catch-img

IPO準備企業の経理に求められる役割とは 具体的に行う業務についても解説

自社の株式を公開し、誰でも自由に株の売買ができるようにするためのIPO。
IPOを実現するためには、上場企業としてふさわしい内部体制を構築し、厳しい審査基準をクリアしなければなりません。

数年単位の期間が必要なIPO準備ですが、IPO準備企業の経理にはどのような役割が求められるのでしょうか?

今回は、IPO準備における経理の重要性、経理部門で気をつけるべきポイント、IPO準備企業の経理として働くことのメリットなどについて紹介していきます。

【参考】より深く知るための『オススメ』コラム

👉IPO準備&急成長ベンチャーに必要な「契約管理」 法務体制強化でリスク管理

👉反社チェック(コンプライアンスチェック)を無料で行う方法

👉IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか?上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説

IPO準備に必要な反社チェックが学べるセミナー​​​​​​​

セミナー参加

目次[非表示]

  1. 1.IPO準備で「経理」が重要視される理由とは
    1. 1.1.IPO準備で経理が求められる役割
    2. 1.2.IPO準備で経理が行う具体的な業務とは
      1. 1.2.1.財務諸表の作成
      2. 1.2.2.経理規程の作成
      3. 1.2.3.監査法人への対応
      4. 1.2.4.証券会社による審査への対応
      5. 1.2.5.証券取引所による審査への対応
  2. 2.IPO準備の経理部門強化で気を付けるべきポイント
    1. 2.1.経理業務を内製化する
    2. 2.2.新たな人材を採用する
    3. 2.3.業績の向上を目指す
    4. 2.4.信頼できる監査法人を選定する
    5. 2.5.社内一丸となって取り組む
  3. 3.IPO準備企業で経理として働くメリット・デメリット
  4. 4.IPO準備に必要なのは経理だけじゃない  非財務分野で重要な反社会的勢力の排除とは
  5. 5.まとめ

▶とりあえず参加する【無料で上場基準の反社チェック体制を学ぶ】
反社チェックツールRISKEYESサービスサイト

IPO準備で「経理」が重要視される理由とは

経理部門イメージ

IPOを目指す企業は、上場企業としてふさわしい内部統制を構築するために数年間をかけて準備を行います。
その中で、重要な役割を担うのが経理部門です。
まずは、IPO準備において経理が求められる役割と具体的な業務について見ていきましょう。

参考:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説

  IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説 IPO(上場)準備会社にとって、頭を悩ませるのが法令や上場規約などに設けられている社内体制の構築です。特に不可欠だとされている「内部統制」は、非上場時にはなかった体制を構築しなくてはならないケースも多く見られます。 そこで、上場に向けた内部統制の取り組みについて、問題となりがちな不明点を明らかにしていきます。 RISK EYES


IPO準備で経理が求められる役割

IPOを果たすために通過しなければならない証券取引所の審査では、特に財務面が厳しくチェックされます。
そのため、必然的に経理の果たす役割が大きくなるのです。

IPO準備企業における経理は、投資家に適正な情報を公開するために、正確な財務情報を提供する必要があります。

勘定残高、固定資産台帳、棚卸などが正確であることはもちろん、関係各社の連結範囲を明確にし、適切な会計処理を行うための会計システムを一から作ることが求められるでしょう。

IPO準備で経理が行う具体的な業務とは

具体的な業務内容としては、次のようなものが挙げられます。

  • 財務諸表の作成
  • 経理規程の作成
  • 監査法人への対応
  • 証券会社による審査への対応
  • 証券取引所による審査への対応

1つずつ解説していきます。

財務諸表の作成

決算時の財政状況や1年間の経営成績を示した財務諸表を作成、開示します。
また、非上場企業では作成する必要のなかった決算短信や有価証券報告書といった投資家に向けた書類も開示する必要があります。

経理規程の作成

IPO準備企業には、「内部統制の評価」が義務付けられており、必要な規程がきちんと作成され、規定通りに運用されているかがチェックされます。

経理では、財務・経理に関わる内部統制の構築を行う必要があり、経理規程の作成も担当業務のひとつとなります。

監査法人への対応

IPO準備を進めるためには、直前一期分の財務諸表に対して公認会計士による監査を受ける必要があります。

監査の前にはショートレビューと呼ばれるヒアリングがあり、経理にはショートレビューで抽出された問題点を改善することが求められます。

参考:IPO準備の前段階?自社の経営を上場基準に合わせる「ショートレビュー」とは

  IPO準備の前段階?上場基準に合わせる「ショートレビュー」とは 上場準備の最初の1歩として行われる「ショートレビュー」です。 今回は、監査法人や公認会計士が行う「ショートレビュー」について、ヒアリング内容や行うのに適切な時期、費用や全体の流れまで解説していきます。 RISK EYES


