CFO(最高財務責任者)とは?役割と業務内容、CFO人材採用のポイントについて解説
多くの経営者は、売上や利益の向上、資金繰りの管理、自社サービスの競合他社との差別化、従業員のモチベーション向上など様々な経営課題を抱えています。
これらを経営者1人で対処することは難しく、役員や従業員が役割を分担しながら、組織として経営を行う必要があります。
近年は日本でも、欧米型の「C×O」経営体制を敷く企業が増加しており、CFOは日本企業でも優先的に設置されるポジションです。
この記事では、CFO(最高財務責任者)の役割と業務内容、またCFO人材を採用する際のポイントや方法についても解説します。
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目次[非表示]
- 1.CFOとは
- 1.1.財務部長・経理部長との違い
- 1.2.CEO・COO・CMOとの違い
- 2.CFOが必要な理由
- 2.1.資本市場での資金調達
- 2.2.キャッシュフロー経営の実現
- 2.3.企業会計における透明性向上
- 2.4.企業価値向上にむけた事業再編
- 3.CFOの役割と主な業務内容
- 3.1.CFOの役割
- 3.2.CFOの主な業務内容
- 3.2.1.資金調達
- 3.2.2.財務戦略の立案・実行
- 3.2.3.経営管理体制の整備
- 3.2.4.業績管理
- 3.2.5.IR活動
- 4.CFOに求められる知識・スキル
- 5.CFO人材の採用
- 5.1.CFO人材を採用する際のポイント
- 5.2.CFO人材の採用方法
- 5.2.1.内部昇格
- 5.2.2.外部から招へい
- 5.2.3.外部コンサルタントの活用
- 6.まとめ
CFOとは
CFOは、「Chief Financial Officer」の頭文字を取った略語で、「最高財務責任者」と訳されます。
CEO、COOとともに経営の意思決定を行う重要な職務で、企業の財務・経理戦略の立案、実行、監督を行います。
CFOはCEOに次ぐナンバー2のような地位を確立しつつあり、ベンチャー企業など規模が小さい組織の場合、組織開発まで担うこともあります。
財務部長・経理部長との違い
CFOは、資本効率をあげて企業価値を最大化することを使命としており、経営陣の1人として財務戦略を経営戦略に組み込んで企業経営をマネジメントします。
一方、財務部長は企業の財務に関する業務の責任者、経理部長は企業の経理に関する業務の責任者です。
経営陣をトップとした企業陣営において、その下にある各部門のトップというイメージをしてもらうとよいでしょう。
つまり、CFOと財務部長・経理部長では、企業内でのポジションや業務の範囲が大きく異なります。
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CEO・COO・CMOとの違い
企業のポジションとして、CFO以外にもアルファベット3文字で略された役職がいくつかあります。
ここでは、CEO・COO・CMOについてそれぞれの概要を解説します。
CEO
CEOは「Chief Executive Officer」の頭文字を取った略語で、「最高経営責任者」と訳されます。
本来の役割としては、経営方針や経営戦略の決定を行う業務執行役員のトップで、事実上の会社のトップです。
「社長」や「代表取締役」と混同されがちですが、実際には別の意味を持ちます。
もともとはアメリカの会社組織で使われていた言葉で、日本企業におけるCEOの役割は、企業によってさまざまです。
日本の会社法では「CEO」に関する規定は存在せず、代表権がありません。
そのため、日本企業では、代表取締役がCEOという肩書を名乗ることが多いです。
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COO
COOは「Chief Operating Officer」の頭文字を取った略語で、「最高執行責任者」と訳されます。
CEOが決定した経営方針や経営戦略を実施する役員の1人で、アメリカでは企業の会長がCEO、社長がCOOを兼務するケースがほとんどです。
COOは、企業においてCFOと並ぶナンバー2と捉えられることが多く、CEOの意向をくみ取りながら、現場の理解にも努め、戦略をスムーズに実行する責任があるため、ハイレベルな調整力が求められます。
CMO
CMOは「Chief Marketing Officer」の頭文字を取った略語で、「最高マーケティング責任者」と訳されます。
主にマーケティングに関わる部署・チームをまとめ、マーケティング戦略を立案・実行する役割があります。
経営にも携わる重要な役職です。
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CFOが必要な理由
日本ではここ数年、CFOのニーズが増加しています。
では、なぜCFOが必要なのか、その理由を4つ解説します。
資本市場での資金調達
