経営戦略とは?目的と段階を解説 知っておくべきキーワードも紹介
市場競争が国境を越えて激化する現代において、各企業は持続的な成長を目指して独自の経営戦略を模索しています。
自社の目標やビジョンと経営資源を考慮して、経営戦略をどうブラッシュアップしていくかは、企業の今後に直結し、経営者にかかっています。
この記事では、経営戦略とは何か、その目的と経営戦略の3段階について解説します。
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目次[非表示]
- 1.経営戦略とは
- 2.経営戦略の3段階
- 2.1.企業戦略
- 2.1.1.経営理念やビジョンの策定
- 2.1.2.事業領域の定義と資源の分配
- 2.1.3.グループ戦略の策定
- 2.2.事業戦略
- 2.2.1.市場や競合、自社の分析
- 2.2.2.ビジネスモデルの設定
- 2.2.3.ビジネスプロセスの設定
- 2.3.機能戦略
- 3.経営戦略を理解するうえで知っておくべきキーワード
- 3.1.経営理念
- 3.2.日本的経営
- 3.3.コアコンピタンス
- 3.4.企業DNA
- 3.5.イノベーション
- 3.6.サステナビリティ
- 3.7.インテグリティ
- 3.8.アントレプレナーシップ
- 3.9.人事デューデリジェンス
- 3.10.アクティビティ・システム
- 3.11.デジタルトランスフォーメーション
- 4.経営戦略の学び方
- 4.1.専門書やケーススタディを研究する
- 4.2.オンラインコースやセミナーに参加する
- 4.3.インターンシップや実務経験を積む
- 5.経営戦略と人事戦略を連動させるべき理由
- 6.まとめ
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経営戦略とは
経営戦略とは、企業の経営目標やビジョンを達成するための方針や計画のことです。
企業を取り巻く環境は常に変化しています。
市場で生き残るためには、「ヒト・モノ・カネ」というという限られた経営資源を、適切に活用することが非常に重要です。
また、企業が掲げる目標や目的に応じて、選択、分配していく必要があります。
こうした企業活動の軸となる指針や指標、方策を実現する体制構築なども「経営戦略」に含まれます。
経営戦略と似た言葉との違い
経営戦略としばしば一緒に使われる言葉がいくつかあります。
似たような言葉が多いように感じますが、厳密には違いがあります。
それぞれ解説します。
経営戦術との違い
戦術とは、分かりやすく説明すると「戦略を達成するための具体的なアクションプラン」です。
目的があり、目的を達成するための戦略があり、戦略を達成するための戦術があるという風に考えると理解しやすいでしょう。
企業組織において、経営戦術だけでは従業員が1つの方向に向かって進むことができません。
企業・従業員の進むべき方向性などを経営戦略で考え、それを具体的にどういったことを実行するのかというのが経営戦術です。
経営計画との違い
経営計画とは、経営全体の具体的な計画のことです。
単一の事業の場合には事業計画と呼ばれ、どういった道筋で目標を設定・達成するかを考えたものです。
経営戦略が目的やビジョンを達成するための方針であるのに対して、経営計画は経営戦略を実現するための計画ということです。
戦略経営との違い
戦略経営は、「戦略的な経営を行うこと」を意味しており、戦略的経営とも呼ばれます。
自社が市場においてどのようなポジションなのかを明確にし、戦略の策定や実行、評価を行います。
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経営戦略の目的
企業にはそれぞれ、強みや弱み、特性があります。
経営者はそれらを理解し、組織改革や事業の方向性を決定しなければいけません。
そして市場での戦い方を考える必要があり、そのためにやるべきことを、どのような優先順位で実行すべきかを明らかにすることが求められます。
企業・従業員を向かうべき場所に向かわせるために、経営戦略が必要になるということです。
経営戦略の必要性
ITやAIの普及、グローバル化の拡大、ニーズの多様化など、現代は目まぐるしく変化しています。
こうした時代において、企業が10年、20年と生き残るために、どのように成長していくかというプランニングが非常に重要になっています。
そのためにも、経営者は自社の強みや特性を理解し、組織改革や事業の方向性を、スピーディーにかつ大胆に、決定していくことが必要です。
そういった点からも、経営戦略の必要性が高まっていると言えます。
関連記事:スタートアップに求められるIPO準備で早く取り組むべき組織体制の整備とは
経営戦略の3段階
経営戦略には、会社全体的な戦略である「企業戦略」、個別の事業ごとの「事業戦略」、企業の機能別の「機能戦略」の3段階のレベルがあります。
それぞれについて解説します。
企業戦略