証券会社による審査への対応

最終的な上場申請の前に、証券会社による審査を通過し、推薦を受けなければなりません。
証券会社による審査では、IPO準備企業の事業計画や将来的な見通しがチェックされます。
経理は、この審査にも対応する必要があるのです。

証券取引所による審査への対応

証券会社の審査に通過したら、いよいよ証券取引所への上場申請を行います。
この審査で指摘事項があった場合、短い改善期間内にしっかり対応しなければ上場が延期となってしまうケースもあります。

そのため、経理には指摘事項に正確かつ迅速に対応するという重要な役割が求められます。

参考:日本取引所グループ 新規上場基本情報 上場関係者と役割

  新規上場基本情報 | 日本取引所グループ 日本取引所グループは、東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所等を運営する取引所グループです。 日本取引所グループ

IPO準備の経理部門強化で気を付けるべきポイント

IPO準備における経理強化の注意点

経理部門の強化が鍵となるIPO準備ですが、以下の点を意識することでより円滑に進められるでしょう。

経理業務を内製化する

IPOを果たすためには、経理業務を内製化する必要があります。
内製化は、インサイダー情報の漏洩防止ディスクロージャー体制の整備という観点からも重要だといえるでしょう。

上場するためには、一部をアウトソーシングしたとしても、自社できちんと分析した上で責任を持って情報を開示できる体制が求められています。

会計システムの整備や監査対応などのIPO準備は、通常の経理業務と並行して行わなければなりません。
長期間におよぶ膨大なIPO準備は経理部門にとって大きな負担となるため、内製化にあたっては、通常の経理業務をどれだけ効率化できるかという点も重要なポイントでしょう。

関連記事:IPO準備企業が上場を目指す上で知っておくべきインサイダー取引規制とは

  IPO準備企業が上場を目指す上で知っておくべきインサイダー取引規制とは IPO準備企業は上場した後の変化を事前に知っておく必要があります。 上場後は投資家たちの公正な取引を担保しなければなりません。 投資家たちを守るインサイダー取引に関する規制については役員だけでなく、一般社員、アルバイトやパートにまで関わってくる重要な事柄です。 事前に体制を構築しておくことで、上場後の不安を取り除くことにつながります。 今回はIPO準備企業が上場を目指す上で知っておくべきインサイダー取引規制について解説していきます。 RISK EYES


新たな人材を採用する

IPO準備には専門的な知識が求められるため、IPO準備経験者や上場企業の経理経験者といった即戦力となる人材を採用することが望ましいでしょう。

実際にIPOを実現した企業の多くは、IPO準備の段階で外部から新たな人材を採用しています。
特にIPOを目指す企業では、不正に対する内部牽制として「経理」と「財務」を分離すること、「実施者」と「承認者」の区分を設けることが必要です。

中小企業では経理担当者が1人しかいないというケースもあるため、経験豊富な人材の採用による経理部門の増員は必要不可欠でしょう。

業績の向上を目指す

IPOを果たすためには、継続的な売上の伸びや上場前の黒字化などの条件をクリアする必要があります。
上場非上場にかかわらず企業にとって業績向上は一番の課題ですが、特にIPO準備企業にとっては必ず達成しなければならない目標だといえるでしょう。

大きな損失を防いで業績を伸ばすために、経理では売掛金限度額の基準を設定しておくことも重要です。
取引先ごとに与信限度額を設定し、債権を回収するための管理方法を決めておきましょう。

参考:日本取引所グループ 上場審査基準

  上場審査基準 | 日本取引所グループ 日本取引所グループは、東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所等を運営する取引所グループです。 日本取引所グループ

信頼できる監査法人を選定する

IPOに向けて長期間のパートナーとなる監査法人は、信頼できる監査法人を選ぶことが大切です。
業種・規模が似たような企業でIPOの実績があることや自社のビジネスモデルへの理解があること、人としての相性も基準にして選ぶとよいでしょう。

