勢力との繋がりが世間に露見した場合、企業の信用は失墜し、取引中止や顧客離れは避けられません。

そもそも反社会的勢力との関係を持つことは重大なコンプライアンス違反であり、これはたとえ相手が反社会的勢力と知らなかった場合でも同様です。
企業の信用を保つためにも、事前に反社チェックを行う必要があります。

取引の安全性を確保するため

反社会的勢力と取引を行った場合、不当な要求や脅迫をされる可能性があり、経済的・法的な問題に巻き込まれるリスクもあります。
また、反社会的勢力との関係を解消しようとしたことで事件に巻き込まれたケースも存在します。

ステークホルダーとの信頼を維持し、安全な企業活動を行うためには、関係を持つ相手が安全であるかを確認することが重要です。
事前に反社チェックを行うことで、こうしたリスクを回避し、取引の安全性を確保することが可能になります。

関連記事：反社会的勢力と関わりのある企業一覧は存在するのか？見分け方・調べ方も解説

個人・個人事業主に対しての反社チェックのポイント

個人・個人事業主への反社チェックのポイントとして、取引を行う際はもちろんですが、アウトソーシングなどで個人事業主に仕事を依頼する場合も、必ず反社チェックを実施することを推奨します。

個人・個人事業主に対しての反社チェックを行うタイミングと方法を解説します。

個人に対して反社チェックを行うタイミング

個人に対しての反社チェックは、取引前・契約前に実施することが大切です。

というのも、一度契約を結んでしまった相手と契約の解除をするのは容易ではなく、契約の解除を理由に不当な要求をされるケースも多数存在します。
必ず事前に反社チェックを実施しましょう。

関連記事：反社チェックを行うタイミングとは？チェック方法も解説

個人に対して反社チェックを行う方法

個人に対して反社チェックを行う方法は、企業や団体の反社チェックを行う方法と同様です。
主な4つの方法を紹介します。

インターネット記事・新聞記事の検索

インターネット記事や新聞記事などの公知情報を調査する方法です。
インターネット記事は無料で閲覧できるサイトも多く、新聞記事検索のデータベースを利用した場合でも、比較的コストを抑えることができるのがメリットです。

ただし、公知情報は膨大な量の情報があるため、その中で反社チェックに必要なネガティブな情報を絞り込むのにはかなりの時間と手間がかかってしまう点や、正しい情報かどうかの判断力も必要な点がデメリットです。

関連記事：反社チェックの際に検索すべきキーワードとは？その他のチェック方法と注意点も紹介

専門の調査機関に依頼

専門の調査機関では、企業・人物調査のノウハウを駆使して反社チェックをしてもらえるので、自社で調査するよりも精度の高い結果が得られるでしょう。
この方法は1件あたりの費用が高額になるため、すべての取引先について依頼をするのは現実的ではありません。

一般の企業や個人では閲覧することのできない情報を確認できる場合もあるため、詳しい調査が必要な対象者がいれば依頼するとよいでしょう。

行政機関に照会

警察や暴追センター（暴力団追放運動推進センター）など行政機関に相談すると、警察の独自のデータベースを照会することができます。
暴追センターは暴力団排除のための活動を支援する組織で、各都道府県に窓口があります。

自社で調査を行い、反社会的勢力の可能性が高いと判断した場合に、相手情報と調査結果を持って相談に行くとよいでしょう。

反社チェックツールの導入

反社チェックツールは、特定のキーワードやパターンを設定することで、反社会的勢力に関する情報やネガティブ情報などを絞り込んで検出できるツールです。

新聞やWEBニュースなどをデータソースとしているため情報の信用度も高く、効率よく調査を行うことができます。

ツールによって搭載されている機能や利用金額に違いがありますが、人的工数の削減ができることを考えると、比較的コストパフォーマンスの良い方法でしょう。

関連記事：反社の見落としゼロへ！既存顧客への定期的な反社チェックが必要な3つの理由

反社チェックを行う際に注意すべきこと

反社チェックを行う際には以下の2点に注意しましょう。

• 調査内容の証拠を残す
• 継続的に実施する
  
  

それぞれの注意点について詳しく解説します。

調査内容の証拠を残す

反社チェックを行った際に出てくるネガティブ情報のデータは、ニュースや新聞記事の内容であることが多いですが、そういった記事などは削除されてしまう可能性があります。

また、反社チェック時に懸念点があった際、上司や部署内での報告をする必要がありますが、この際も何を参考に懸念があると判断したのかという記事などの証拠を提示するべきでしょう。

