役員就任において必要な手続きとは?従業員との違いや手続きのポイントを解説
会社では昇進や昇格がありますが、その中でも「役員就任」は会社にとって非常に重要です。
また、役員変更の際にはさまざまな手続きが必要で、正しい知識を持つことが大切です。
この記事では、役員就任において必要な手続きについて、また従業員と役員の違いや、役員変更の手続きのポイントについても解説します。
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目次[非表示]
- 1.役員とは
- 1.1.代表取締役
- 1.2.取締役
- 1.3.監査役
- 1.4.会計参与
- 1.5.従業員と役員の違いは?
- 1.5.1.従業員兼務役員とするケースもある
- 2.役員就任において必要な手続き
- 2.1.役員就任前に必要な手続き
- 2.2.役員就任後に必要な手続き
- 2.2.1.管掌部門の人事変更
- 2.2.2.引継ぎ作業
- 2.2.3.登記変更
- 2.2.4.取引先への告知やIR
- 2.2.5.会社概要などの変更
- 3.役員就任における手続きを行う際のポイント
- 3.1.変更登記の申請は2週間以内に行う
- 3.2.役員の数が上限を超える場合は定款を変更する
- 3.3.選任日に注意する
- 4.役員就任時に行うべき反社チェック
- 4.1.反社チェックとは
- 4.2.役員就任時に反社チェックが必要な理由
- 4.3.反社チェックの方法
- 5.まとめ
役員とは
そもそも役員とは、会社法では「取締役」「監査役」「会計参与」の3つと定められています。
社員は雇用契約を結び、労働基準法に則って雇われているのに対し、役員は雇用ではなく委任契約を結びます。
また、役員には任期が設けられており、取締役、会計参与は2年、監査役は4年となっています。
役員の任期は、定款に定めることで短縮・延長が可能です。
それぞれの役員について解説します。
代表取締役
代表取締役は、取締役の1つで、会社法上で定められた会社の最高責任者のことです。
取締役の中から選出されますが、代表取締役が1人の場合もあれば、会長や社長など複数名が就任することもあります。
「社長」とは社内での役職名であり、「社長=代表取締役」となることが一般的です。
その他のケースとして、社長は取締役、会長が代表取締役という場合などは、社長は社内のプロジェクトなどを遂行する責任者となりますが、社外の融資については会長が責任者となります。
関連記事:従業員の反社チェックが必要な理由とは?チェックのタイミングと実施すべきサインも解説
取締役
取締役は、株主総会の選任決議で決定し、会社からの委任を受けて選任します。
会社法では、「会社の業務を執行する」と定められており、経営の方針や業務遂行に関する意思決定が適切に進行しているかを監督する責任があります。
また、重要な財産の処分や譲受け、支店などの組織の設置や廃止、重要な支配人の選任・解任など、経営や業務遂行に関する事項も取締役が決定します。
監査役
監査役は、取締役会で候補者を決定し、株主総会で決議し就任します。
株主の視点から会社が健全に運営されているか、取締役の業務に不正などがないかを監視する役割があり、会計監査と業務監査の2つの業務があります。
取締役会が設置されていない会社や、会計参与を置く場合は、監査役を設置する義務はありません。
会計参与
会計参与とは、会社における会計の専門家です。
取締役と共同して計算書類を作成する役割を担っており、税理士や公認会計士、監査法人などが就任します。
株主や債権者の保護、利便に資することを目的としています。
また、会計参与の設置義務はなく、監査役が兼務することもあります。
関連記事:雇用形態とは?保険の適用範囲や管理のポイントを解説
従業員と役員の違いは?