最近は会計士不足のため、IPO準備を進めたくても監査が受けられない「監査難民」が問題になっています。
IPOを目指すと決意したら、なるべく早めに監査法人の選定に向けて動き出す必要があるでしょう。

関連記事:IPO準備企業にはなぜ監査法人が必要?必要な理由と選び方について解説

  IPO準備企業にはなぜ監査法人が必要? 必要な理由と選び方について解説 IPO準備中、自社の内部管理体制を整える上でも外部機関との連携が大事になります。 その中でも、「監査法人」とはIPO準備前からだけでなく、上場後も付き合っていく重要な機関です。 今回はIPO準備企業にはなぜ監査法人が必要なのか、必要な理由と選び方についても解説していきます。 RISK EYES


社内一丸となって取り組む

会社全体のシステムを構築していかなければならないIPO準備では、経理だけでなく他部署の協力が必要不可欠です。
膨大な業務量となるIPO準備を効率良く進めていくためには、各部署から横断的に精鋭を集めたプロジェクトチームを発足することも有効です。

各部署末端までの情報伝達がスムーズに行われ、IPO準備の業務効率だけでなく、社内一丸となって取り組むというモチベーションも高まるでしょう。

IPO準備においては、社内だけでは解決できない問題が発生するケースも考えられます。
そうした事態に備えて、弁護士や監査法人、金融機関や証券会社、コンサルティング会社など外部の専門家と連携を取れるよう準備を進めておくことも大切です。

IPO準備企業で経理として働くメリット・デメリット

IPO準備企業の経理として働くメリット・デメリット

IPO準備企業の経理として働くことの最大のメリットは、会計システムの構築に携われるということです。

上場企業に経理として入社した場合は、すでに整備された会計システムを使用して経理業務を行いますが、IPO準備企業ではそのシステムを生み出す段階から携われるという強みがあります。

上場までの流れをひと通り経験できるということはIPO準備企業だけのメリットであり、大きな実績となるため、自身のキャリアアップにもつながるでしょう。

しかし、ゼロから会計システムを構築していくということは、同時にデメリットにもなり得ます。
会計システムがまったく整っていない状況から、限られた期間の中で厳しい審査基準をクリアするレベルにまで引き上げなければならないため、IPO準備企業の経理には心身ともに大きな負荷がかかります。

どうしても激務となってしまうため、この点をデメリットだと感じる人も多いでしょう。
だからこそ過酷な状況を乗り越えIPOを果たした暁には、かけがえのない実績と非常に大きな達成感を得られるのではないでしょうか。

さらに、会社が上場した後にストックオプション※の権利を行使すれば、大きな利益を得られる可能性があります。
ストックオプションによる金銭的な報酬もIPO準備企業で働くことのメリットであり、激務を乗り越えるモチベーションのひとつとなるでしょう。

※ストックオプション:あらかじめ定められた価格・数・期間で株式を購入できる権利。ストックオプションを付与された社員は、会社が上場した後に権利を行使して株式を取得し、株価が上がってから売却することで利益を得られる。

参考:IPO準備企業が活用すべきストックオプションとは メリット・デメリットを解説

  IPO準備企業が活用すべきストックオプションとは メリット・デメリットを解説 IPO準備企業とはこれから株式を新規に証券取引所に上場させ、資金調達を目指している企業のことを指します。資金に余裕がないことが多いIPO準備企業でも社員に対して大きな利益を与えることのできる「ストックオプション」という制度があります。 今回はIPO準備を進めている企業が活用するべきストックオプションの内容やメリットやデメリットなどについても解説していきます。 RISK EYES


IPO準備に必要なのは経理だけじゃない  非財務分野で重要な反社会的勢力の排除とは

反社会的勢力のイメージ

IPO準備企業にとって経理と同様に重要な業務として、「反社会的勢力の排除」が挙げられます。
各企業では、取引先・社員・株主に反社会的勢力との関係が疑われる人物や組織がないかをチェックする「反社チェック・コンプライアンスチェック」を行う必要があります。

上場する・しないにかかわらずコンプライアンスの観点からも反社チェック・コンプライアンスチェックを行うことは重要ですが、反社排除体制の構築は上場審査における必須項目となっているため、IPO準備企業では特に重視するべきでしょう。