バブル崩壊をきっかけに、資金調達の難易度が上がったことが1つの理由です。
バブル崩壊前は、財務責任者は「金融機関と企業をつなぐ財務担当者」として、安定した財務状況や財務計画を銀行に説明するような役割でした。
ところが、バブル崩壊によって金融機関からの融資だけでは資金調達が困難になり、個人または機関投資家から資金の調達をすることが求められました。
よりリスク選好度の高い相手を得るために、マーケットの成長性や将来の期待リターンの大きさなどを、魅力的かつロジカルに説明する能力が必要になりました。
そこで、資金調達を含めた専門性の高いファイナンス業務をCFOに担ってもらいたいというニーズが高まってきたということです。
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キャッシュフロー経営の実現
キャッシュフロー経営とは、現金収支を重視して経営管理を行う手法で、利益だけでなく、実際に使えるお金をどのように増やすかに重点を置きます。
以前は売上高や利益を重視する傾向がありましたが、帳簿上で利益が計上されていても、手元に資金が不足して倒産してしまう黒字倒産が発生していました。
経営を維持・成長させるためには、キャッシュフロー経営が重要だという認識が広まり、実現に尽力するCFOが求められています。
企業会計における透明性向上
投資家に魅力的な企業だと認識されるためには、財政状況や経営成績などの財務情報の透明性と比較可能性を確保することが求められます。
資本市場がグローバル化する現代では、国際財務報告基準(IFRS)にもとづき財務情報を開示する必要があります。
また、会計基準や税法などの法令の改正に合わせて、ルールを遵守した透明性のある財務情報を、投資家にわかりやすく開示することも大切です。
そのため、財務情報の開示やIR活動の戦略立案・実行などを、リーダーとして牽引するCFOが必要になっています。
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企業価値向上にむけた事業再編
企業価値を向上させるためには、事業の収益性を上げる必要があります。
そのために、グループ全体の財務や市場の分析を行い、将来の利益率を予測、必要に応じて経営改善や事業撤退の意思決定を行います。
また、投資家からは、事業や企業の合併や買収など、事業再編活動によって企業価値の向上を目指すことも期待されます。
これらの判断を的確に行う役割として、CFOが求められています。
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CFOの役割と主な業務内容
CFOの役割や業務内容は、企業規模やフェーズによって大きく異なります。
それぞれについて解説します。
CFOの役割
CFOはかつて、財務におけるコスト管理など、いわゆる財務部長のような立場でしたが、現在はその役割が大きく変化しています。
経営戦略や財務戦略の立案・実行など、CFOの役割は多岐に渡り、企業経営の根幹を担う、経営陣の1人としての重要な責任を担う役割です。
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CFOの主な業務内容
CFOが担う業務について、フェーズごとに解説します。
資金調達
創業期や拡大期では、資金調達を行い、運転資金を確保することがメインの業務となります。
資金調達の方法は、政府系金融機関または銀行から借り入れを行う「融資」と、投資家から資本を提供してもらう「出資」の2種類があります。
融資を受ける場合、融資の審査をクリアする必要があります。
財務諸表の整理や返済計画を作成し、実際に金融機関との交渉も行います。
また、投資家から出資を受ける場合、投資家の選定や発行する株式の種類・数の交渉、契約書の作成などを行います。
優秀なCFOがいれば、効率的に効果的な資金調達が可能になります。
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財務戦略の立案・実行
事業を拡大していくと、予実管理など財務関連の業務量が増加してきます。
人件費やオフィス賃料、開発費、広告宣伝費などコストが増加するため、「資金管理の重要性」が増します。
企業の収益性や財務指標を向上させるために、以下のような内容を財務戦略として検討・実行します。
- 資本政策
- 資金調達などで得た資金の活用・運用
- 事業計画に基づく予算の適正配分
M&Aや機関投資家との対話は、上場後の株価形成に大きく影響するため、CFOにとって重要な役割です。
経営管理体制の整備
上場企業や上場準備企業は、投資家保護を目的とした経営管理体制の整備が必要になります。
「内部統制の構築」や「監査法人・証券会社などの選定・渉外」を行わなければいけないため、CFOを採用することが望ましいとされています。
また、上場を見据えた市場関係者や機関投資家との対話は、上場後の株価形成に大きく影響するため、CFOの重要な役割となります。
