反社会的勢力に関する相談窓口はある?企業の被害事例や対策についても解説
反社会的勢力が巧妙に世間に溶け込んでいる現代において、反社会的勢力と知らずに関係を持ってしまうことや、不当要求などの被害に遭うことは、他人事ではありません。
トラブルが発生した時にどのように対応するのか、どこに相談するのかなどを事前に決定しておくことが重要です。
この記事では、反社会的勢力に関する相談窓口をご紹介するとともに、実際の被害事例や企業ができる対策について解説します。
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目次[非表示]
- 1.反社会的勢力とは
- 2.反社会的勢力に関する相談窓口
- 2.1.警視庁暴力ホットライン
- 2.2.暴力追放運動推進センター
- 2.3.警視庁管内特殊暴力防止対策連合会
- 2.4.民事介入暴力被害者救済センター
- 3.反社会的勢力と関係を持っていた企業の事例
- 3.1.食事をして倒産に至ったケース
- 3.2.上場廃止に至ったケース
- 3.3.役員の横領で株価の下落を招いたケース
- 3.4.反社会的勢力と関係のある企業と業務委託し、取引中止に至ったケース
- 4.反社会的勢力と関係を持たないための対策
- 4.1.反社チェックを行う
- 4.2.契約書に反社会的勢力排除の条項を入れる
- 4.3.反社会的勢力につけこまれる要因を作らない
- 4.4.社内の管理体制を確立する
- 5.反社会的勢力の被害に遭わないための反社チェック
- 6.まとめ
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反社会的勢力とは
反社会的勢力と聞くと、「暴力団」を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、現代において「反社会的勢力」という言葉が示す範囲は幅広くなっており、暴力団以外にも注意すべき対象が多数存在します。
ここでは2つの反社会的勢力の定義を紹介します。
政府指針における反社会的勢力の定義
2007年に政府から「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が発表されました。
この指針によると、反社会的勢力は以下のように定義されています。
暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当要求といった行為要件にも着目することが重要である。
参考:厚生労働省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」
この定義には、暴力団以外にもさまざまな属性要件が含まれ、反社会的勢力が社会に巧妙に溶け込んでいる現状が示されています。
また、属性要件に加えて、反社会的な行為などの行為要件も反社会的勢力であるかという判断基準になります。
関連記事:反社会的勢力に関する法律はある?各業界の対策と反社との取引を回避する方法も解説
暴追センターモデル契約書における反社会的勢力の定義
暴追センターのモデル契約書では、反社会的勢力として以下の9つを記載するよう推奨しています。
- 暴力団
- 暴力団員
- 暴力団員で合ったときから5年を経過しない者
- 暴力団準構成員
- 暴力団関係企業
- 総会屋等
- 社会運動等標ぼうゴロ
- 特殊知能暴力集団
- その他前各号に準ずる者
参考:暴力団追放運動推進都民センター「『表明・確約』及び『暴力団排除条項』」
これらに該当しないこと、該当した場合には催告なしに契約解除ができることなどを記した「暴力団排除条項」を契約書に盛り込みましょう。
関連記事:契約書に反社会的勢力排除条項(反社条項)が必要な理由は?具体例と例文も紹介
反社会的勢力に関する相談窓口
反社会的勢力が企業に近づく手口は巧妙化しており、気づかぬうちに関係を持ってしまっているケースも少なくありません。
令和6年度の調査では、反社会的勢力からの不当要求を受けたという企業が1286社中22社で、全体の1.7%も存在しました。
また、不当要求の頻度について回答した企業のうち、約半数が1年に1回以上の不当要求を受けていたという結果があります。
参考:日本弁護士連合会「令和6年度 企業を対象とした反社会的勢力との関係遮断に関するアンケート」
もし自社がそういった被害に遭った場合、どこに相談してよいかわからないという企業も少なくないでしょう。
反社会的勢力に関する相談ができる窓口を4つ紹介します。
関連記事:反社会的勢力に該当する人物の家族・親族との取引や雇用は可能なのか?
