企業のリスクマネジメントとは?リスクの種類や基本プロセス・手法をわかりやすく解説
社会情勢や環境が急速に変化し、企業内外にさまざまなリスクが顕在化する時代において、リスクマネジメントの重要性が高まっています。
この記事では、企業のリスクマネジメントとはどういったものなのか、またリスクの種類や、リスクマネジメントの基本プロセス・手法についてわかりやすく解説します。
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目次[非表示]
- 1.リスクマネジメントとは
- 1.1.リスクマネジメントと関連用語の違い
- 1.1.1.リスクアセスメント
- 1.1.2.リスクヘッジ
- 1.1.3.クライシスマネジメント
- 1.1.4.危機管理
- 2.リスクマネジメントの目的と必要性
- 3.企業を取り巻くリスク
- 4.リスクマネジメントのプロセスと手法
- 4.1.リスクマネジメントの基本プロセス
- 4.1.1.コミュニケーションと協議
- 4.1.2.適用範囲や状況、基準の確定
- 4.1.3.リスクアセスメント
- 4.1.4.リスク対応
- 4.1.5.モニタリングとレビュー
- 4.2.リスクマネジメントの手法
- 5.リスクマネジメントに取り入れるべき反社チェック
- 6.まとめ
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、企業経営において起こりうるリスクを想定し、そうした事態への対策を立てることで、損失を最小限に抑える取り組みのことです。
ビジネスにおけるリスクとは、企業活動に悪影響を及ぼすすべての要因を指します。
新技術が登場することで不確定要素が生まれることや、DXによってデジタル化することでサイバー犯罪の被害を受ける可能性が生まれることもリスクの1つです。
また、グローバル化が進み、海外進出や海外企業と取引を行うと、国・地域の文化や価値観、法令の違いによるリスクもあるでしょう。
リスクマネジメントを行う際は、このような事業活動において発生する悪影響を予測し、全体の方向性の調整や、リスクへの対処策を検討する必要があります。
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リスクマネジメントと関連用語の違い
リスクマネジメントと一緒に使われることの多い、関連用語との違いを解説します。
リスクアセスメント
リスクアセスメントとは、リスクマネジメントにおいてリスクを特定、分析し、評価するといった段階を指す言葉です。
つまり、リスクマネジメントのプロセスの一環であり、リスクアセスメントを通じて適切なリスク管理が可能になります。
リスクヘッジ
リスクマネジメントが、リスクの分析や対策などの管理体制を整備する全体プロセスのことであるのに対し、リスクヘッジはリスク発生に備えた方策を考え、実施することを指します。
クライシスマネジメント
クライシスマネジメントとは、企業にあらかじめ用意されているマニュアルでは対応できないような緊急事態に備えることです。
リスクマネジメントと似た意味を持ちますが、クライシスマネジメントは危機的状況を前提としているのが特徴です。
危機管理
危機管理は、起こってしまったトラブルや問題を、それ以上悪化しないようにすることです。
地震が発生したら、二次災害を避けるために従業員を安全な場所へ移動させたり、SNS投稿が炎上したら、謝罪文をすぐに出したりすることが危機管理に該当します。
関連記事:密接交際者の基準とリスク 反社会的勢力の関係者にならないために知っておくべきこと
リスクマネジメントの目的と必要性
リスクマネジメントの最大の目的は、企業経営における損失を最小限に抑えることです。
具体的な例として、「外部に委託していた検査結果の数値に改ざんがあったと報告を受けた」とします。
あらかじめリスクを検討していない場合、事実確認に時間がかかり、さらに問題が拡大したり、世間へ情報が洩れて、不正を隠していた企業として信頼を失ったりする可能性があります。
また、意思決定が遅延することで、不良である商品が一般流通してから問題が発覚することが考えられます。
その場合、商品・製品によって人々の健康に悪影響を与えたり、家電製品の場合火災つながったり、大きな問題となってしまうこともあります。
このような状況において、リスクマネジメントを適切に行っていれば、迅速な対応を行うことが可能になります。
世間への公表内容や、対応内容の誠実さなどから、顧客への被害を最小限に抑えられ、自社の損失を抑えることにつながります。
社会の情勢や価値観の変化、技術の発展、自然災害や感染症など、ビジネスを取り巻く環境は常に変化しています。
そもそもリスクを予測することが難しい状況において、対策を取らないままでは、高額な損害賠償の支払いやサイバー犯罪による被害など、大きな損失が発生する可能性があります。
変化の激しい時代の中で、生き残り、価値を高めるためにも、リスクマネジメントは不可欠なものです。
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企業を取り巻くリスク
企業を取り巻くリスクは、大きく「純粋リスク」と「投機的リスク」の2つに分けることができます。
それぞれについて解説します。
純粋リスク
純粋リスクは、思いがけない事故や人為的なミスなどによって起こるリスクのことで、「マイナスリスク」とも呼ばれています。
純粋リスクの場合、企業は損失のみを被ってしまいます。
以下が純粋リスクの種類と具体例です。
財産リスク |
地震や台風などの自然災害や、盗難や詐欺のような人的災害など |
費用・利益リスク |
取引先の倒産や施設の閉鎖による収益減少や費用の増加など |
人的リスク |
従業員の病気や事故など |
損害賠償リスク |
不注意や過失による法的な損害賠償責任 |
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投機的リスク
投機的リスクとは、経済状況や政治など環境の変化によって発生するリスクのことで、「ビジネスリスク」とも呼ばれています。