万が一、反社会的勢力の関係者と取引をしてしまったり、社員に反社会的勢力との関わりが発覚したりした場合は、株価に大きく影響するほか、金融機関からの融資が途絶えて倒産するリスクもあるのです。

やるべきことが膨大にあるIPO準備の中では、反社チェック・コンプライアンスチェックがつい後回しになりがちです。
しかし、反社チェック・コンプライアンスチェックはできるだけ早い段階で着手した方がよいでしょう。

たとえば、上場申請直前に反社チェック・コンプライアンスチェックを行った結果、取引先に反社会的勢力との関係が発覚したとします。
その取引先による売上のシェアが大きければ、取引をやめることで経営状況が変わってくるため、上場を延期せざるを得なくなるかもしれません。

そうした事態を防ぐためにも、できるだけ早い段階で反社チェックの仕組みを構築し、確実に運用していくことが大切です。

反社会的勢力の中には、フロント企業を設立して実態を隠しているような組織も多く、判断が難しいのも現状です。
自社だけでチェックをするのが困難な場合は、調査会社や反社チェックツール・コンプライアンスチェックツール、弁護士といった専門家の手を借りるのもおすすめです。

関連記事:反社チェック・コンプライアンスチェックの具体的な方法とは?

  反社チェック・コンプライアンスチェックの具体的な方法とは? 反社チェック・コンプライアンスチェックとは?具体的にどう調査すればいいのか?といった基礎知識から、反社チェック方法の選び方まで、反社チェックのやり方・ノウハウを解説します。IPO準備企業・反社会的勢力の排除対策をしたい企業向け。 RISK EYES


まとめ

今回は、IPO準備における経理の重要性や役割、気をつけるポイントなどについて紹介しました。
個人的な経営を脱却してIPOを目指すためには、経理・財務を中心とした内部統制の構築が必要不可欠です。

経理の分野に限らずさまざまな業務が発生するため、しっかりとスケジュールを立てて計画的に進めていきましょう。
まずは、即戦力となる人材の採用やプロジェクトチームの結成などから取り組んでみてはいかがでしょうか。

関連記事:IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか?上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説
関連記事:反社会的勢力に対応するためのガイドライン 反社チェックの基準とは?

  IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか? 反社会的勢力排除の体制づくりについて解説 IPO準備企業にとって落とし穴になりかねないのが「反社チェック」です。近年は暴力団排除条例などで暴力団構成員は減少傾向にありますが、その分だけ目立たないようにうまく社会に溶け込んでいます。 例えば、まったく関わりがないと思われるような企業も、裏では反社会的勢力と密接な関係だったり、社員の中に紛れていたりもします。 そうした企業と取引などがあると、上場審査の際に引っかかって、それまでの準備が水の泡になってしまうことがあります。 そのため、IPO準備企業は、必ず反社チェックを行わなければなりません。今回はその方法やポイントなどを紹介いたします。 RISK EYES
  反社会的勢力に対応するためのガイドライン反社チェックの基準とは? 企業が安心して取引していくためには、反社会的勢力への対応が必要不可欠です。 2007年には『企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(企業暴排指針)』が施行されるなど、近年反社会的勢力の排除を強化していく動きがみられています。 今回は、反社会的勢力への対応ガイドラインや反社チェックを実施する基準について解説していきます。 RISK EYES


RISK EYES編集部
RISK EYES編集部
反社チェックツール「RISK EYES」のブログ編集部です。反社関連の情報だけでなく、与信やコンプライアンス全般、IPO準備などについても執筆しています。
▼反社チェックツールを無料で試したい方はこちら
反社チェック無料トライアル
IPO準備向け反社チェック体制構築セミナー

【IPO準備企業向け】
反社チェック体制構築セミナー

反社会的勢力との取引は全ての企業において排除する責務があります。その中でも多くのステークホルダーを抱える上場企業は、より注意深く反社排除に取り組まなければなりません。
 

今回のセミナーでは、上場検討中の企業様や、急成長中の企業様へ向けて、

  • どのように反社チェック体制を構築するか
  • どこまでの深さでチェックすべきか
  • 具体的なチェックフローはどうあるべきか

2015年に株式公開した弊社が自社の事例を踏まえて解説いたします。

※在宅勤務の方は携帯番号をご記入ください。
※半角数字(ハイフンあり)でご記入ください。