警視庁暴力ホットライン
暴力団からの脅迫や加入の強要など、暴力団に関する相談ができる窓口で、正式名称は「警視庁組織犯罪対策部暴力団対策課」です。
24時間対応してもらえる窓口なので、緊急で困ったことがあった際にも相談が可能です。
暴力追放運動推進センター
通称「暴追センター」と呼ばれており、全国47都道府県に設置されています。
暴追センターでは、不当要求や脅迫などの被害を受けている際の相談はもちろん、反社会的勢力と疑われる人物についての問い合わせもできます。
暴追センターの相談室のほか、電話やメールでの相談も可能で、必要に応じて警察の援助や弁護士会などの機関への引継ぎを行ってくれることもあります。
警視庁管内特殊暴力防止対策連合会
特防連と呼ばれる組織で、警視庁や地元警察、弁護士会、暴追センターなどと連携をしており、 暴力団排除活動を行っています。
会員になることで、相手方の照会や相談、弁護士の紹介など特殊暴力に関して幅広い対応を受けることができます。
「特暴110番」という問い合わせ窓口があり、何かあった際には相談が可能です。
民事介入暴力被害者救済センター
民事介入暴力の被害に遭っている際の相談窓口として弁護士会が設けているのが、民事介入暴力被害者救済センターです。
全国には52の弁護士会があり、そのうちいくつかの弁護士会に救済センターが設置されています。
暴力団に関する被害や不当要求などは民亊介入暴力に当てはまり、相談することで適切な助言を受けることができます。
救済センターがない弁護士会でも相談をすることはできますが、反社会的勢力に関する知識や経験が豊富な弁護士に相談した方が、より適切なアドバイスを受けることができるでしょう。
また、企業に顧問弁護士などがいる場合は、先に相談してみるとよいでしょう。
関連記事:反社会的勢力に対応するためのガイドライン 反社チェックの基準とは?
反社会的勢力と関係を持っていた企業の事例
不当要求や脅迫などは、反社会的勢力と関係を持ってしまった結果としてわかりやすい被害です。
しかし、そういった直接的な被害に遭わなくても、関係が露見することで不利益を被ることがあります。
実際に反社会的勢力と関係を持ってしまい、損失が発生した事例を4つ紹介します。
食事をして倒産に至ったケース
ある企業の役員が、暴力団の組長とSNSで連絡を取り、定期的に食事をしたり、組長が関わる店を利用してりしていたことが発覚しました。
暴力団排除条例では、反社会的勢力との「密接な交際または社会的に非難される関係」を持たないよう定められており、県は排除措置命令を出しました。
その企業は銀行口座が凍結され、取引先との取引が中止になり、最終的に破産に至りました。
役員は、相手が暴力団組長だと知らなかったと主張しましたが、知っていたかどうかは問題ではなく、関わったこと自体に問題があります。
反社チェックをしっかり行い、暴追センターで照会するなど適切な対応を行っていれば、措置命令や倒産を避けられた可能性のある事案です。
関連記事:密接交際者の基準とリスク 反社会的勢力の関係者にならないために知っておくべきこと
上場廃止に至ったケース
すでに上場している企業が増資のため「第三者割当増資」を行う際に、割当先の親会社が反社会的勢力と関係していたというケースです。
事前に信用調査会社で調査を行い、割当先の親会社が反社会的勢力などに懸念がある人物だということが判明していました。
しかし、これらの調査結果を隠蔽し、反社会的勢力と関わりのない企業だと報告をしました。
その結果、証券取引所との上場契約違反となり、上場廃止になりました。
経営不振などの問題があった場合でも、割当先を変更するなどの適切な措置が必要だったと言えます。
関連記事:IPO準備にはなぜ反社チェック(コンプライアンスチェック)が必要なのか?上場基準の反社会的勢力排除の体制づくりについて解説
役員の横領で株価の下落を招いたケース
上場企業の役員が横領した資金を、反社会的勢力と関係する人物に資金提供していたとされるケースです。
その役員は、横領は認めたものの、反社会的勢力への資金提供については否定していました。
しかし、疑いに対して市場は否定的な反応となり、会社の株価が大幅に下落しました。
この事例において、役員は以前から、資金提供を行ったとされる人物から恐喝を受けていたと報告しています。
早期に状況を把握し、警察や暴追センターに相談していればこのような結果にはならなかった可能性があります。
関連記事:反社会的勢力と知らずに契約を結んでしまった場合に無効にできる?