企業戦略とは、どのような事業領域の中で活動していくのかを企業全体として設定し、どのようなポジションで成長を目指していくのかを決定する、中核となる戦略です。
複数事業を展開している企業の場合、各事業がどのような道筋で成功し、事業間ではどのような相乗効果を生み出すのかということを検討することで、企業全体の成長を現実化できます。
企業戦略には、例として以下のようなものがあります。
経営理念やビジョンの策定
有効な経営戦略を策定、実行するためには、経営理念やビジョンが明確になっていることが大切です。
自社の経営理念やビジョンが曖昧な場合、企業として目指す報告も不明瞭になってしまいます。
企業において大切にしたいもの、考え方、価値観などを言語化して、全社的に浸透させるような施策を練りましょう。
事業領域の定義と資源の分配
企業全体の戦略を考えるうえで、どの事業領域で活動するのかを決定します。
また、決定した事業領域の中で、どのような立ち位置で価値を提供し、顧客を獲得するのかなど、事業領域での定義を明確にしましょう。
そして、自社の経営資源をどのように分配するかも重要なポイントです。
どの部署にどのような人を何人配置して、どのように資金分配するのかということを決定し、活動を行いやすい体制を整備しましょう。
グループ戦略の策定
グループ会社を持つ企業の場合、グループ全体の経営戦略を検討する必要があります。
それぞれの事業領域や目標を定め、経営資源の配置を行わなければなりません。
また、グループが独立しすぎず、相乗効果をもたらすようなプランについても考えるのがポイントです。
グループが協力することで、より大きな成果を出すことが期待できます。
関連記事:IPO準備企業における内部統制への対応方法とは 体制構築のステップも解説
事業戦略
事業戦略とは、それぞれの事業分野がどのような活動を行っていくのかを考えることです。
個別の事業分野として、どんな顧客や競合が存在し、自社はどのような価値を見出せるのかを検討します。
経営戦略よりも絞った対象への戦略であるため、マーケティングや組織作りについても、より特定の範囲で考慮できます。
事業戦略には、例として以下のようなものがあります。
市場や競合、自社の分析
事業戦略を策定する際には、自社の価値を明確にする必要があります。
また、この時に市場や顧客、競合についても分析することで、自社の強みや弱み、市場での立ち位置をより明確にすることができます。
ビジネスモデルの設定
どのように顧客から選ばれ、収益を出すかなどのビジネスモデルを設定することも、事業戦略を考える上で必要となります。
他社にはない付加価値をつけるのか、それとも競合よりも安く販売するのかなど、自社の商品・サービスの在り方を検討します。
また、どの部分で収益が発生するのかなど収益の構造についても考え、事業のコスト・収益のモデルを決定しましょう。
ビジネスプロセスの設定
事業戦略においては、顧客に対して自社の価値をどのような流れで届けるのか、ビジネスプロセスも考慮しなければなりません。
「企画・開発」→「購買・制作」→「販売」などプロセスを区切って、それぞれ重要なポイントを整理しましょう。
関連記事:ベンチャーが上場を目指すメリットとは IPO準備における内部統制強化についても解説
機能戦略
機能戦略は、事業を推進していくために、具体的にどのような機能をもって運営していくのかを策定することです。
営業や経理、生産など、企業内のそれぞれの機能に対して考えます。
機能戦略は、企業戦略や事業戦略よりも短期的な目的を持つことが多くなりますが、その他の戦略と相互性を持つことが重要です。
具体例として以下のようなものがあります。
- 営業戦略
- マーケティング戦略
- 人事戦略
- 財務戦略
- 生産戦略
関連記事:人事制度とは?3本柱とその役割、制度構築のフローを解説
経営戦略を理解するうえで知っておくべきキーワード
経営戦略を適切に考えるためには、関連するキーワードについて理解を深めることが必要です。
経営戦略に関連する代表的なキーワードを紹介します。
経営理念
経営理念は聞き馴染みのある言葉ですが、言語化すると、「企業が事業を行うにあたり、経営の基本的な在り方を表明したもの」です。
経営者が大切にしている考え方や価値観、信念などを明文化したもので、企業の行動指針となります。
日本的経営
日本的経営とは、1970~80年代に大幅な経済成長を遂げた日本の大企業を中心とした、日本独自の経営の仕組みのことです。
特徴として、終身雇用や年功序列、企業別労働組合などがありますが、1990年代以降は情報化社会となった影響から、これらの仕組みが成立しなくなりました。
現在では、中途採用や多様な働き方が増加するなど、日本的経営の良い部分を残しつつ、新たな人材活用の仕組みが各企業で検討されています。
関連記事:半グレと増加する闇バイト 新卒や若者にも必要な反社チェック
コアコンピタンス
コアコンピタンスとは、企業活動において「他社には真似できない中核となる能力」のことです。
以下の3つの条件を満たす「自社能力」が該当します。
- 顧客に何らかの利益をもたらす能力