投機的リスクの場合、企業は損失を受ける場合もあれば、結果的に利益を得られることもあります。
以下が投機的リスクの種類と具体例です。
経済的情勢変動リスク |
景気や為替、金利などの変動、デリバティブや投機損失 |
政治的情勢変動リスク |
政策変更や消費者動向の変化、条例の改正、規制の緩和や強化など |
法的規制の変更に関するリスク |
税制法の改正、法律や条例の改正など |
技術的情勢変動リスク |
新発明や技術革新、特許 |
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リスクマネジメントのプロセスと手法
企業経営を行う際に発生するリスクの内容やその大きさは、状況によってさまざま存在します。
そして、企業の規模や事業環境によって、その対応策も異なるため、1つの方法を準備しておけばすべてに適応できるわけではありません。
企業がリスクマネジメントを行うための、基本的なリスクマネジメントのプロセスと手法について解説します。
リスクマネジメントの基本プロセス
リスクマネジメントの手順をそれぞれ詳しく解説します。
コミュニケーションと協議
まずは自社が持つリスクの明確化や、回避方法を検討するための協議を行います。
特に、リスクマネジメントを仕切る責任者と、関係者同士のコミュニケーションは非常に重要です。
企業全体としてリスクマネジメントを理解できるような環境づくりを行いましょう。
適用範囲や状況、基準の確定
協議が終わったら、適用する範囲と状況、基準を決定します。
1つの企業の中でも、部署によって発生するリスクに違いがあり、すべてのリスクに対して、人員や予算をどれだけでも割けるわけではありません。
限られたリソースを最適に分配しながら、各部署の担当者同士で連携することが大切です。
リスクアセスメント
次のステップとして、リスクアセスメント実施します。
リスクアセスメントはリスクの特定、分析、評価の3つのステップで構成されています。
それぞれの手順を詳しく解説します。
- 【リスクの特定】企業・部署にとって不利益なリスクに加えて、利益をもたらす事象を特定し、書き出します
- 【リスク分析】リスク特定によって認識したリスクを分析します。
分析手法はいくつかありますが、一般的にはリスクの起こりやすさ、その性質や大きさ、結果、複雑さ、結合性などの観点から判断します。
- 【リスク評価】リスク分析の結果をもとに、何かしらの措置をとるべきかを判断したり、対応の優先順位を決定したりすることです。
リスク回避を確実なものにするために、リスク評価は必要不可欠です。
リスク対応
リストアップしたリスクに対して、予防策を講じます。
そしてその後も、定期的に様子を確認し、必要に応じて追加対応を実施します。
モニタリングとレビュー
リスク対策についてのモニタリングとレビューを行います。
リスクは頻繁に発生する可能性があるものから、ほとんど発生しないものなど頻度の違いがあります。
また、発生した際の損失の規模についてもさまざまなものがあります。
そのため、定期的にモニタリングを行い、リスクの評価と対策の改善を繰り返しましょう。
関連記事:与信リスクを回避するために必要な取り組みとは?与信管理のポイントも解説
リスクマネジメントの手法
リスクへの対応方針を策定する手法は、大きく分けて4種類あります。
これらの基本のやり方を取得することで、複雑なケースにも応用して対応することが可能になります。
それぞれについて解説します。
リスクの回避
リスクの発生要因を無くすことです。
例:・想定されるリスクが大きい場合、事業や業務をやめる
・災害の多い地域や治安の悪い地域から事業所・工場を移転する
リスクの低減
リスクが発生する可能性を下げることです。
例:グローバル展開する企業では、各国の法令に抵触しないよう、海外赴任する従業員に対して教育を実施する
リスクの移転
リスク発生時の影響を他の方法でカバーすることです。
例:・発生する可能性のあるリスクに備えて保険に加入し、リスク発生時には損失を充当する
・業務の一部を外部委託し、リスク発生の際は契約により損害賠償などの形でリスクを移転する
リスクの受容
リスクを認識するのみで、対策を行わないことです。
例:発生頻度が低く、リスク発生時の影響が小さい場合に、そのリスクの発生を認識する
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リスクマネジメントに取り入れるべき反社チェック
企業に存在するリスクは常に変化し、企業はそれに合わせてリスク対策を行っています。
事業内容や企業規模によって、取り組む対策やリスクマネジメントはさまざまで、適切な対応ができていない企業もあるでしょう。
受容してよいリスクもありますが、リスクマネジメントとして必ず取り入れるべきなのが反社チェックです。
反社チェックは、チェック対象者が「反社会的勢力と関与がないか」を調査することで、自社の従業員や取引先、株主に対して実施します。
政府指針や暴排条例が出されるなど、反社会的勢力排除の動きが強まり、企業にもその取り組みが求められています。
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反社会的勢力は巧妙に一般企業や一般人に近づいてくるため、知らない間に関係を持っていたというケースも珍しくありません。
現代において、反社会的勢力はもちろん、反社会的勢力と関係を持つ企業や人物と関わることは、自社にとって相当なリスクです。
まだ反社チェックを取り入れていない企業は、導入を検討することを推奨します。
関連記事:反社チェックに関するルールはある?チェックのタイミングや社内の対応手順も解説
まとめ
リスクマネジメントは、企業経営におけるリスクによる損失を最小限に抑えるためのプロセスのことで、変化が激しい現代で企業が生き残るためには必要不可欠です。
企業を取り巻くリスクは多岐に渡るため、リスクマネジメントのプロセスを自社に落とし込み、適切な対応を行う必要があります。
また、リスクマネジメントの1つとして、必ず反社チェックを取り入れましょう。
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