従業員と役員の最も大きな違いは、前述の通り会社との契約形態です。
従業員は雇用契約を締結、役員は委任契約を締結します。
そのため、役員は労働基準法で定められている「労働者」には当てはまらないため、雇用保険や労災保険などが適用されません。
契約の対価についても、従業員は給与を支払われますが、役員の場合は株主総会で決定した役員報酬が支払われます。
また、会社内での責任についても違いがあります。
従業員の場合は自身が違法行為を行った際には責任追及されますが、役員の場合、他の取締役や監査役の違法行為についても責任追及される可能性があります。
従業員兼務役員とするケースもある
従業員兼務役員とは、その名の通り「従業員」と「役員」の両方の立場を持つ立場のことです。
従業員としての部分は雇用契約を結び、役員としての部分は委任契約を結びます。
使用人給与の方が役員報酬より大きい場合、雇用保険が適用されるというメリットがあります。
代表取締役のほかにも監査役、税務上のみなし役員となっている使用人や、副社長・専務・常務など職制上の地位を有する役員などは従業員兼務役員になることはできません。
関連記事:IPO準備企業が整備すべき人事・労務とは 懸念点についても解説
役員就任において必要な手続き
今まで役員ではなかった人が新しく役員になることを「新任」と言いますが、新任する大半は取締役です。
取締役はほかの役員に比べ人数が多く、会社の体制変更や業績に直結することから変更の頻度が多くなるという理由です。
どんな役員でも新しく就任することはありますが、就任にあたって選任方法や登記申請が法律で定められているのは、取締役、監査役、会計参与のみです。
法律で定められている手続きは、次のステップを経て行われます。
- 株主総会の開催、役員選任の決議
- 株主総会議事録や、候補者からの就任承諾書、印鑑証明書などの準備
- 取締役会の実施、議事録の準備
- 役員変更の登記申請、登記簿の繁栄
役員就任自体に必要な手続きは上記の通りですが、実務上さまざまな手続きが必要です。
新任の役員就任前後に必要な手続きについて解説します。
役員就任前に必要な手続き
役員就任前に必要な手続きは、組織内の合意形成がほとんどです。
特に上場企業の場合、役員変更が株価に影響する可能性もあるため、極めて限られた関係の中で進行することが多いです。
対象者の決定
役員の定員は変わらないため、就任する人物を選任するとともに、退任や辞任する役員を決定する必要があります。
まずはそれぞれの対象者を決定します。
役員体制の確認
役員を変更した後の役員体制をイメージし、事業計画や人選といった意味で問題がないかを確認します。
特に、経営再建の途中や複数の会社が合併したような会社の場合、役員体制は注目されることが多く、社内外へのメッセージという面からも重要となります。
対象者への内示
内示なく突然役員に就任することはほとんどありません。
事前の準備期間を見据えて、対象者に内示を行いましょう。
関連記事:反社会的勢力に該当する人物の家族・親族との取引や雇用は可能なのか?
役員就任後に必要な手続き
役員就任後の手続きは、外部に向けての告知のような意味を持つものが多いです。
それぞれ解説します。
管掌部門の人事変更
新しく役員就任することに伴って、部長や課長などの役職が変更されるケースがあります。
そのほとんどが、役員就任と同時のタイミングです。
引継ぎ作業
役員が直接実務を行うことは少ないですが、最低限引き継ぐことが必要です。
前任の役員との引継ぎというよりは、部門の社員が業務に支障をきたさないように準備し、引継ぐことが大切です。
登記変更
新任の役員が就任する場合、登記の変更が必要となります。
就任するポジションによって必要な書類が異なりますが、基本的には以下の書類が必要です。
- 株式会社変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 本人確認書類
- 委任
変更登記の申請方法は、窓口、郵送、オンラインの3つがあります。
オンライン申請の場合、以下サイトから申請者情報の登録後、必要事項の記入と電子署名を行います。
参考:法務局「株式会社の役員変更の登記をしたい方(オンライン申請)」
取引先への告知やIR
役員の変更があった際は、取引先への告知やIRが必要です。
IRとは、企業が株主や投資家へ自社の経営状況や財務状況などの情報を提供する活動のことです。
役員体制が変更される前に、その体制と変更する日を事前に告知する場合もありますが、事前告知をしない場合、役員変更が公表され次第、取引先に案内を行いましょう。
会社概要などの変更
WEBサイトの会社概要や組織図、名刺の変更なども役員就任後に必要な手続きです。