- 競合他社が真似しづらい商品を提供する能力
- 複数の市場に推進できる能力
企業DNA
企業DNAは、それぞれの企業において長期間にわたって組織や構成員によって共有され、年月の中で培われてきたとなる価値観や考え方のことです。
企業遺伝子と呼ばれることもあり、大切に伝達していくことで、その企業らしさを強めることができます。
イノベーション
イノベーションは日本語で「革新」という意味を持っており、ビジネスでは、それまでにない斬新なアイデアによる製品・サービスの開発や、新しい切り口によるビジネスモデルの変化などを指します。
イノベーションはこれまでと大幅に異なる価値を生み出し、事業の安定化や持続的な成長を実現できます。
そのため、経営戦略を策定する際、イノベーションが起こりやすいような組織・体制づくりを考える企業も多いです。
サステナビリティ
サステナビリティとは、「継続的」「持続可能な」といった意味を持つ言葉で、近年ではサステナブルな経営への注目度が高まっており、世界的にも浸透しているキーワードの1つです。
インテグリティ
インテグリティは「誠実さ」「真摯さ」「高潔さ」を意味する言葉で、ビジネスにおいては、組織のリーダーやマネジメントを行う人に対して求められる資質や価値観のことです。
関連記事:IPO準備時に必要な社内規程(社内規定)の整備とは 作成の注意点を具体的に解説
アントレプレナーシップ
アントレプレナーシップとは、新規事業の立ち上げや新しいビジネスに挑戦する意欲が高い状態のことを指し、「起業家精神」「企業家精神」とも呼ばれています。
人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスとは、企業が投資やM&Aなどの取引を検討する際、コストやリスクを特定・整理し、買収後の経営について調査・検証する作業のことです。
近年の日本ではM&Aを経営手法とする企業が増加したことから、人事デューデリジェンスが必要となりました。
アクティビティ・システム
アクティビティ・システムとは、企業のビジネスにおける相互の繋がりを図示することです。
デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーションはDXと呼ばれ、デジタル技術を活用した、企業や組織のビジネスモデルを根本的に変革し、新たな価値を創造するプロセスのことです。
情報化推進機構では、「デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、顧客体験を改善することで持続可能な成長を目指す戦略」と定義されています。
関連記事:SNS時代のレピュテーションリスク対策とは?企業への影響と炎上の種類も解説
経営戦略の学び方
経営戦略を学ぶ方法はさまざまありますが、中でも効果的な方法を3つ解説します。
経営戦略の理論を学ぶことで、実際のビジネスシーンにおいて応用能力を高めることにつながります。
専門書やケーススタディを研究する
経営戦略に関する専門書籍はたくさん出版されており、倫理的な基盤となる知識を学ぶことができます。
また、ハーバード・ビジネス・スクールが出版するようなケーススタディを読むことで、実際のビジネスにおける戦略の立て方とその影響を、具体的に解釈できます。
オンラインコースやセミナーに参加する
日本だけでなく、世界中のいくつもの大学や専門機関で、オンラインコースの提供やセミナーが開催されています。
実務経験が豊富な講師によるレクチャーがあり、質疑応答やディスカッションができるため、より深い理解を得ることができます。
インターンシップや実務経験を積む
企業でインターンシップを行ったり、経営戦略に関連する職に就いたりすることで、実務経験を重ねることができます。
書籍やセミナーなどでは得られない貴重な経験ができ、意思決定スキルや戦略的思考を磨くことができます。
関連記事:IPO準備企業が上場までのフェーズごとにやるべきこと
経営戦略と人事戦略を連動させるべき理由
経営戦略を策定するだけでは、誰が何をするかという実践的なプランが明確になりません。
そこで、経営戦略に基づき各部門で事業計画が作成され、従業員の業務計画を設定する仕組みが人事管理の中に組み込まれます。
経営戦略と人事戦略を連動させることで、経営資源の1つである「ヒト」を最大限に活用することが可能になります。
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まとめ
企業の成長・発展を持続的に推進するためには、経営戦略の策定は必要不可欠です。
経営理念やビジョンをしっかりと明確にし、経営戦略に反映させることが、市場競争に打ち勝てるような企業づくりにつながります。
経営戦略は、書籍やオンラインセミナーなど、気軽に学べる方法もたくさんあります。
理解を深め、同業他社や競合に負けない企業にするための経営戦略を策定することが大切です。
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