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業績管理
拡大期には、売上が伸びるだけでなく、コストも急激に増加する傾向があります。
予算を立案し、しっかりと管理しておくこと、また予実分析の結果を踏まえて、翌期の資金繰り戦略を管理することも、CFOの重要な業務の1つです。
IR活動
投資家に向けて透明性の高い情報を適切に開示するために、以下のようなIR活動を実行します。
- 決算開示資料の作成
- 株主総会の準備・開催
- 投資家とのコミュニケーション
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CFOに求められる知識・スキル
CFOは、ファイナンスの専門知識に加えて、経営知識も求められます。
なぜ必要なのか、それぞれわかりやすく解説します。
財務・会計知識
CFOは財務の最高責任者であるため、大前提として財務の知識が必要です。
さらに、会計の知識も必要となります。
資金の投資、分配、調達などを決定するためには、利益を求めなければいけません。
そのためには、どの事業にどれくらいの資金を投資するか、事業計画を達成するためにどれくらいの資金を調達しなければならないかなど、財務計画を立案する必要があります。
資金を適切に運用・管理して企業価値を高めるために、財務と会計の両方の知識が求められます。
経営知識
CFOは経営層の一員として企業の意思決定に関わるため、財務・会計知識だけでなく、経営の知識も求められます。
経営企画などの経験を求められることもあり、幅広い知識・経験を求められる役職と言えます。
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CFO人材の採用
スタートアップ企業など、大きい企業でない場合、CEOがCFOを兼任することもありますが、事業・企業が拡大すれば、専任のCFOが必要不可欠になります。
ここでは、CFO人材を採用する際のポイントと、採用方法について解説します。
CFO人材を採用する際のポイント
CFOは、前述の通り財務・会計・経営の知識があることが必須となりますが、財務のトップという立場上、マネジメント能力やコミュニケーション能力などにも長けた人材である必要があります。
しかし、それらの要件をすべて満たす完璧な人材に出会うことは容易ではありません。
もし出会えたとしても、報酬面で合意がなされないことや、社内メンバーと相性が合わず早期退職となるケースも少なくありません。
自社の状況や方針と照らし合わせて、CFOに期待するメインの役割、業務領域、人柄を明確にすることが大切です。
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CFO人材の採用方法
選任のCFOを置く場合、社内の人材を内部昇格させるか、外部から招へいするか、どちらが適当かを検討する必要があります。
また、最近では外部コンサルタントを活用する方法も増えてきています。
それぞれの方法について解説します。
内部昇格
内部昇格の場合、自社の事情を深く理解した人材であるため、以下のようなメリットがあります。
- 信頼関係が構築できている
- スムーズに業務に取り掛かれる
- 採用コストがかからない
ただし、内部の従業員で、CFOに必要なスキルを持ち合わせている人材がいることは珍しく、育成に時間がかかるというデメリットがあります。
外部から招へい
外部から招へいする場合、必要なリソースをすぐに補えるほか、外部で獲得したノウハウや情報を自社に取り込めるというメリットがあります。
デメリットとしては、信頼関係の構築が必要な点、採用や追加の人件費など追加のコストが発生するという点が挙げられます。
また、採用した場合でも、企業文化と相性が悪く、目的を達成する前に退職してしまうケースもよく見られます。
外部コンサルタントの活用
外部コンサルタントを活用する場合、ノウハウを提供してもらいながら社内の人材を育成できます。
社内人材にノウハウが落とし込まれることで、将来的にCFO人材の内部昇格もスムーズになります。
また、新しくCFO人材を採用するよりも、時間的・金銭的コストも抑えることができます。
ただし、一定のコスト負担があるため、相性が合わなかった場合に効果が出せない可能性があるというデメリットがあります。
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まとめ
企業の最高財務責任者であるCFOは、現代において必要不可欠な役職です。
また、その業務内容は資金調達や財務戦略の立案・実行など、企業のフェーズごとに多岐に渡ります。
CFO人材を企業に置く方法は、内部昇格または外部からの招へい、外部コンサルタントを活用する方法があります。
自社に合った方法で、ベストな人材を迎え入れましょう。
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