どういう検索をして、どういった結果が出てきたのかということを、調査結果として保存しておくとよいでしょう。

継続的に実施する

相手は常に変化しているため、反社チェックは1度実施すればOKではありません。
継続的に実施する必要があります。

取引開始時は問題がなかった相手であっても、知らない間に反社会的勢力になっていたという実例も存在します。
取引相手に関して怪しい噂が流れてきたり、違和感があったりした際には、反社チェックを行うことが大切です。

また、何か問題がなくても、1年に1度など定期的なペースでチェックすることを推奨します。

関連記事：反社チェックに関するルールはある？チェックのタイミングや社内の対応手順も解説

反社チェックツールが選ばれる理由

反社チェックツールは、前述の通り、反社チェックに必要な情報を抽出して検索できるツールです。
効率よくかつ漏れのない反社チェックを実施するために、反社チェックツールを導入する企業が増加しています。

反社チェックツールの魅力

反社チェックツールは、多岐にわたる情報源を調査のデータソースにしているため、情報の信頼度が高いです。
膨大な情報量の中から、反社会的勢力に関連する記事や犯罪ニュース、法令違反など、反社チェックに必要な記事のみを絞り込んでくれるのが最大の魅力です。

インターネットや新聞を調査するよりも、圧倒的に人的作業工数を削減することができるため、人的ミスによる抜け漏れも減少し、反社チェックの精度も上げることができます。

反社チェックツールを選ぶ際ポイント

反社チェックツールには、それぞれ搭載されている機能やシステムの仕組みが異なります。
どのツールを選ぶか迷った際の、ポイントを3つ解説します。

調査範囲が自社コンプライアンスに適合するか

業界によって特別な規制や要件が存在するため、特定の業界で取引を行う企業は、利用する反社チェックツールがその規制に対応した調査ができるかどうかが重要です。
しっかりとした反社チェックを行うためには、広い調査範囲を持つツールを選ぶ必要があります。

特に自社が特別重視する要件や情報がある場合、ツールの調査範囲に含まれているかを確認しましょう。
また、海外と取引がある企業の場合、海外の情報についても網羅しているツールを選ぶことを推奨します。

スクリーニング機能があるか

スクリーニング機能は、特定の基準に合わせた情報を抽出する機能で、反社チェックを効率的に行う上で重要です。
スクリーニング機能がないツールの場合、不要な情報を取り除くためにインターネット検索などで反社チェックを行うのと変わらない手間がかかり、誤情報が混ざってしまう恐れもあります。

また必要な情報を正しく抽出するためにはスクリーニング機能の精度も確認する必要があります。
信頼性の高い反社チェックを行うために、スクリーニング機能の有無とその精度も検討しましょう。

関連記事：反社チェックはどこまで行うべきか 実施対象・方法を解説

API連携ができるか

API連携は、2つ以上の異なるシステムやソフトウェアが情報を共有できる機能で、反社チェックツールと自社で使用しているシステムを連携することができます。

API連携の機能があれば、顧客や取引先を逐一登録してチェックする手間や、情報共有の手間を省略し、効率よく反社チェックを行うことができます。

データの更新頻度を確認

データの更新頻度によって反社チェックの正確性が大幅に変わってきます。

世間が日々変化しているのと同じように、反社会的勢力関連の動きも常に変化しており、新しい情報があったり、問題が発生していたりします。
ツール上のデータが更新されていなければ、現状の正しい反社チェックを行うことはできません。

データが適切な頻度で更新されているかという点も、反社チェックツールを選ぶうえで大切なポイントになります。

関連記事：反社会的勢力と知らずに契約を結んでしまった場合に無効にできる？

ツールによって機能が異なる

反社チェックツールには他にも、取引先を一括で検索できる機能や、記事の証跡をツール上に残せる機能など、さまざまな機能があります。

ツールによって搭載されている機能は異なるため、無料トライアルを利用してみるなどして、自社の反社チェック体制にフィットした反社チェックツールを選ぶとよいでしょう。

まとめ

取引や契約を行う際は、企業や団体だけでなく個人・個人事業主に対しての反社チェックも必ず行いましょう。
チェックの方法は、対象者が企業でも個人でも変わりません。

反社チェックツールを導入する際は、機能や精度を考慮したうえで、自社に合ったツールを選ぶことを推奨します。

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