関連記事:半グレとは?暴力団との境界線や刑罰対象について解説
役員就任における手続きを行う際のポイント
役員就任前後にはさまざまな手続きが必要になります。
その際のポイントを3つ紹介します。
変更登記の申請は2週間以内に行う
取締役・監査役の役員変更登記は、就任から2週間以内に手続きする必要があります。
申請を忘れてしまうと、裁判所から100万円以下の過料を科せられる可能性があるほか、役員変更登記を忘れて12年が経過した場合、実態が確認できない会社とみなされ、登記官によって解散の登記が行われることもあるため、必ず期限内に申請を行いましょう。
役員の数が上限を超える場合は定款を変更する
取締役会を設置していない会社の場合、1名以上取締役を設置する義務があります。
また、取締役会を設置している会社の場合は、3名以上の取締役設置が必要です。
ほかにも、資本金5億円以上または負債額200万円以上の会社の場合、社外監査役を半数以上、常勤監査役を1名以上の合計3名以上、監査役を設置するように定められています。
ところが、役員の人数の上限は会社法では定めがなく、会社の定款で定める必要があります。
定款の人数を超えて役員を配置する場合には、定款の変更を行いましょう。
選任日に注意する
役員の任期は取締役・会計参与は2年、監査役は4年と定められていますが、選任日によっては1年の任期が約1年となってしまうことがあります。
例えば、2024年3月30日に選任した場合、その翌日である3月31日から任期が起算されます。
任期は「起算日を含めた2年以内の最後の事業年度に関する定時株主総会が終わるまで」となります。
4月1日が事業年度の会社の場合、2025年5~6月に開催される株主総会までの任期となるため、実質約1年で任期満了となってしまうため注意が必要です。
関連記事:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説
役員就任時に行うべき反社チェック
役員就任時には、必ず行うべきなのが反社チェックです。
採用の際や定期的にチェックを行っている場合でも、役員に選任された時点で改めて実施することを推奨します。
反社チェックとは
反社チェックとは、チェック対象者が「反社会的勢力ではないか」「反社会的勢力と関与がないか」を調べることです。
従業員に対しては、まず採用時に行い、その後は年に1度など定期的なチェックを行うのが一般的です。
関連記事:【2024年最新】反社チェック・コンプライアンスチェックの具体的な方法とは?
役員就任時に反社チェックが必要な理由
以前に反社チェックを行っているのだから必要ないと思う方もいるでしょう。
しかし、反社会的勢力は常に変化し、年々巧妙化しています。
以前は問題のなかった人物が反社会的勢力と関わっていたり、気づかぬうちに反社会的勢力になってしまったりするケースも存在します。
役員は、会社を代表する「会社の顔」です。
その中の人物が反社会的勢力に関連すると発覚すれば、ステークホルダーからの信頼は失墜し、世間からも批判が集まるでしょう。
役員に選任されるような人物は信頼している相手であることも多いでしょうが、会社を守るためにも油断せず、必ず反社チェックを行いましょう。
反社チェックの方法
反社チェックは、自社で行う方法と専門の調査会社に依頼する方法があります。
専門の調査会社に依頼する場合、高精度な結果を得ることができますが、1件あたりの費用が高額であるというデメリットがあります。
自社である程度調べて、怪しいと思うような情報が出てきたら依頼するなど、ある程度人数を絞って依頼するのが良いでしょう。
自社で調査する場合、主に以下の3つの方法があります
- インターネットや新聞記事などの公知情報を調べる
- 警察・暴追センターに相談する
- 反社チェックツールを導入する
自社での調査は業務的な手間と時間がかかってしまうことが1番マイナスなポイントです。
そんな中でも反社チェックツールは、検索にかかるさまざまな手間を省き、精度の高いチェックを行うことができるのが特長です。
関連記事:反社チェックを自動化する方法はある?ツールの機能や注意点を解説
まとめ
役員は取締役、監査役、会計参与の3種類があります。
取締役の中でも会社の最高責任者となる存在のことを指します。
役員就任の前後にはさまざまな手続きが必要であるだけでなく、期限が設けられているものもあります。
事前に把握して、抜け漏れのないようにしましょう。
また会社を守るために、役員就任の前には必ず反社チェックを行いましょう。
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