反社会的勢力と関係のある企業と業務委託し、取引中止に至ったケース
不動産業を経営する上場企業が、所有者との交渉などを委託した委託先企業が反社会的勢力と関係しており、委託料の一部が暴力団へ上納されていたケースです。
業務委託を開始した数年後、銀行からの情報で委託先が暴力団のフロント企業だと判明し、契約を解消しました。
しかし、その事実が報道され、銀行の新規融資が拒否され、取引が困難となり不動産の売却もできず、最終的には倒産に至りました。
委託先の代表者は逮捕歴があり、反社チェックを行っていれば、反社会的勢力と関係がある企業だと早期に判明し、取引を行わない選択をできた事例です。
関連記事:反社会的勢力と関わりのある企業一覧は存在するのか?見分け方・調べ方も解説
反社会的勢力と関係を持たないための対策
反社会的勢力の被害を避けるために、大前提として関係を持たないことが必要です。
また、関係を持ってしまうと、前述のように、倒産や上場廃止になるリスクもあります。
反社会的勢力と関係を持たないための対策には、以下のようなものがあります。
- 反社チェックを行う
- 契約書に反社会的勢排除の条項を入れる
- 反社会的勢力につけこまれる要因を作らない
- 社内の管理体制を確立する
それぞれ詳しく解説します。
反社チェックを行う
対策として必ず行うべきなのが反社チェックです。
反社チェックは、取引先のほか、従業員や株主に対しては必要不可欠です。
反社チェックの結果、懸念点がある場合には関係を持たない判断が必要です。
契約締結前はもちろん、契約更新時や定期的なタイミングで、年に1度はチェックを実施するようにしましょう。
関連記事:反社チェックの必要性とは?基礎知識や反社関与の判断基準を解説
契約書に反社会的勢力排除の条項を入れる
反社チェックで気づけなかった場合や、契約後に反社会的勢力になってしまっていた場合などに有効なのが反社条項(反社会的勢力排除条項)です。
一般的な反社条項は、警察庁が公開している反社会的勢力排除のモデル条項にならって、「相手方が反社会的勢力やこれに準ずる者である場合には契約を無催告解除できる」という内容が盛り込まれています。
リスクヘッジとして、契約書には必ず反社条項を盛り込みましょう。
関連記事:反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)とは?契約書に定めるべき理由と条項について解説
反社会的勢力につけこまれる要因を作らない
反社会的勢力や暴力団関係者などに「借り」を作らないことがここでのポイントです。
例えば、クレーム対応やトラブルの仲裁などの名目で関係を持ってしまうと、そこにつけこまれ脅迫や不当要求を行ってくるケースが存在します。
また、自社のミスなどを理由に、反社会的勢力から脅迫を受け、関係を持ってしまうケースもあります。
反社会的勢力につけこまれるような要因を作らないよう、トラブルがあった際には慎重に対応するなど、社内での教育を徹底することが大切です。
社内の管理体制を確立する
反社チェックを行った結果、懸念点がある場合に、取引をしないのか、する場合はどのような手続きを踏むのか、そういった判断を適切に行えるような体制を構築しておくことが重要です。
また、事前の対策を行っていても、反社会的勢力との関係を持つことが避けられないこともあります。
反社会的勢力と取引を行っていたことが判明した際に、どのように対応し、誰に相談するのかといった体制を整備しておくことも大切です。
関連記事:企業が作成すべき反社会的勢力の対応マニュアルとは?対応のポイントや事前準備についても解説
反社会的勢力の被害に遭わないための反社チェック
前述でも対策として紹介した反社チェックについて深掘りしていきます。
反社チェックは、企業名や個人名を検索して、対象者が反社会的勢力でないか、反社会的勢力とつながりがないかを調査することです。
新聞記事やニュース情報をソースにするため、過去の不祥事や逮捕歴などを確認することができ、契約すべきでない企業や人物を見極めることができます。
反社チェックを行った結果、懸念情報を見つけた場合、契約をするかどうか丁寧な判断が必要です。
反社会的勢力との関係がある場合は、契約をしないと判断をするのが当然です。
しかし、判断に迷うような内容の記事が出てくることも少なくないでしょう。
判断に迷う場合、取引先の場合は取引の金額や重要度、従業員の場合は社内でのポジションなど、リスクに合わせて判断するとよいでしょう。
関連記事:反社チェックは義務なのか?反社会的勢力に関わる法令やチェックの方法を解説
反社チェックの効率化に有効な反社チェックツール
反社チェックツールは、検索を行うだけで、懸念となるネガティブ情報のみを絞り込んだ結果を閲覧することのできるツールです。
インターネットや新聞記事データベースなどで検索を行うと、ネガティブな記事以外にも大量の情報が出てきてしまいます。
情報の精査にかなりの手間と工数がかかるため、反社チェックツールを利用することで大幅な効率化につながります。
また、人的作業も減るため、ミスによる精度の低下も防ぐことができます。
反社チェックツールは、結果の証跡の保存や年次での自動定期チェック、自社システムとの連携、生年月日で絞った検索など、効率化・精度の向上につながる便利な機能が搭載されています。
ツールによって機能は異なるため、自社の反社チェックの問題点を相談し、トライアルを試してみるなど、自社に合ったツールを選定するとよいでしょう。
関連記事:反社チェックを自動化する方法はある?ツールの機能や注意点を解説
まとめ
この記事では、反社会的勢力に関する相談窓口を紹介しました。
反社会的勢力からの不当要求や脅迫などの被害に遭った際には、早急に相談しましょう。
また、被害に遭わないために、反社会的勢力と関わらないための対策が必要です。
反社チェックや契約書に反社条項を盛り込むなど、反社会的勢力排除のための取り組みを行いましょう。
関連記事:反社チェックに引っかかるケースとは?チェックが必要な理由と対策を解説
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